
PENTAX K10D+Tamron SP 90mm f2.8
森に入ると夏の匂いがした。
野草は春のラッシュが終わり、ちょっと一休みといったところだ。
夏の始まりは虫たちが活動を始める季節でもある。
高いところでオオルリの澄んだ声が響き渡り、吹き来る風の音が聞こえる。

クモも準備完了。
あとは獲物が引っかかるのを待つだけ。

食虫植物に捕まった小さな虫たち。
モウセンゴケは、葉っぱの先にたくさんのヒゲが生えていて、そこから虫を誘う甘い分泌液を出す。その香りに誘われた虫が葉っぱに止まると、粘着質になっていて離れることができない。捕らえた虫の養分を吸い取って、自らの栄養にする。
小さな自然の驚異だ。

トンボの目はどこを見ているかよく分からないけど、くりくりしてかわいい。
でも、毛むくじゃらの手足はかわいくない。というか、アップで撮るとちょっとグロテスクだ。

平凡の美を見逃さないようにしよう。
ありふれているからといって、それが無価値なわけじゃない。

歩く先々の足元でガサゴソと音がして、何かが逃げていく。きっと、トカゲたちだ。
町中では見ることが稀になったトカゲも、森へ行けばまだまだたくさんいて安心する。
住みやすい場所は少なくなっただろうけど、森の中の方が安全だ。小学生に捕まってしっぽをちぎられることもない。

虫食いという言葉を日常的にはほとんど使わなくなった。タンスにしまっておいた服が虫に食われたなんてことも久しくない。
この葉っぱを見て、わぁ、すごい虫食いだなと、久々に虫食いという言葉を思い出した。

自然の中にもこんな色がある。パステルピンクなんてのは人工のものしかないと思うとそうじゃない。
人がすることは全部自然をお手本としていて、人間の力だけで生み出したと思っているものも、自然のどこかに存在しているんじゃないだろうか。

水たまりに咲く花。
地面に落ちたものより一日か二日、長生きできるかもしれない。

淀んだ小さな池に、雲間から顔を出した太陽が鈍く反射する。
森のすべてが清らかなわけじゃない。森にも淀みや吹きだまりがある。

動きが止まったような静かな一角。
風も吹かず、水面も動かない。

今の時期の森を支配している色は、やはり緑だ。新緑から少し色が深くなりつつある。
森散策に一番いいのは、なんといっても4月だろう。一年で一番賑やかな季節で、撮るものもたくさんある。5月から6月にかけては、意外と撮るものが少ない。むしろ7月に入ってからの方が虫がいて面白い。ただ歩くだけなら5月が一番だけど。
春先に行こうと思いながら行けなかった海上の森に、5月の終わりにようやく行くことができた。案の定、大遅刻だったけど、それなりに撮るものはあった。
写真はまだ残っているから、明日以降のどこかで紹介していこうと思っている。
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