不思議な空気を持った片山神社は忘れがたい印象を残した

神社仏閣(Shrines and temples)
片山神社外観




 とても個人的な、多分に感覚的なものなのだけど、一歩足を踏み入れたとたん、この神社は何か違うなと感じるところがある。明らかに他とは空気が違っているというか、雰囲気が異質というか。
 名古屋市東区にある片山神社がそうだった。おお、こいつはすごい、と思った。何がどうすごいのかを言葉で説明するのは難しい。私が何か特別な能力を持っているというわけではなく、たとえば、古い洋館に入ったとき、多くの人が感じるであろう、わー、すごいという感覚と似たようなものだ。すべての神社がそういう空気感をたたえているわけではない。

 東区には主な神社が16ほどある。名古屋市の中では多くもなく少ないもない数だ。名古屋は南エリアほど神社密度が高い。一番多いのが中川区で、80社以上もある。港区や南区も多い。どうして海に近い南ほど多く、北の山には少ないのか、そのあたりの事情については今後調べを進める必要がありそうだ。名古屋市内だけでも神社を制覇するのは大変だ。
 東区の第一弾は、片山神社にした。まだ4つくらいしか回ってないけど、個人的にはここが最も印象深い神社になるであろう予感はある。オススメ神社として推薦したい。



片山神社拝殿

 大通りから少し入っただけにも関わらず、山奥の神社のような静けさが満ちている。神聖な空気感というのは違う。ある種妖気のようなものを感じさせる。単純に神の空間というのではなく、霊的というか、もののけというのか、不思議な生命感に取り囲まれている。
 でも、恐ろしいとか、不気味だとかというわけではない。別の結界に踏み込んでしまった感じがありつつ、居心地は悪くない。
 かなり独特なものを感じたのは間違いない。他に似ているところを私は知らない。



片山神社拝殿と本殿

 創建ははっきりしない。「延喜式神名帳」に載っていることから、平安時代にはすでにあったことは分かっている。片山天神とも称されていたようだ。
 一説によると、飛鳥時代後期の684年に、修験道の開祖である役小角(えんのおづぬ)によって創建されたという。
 天武天皇の命を受けて、三河(岡崎)に滝山寺(たきさんじ)を開山する途中、この地に立ち寄って片山神社を建てたらしい。
 役小角は伝説の修験者で、全国各地に伝承が残っていて、どこまでが本当のことなのかよく分からない。こののちの690年には、奈良の室生寺を創建したとされている。そのあたりのことは室生寺紹介のときに少し書いたと思う。
 役小角といえば、吉野の金峯山で修行したことでも知られている。このとき金剛蔵王大権現が現れて、以降、吉野山の神となった。
 片山神社もその流れを汲むもので、祭神は蔵王大権現(ざおうだいごんげん・主神)、国狭槌尊(くにさちのみこと・右神)、安閑天皇(あんかんてんのう・左神)ということになっている。
 蔵王大権現というのは日本オリジナルの仏で、釈迦如来、千手観世音菩薩、弥勒菩薩が三身一体となった変化神なのだという。
 つまりは、片山神社というのは、仏を祀った神社ということになる。これも珍しいといえば珍しい。昔は神仏習合が当たり前だったから特に違和感はなかったのだろうけど、現在の感覚からすると少し不思議だ。
 安閑天皇というのは少し分かりづらい天皇なのだけど、どういう経緯を辿ったのか、いつしか蔵王権現と同一視されることになったらしい。なので、明治の神仏分離令の際に、蔵王権現を祀っていた神社が安閑天皇を祀るようになったところも多いようだ。
 継体天皇の子供で、母親が尾張目子媛(おわりのめのこひめ)ということもあって、片山神社がここに建てられたというのもあるようだ。天武天皇が即位する前、大海人皇子だったとき、壬申の乱で尾張氏が大いに助けたという縁もある。
 安閑天皇が謎めいているのは、天皇在位期間が2年と短く、「日本書紀」と「古事記」では記述にいろいろ矛盾があるからだ。継体天皇の第一子の安閑天皇が跡を継いだのは問題ないとして、子供がいなかったため、次に弟の宣化(せんか)が天皇となった。しかし、安閑天皇の前に欽明天皇(きんめいてんのう)が挟まっているという説がある。というか、時期がかぶっている。
 どうやら皇位継承でもめたらしく、欽明天皇の即位を認めない一派が安閑、宣化を擁立して二朝体制だった期間があったのではないかというのだ。のちに南北朝時代というのがあったから、前の時代であったとしてもおかしくはない。
 系図を見ると、欽明天皇の方が本流のようで、こののちの流れとしてはそちらにつながっていっている。推古天皇も欽明天皇の娘だし、聖徳太子は孫に当たる。



片山神社境内の様子

 拝殿を横から見たところ。奥に本殿が少し見えている。
 その手前に途中で切られたスギの木が写っている。昔、天狗が腰掛けていたという伝説の木だ。
 枯れて切られてしまったようだ。
 社殿の左右には、稲荷社、玉津嶋社、金刀比羅社、香良須社、秋葉社、白山社、龍神大神、観音大神、浅間社の境内社が並んでいる。



神楽殿

 左手に何やら立派な社殿が建っている。
 それほど古びていはないものの、最近の建物ではない。
 神楽殿とか祭文殿とかだろうか。
 絵馬は車の形をしている。御利益は交通安全とかなのか。



片山神社神札授与所

 社務所というか、神札授与所のようなところもある。普段は開いてないのかもしれない。



片山神社入り口の門

 閉じた門もあった。これなどは神社らしくない。やはりどこかお寺っぽさも残っている。
 柵で囲まれていて、表から近づくことはできないようになっていた。

 いろんな意味で異質な神社だと思う。社殿はどういうわけか、南東を向いている。何かの狙いがあってあえてそうしたのだろうか。
 とにかく不思議な空気感を持った神社だった。近所の方はぜひ一度行ってみていただきたい。市立工芸高校の裏手で、名鉄瀬戸線尼ヶ坂駅が最寄り駅だ。
 ここから少し東へ行ったところに、片山八幡神社というのがある。同じような名前だから一緒の系列かと思ったら、まったく違う系統の神社だった。次回はそちらを紹介することにしたい。

 片山八幡神社は表と裏の顔があって光友で穴八幡ともつながる

【アクセス】
 ・名鉄瀬戸線「尼ヶ坂駅」から徒歩約3分。
 ・拝観時間 終日
 ・駐車場 たぶんなし
 
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コメント
  • 片山神社
    2009/06/16 14:32
    30代まで名古屋に住んでいました。うん、もう25年たってしまった。歴史好きで「将門と鉄」っていうテーマで今調査中。なぜか名古屋のオカルトスポットをついネットでのぞいたら、片山神社が....なぜ?!幼い時から祭り大好きで秋には獅子のみこしといっしょに片山神社にいきました。そこで、片山神社を調べたらたくさんの写真とお言葉!ブログをみつけました。そして岡崎の滝山寺との関係!いろいろ縁があるものです。滝山寺は主人の親戚です。今度実家に帰ったら片山神社に行ってきますね。私は現在横浜ですが、知多半島の野間で義朝と共に亡くなった蒲田政清の城(現在山田神社)が近くにありますよ。さすが関東、鎌倉系の話が多いです。
  • まだまだ行きたいところが
    2009/06/17 00:36
    ★ガンジーさん

     はじめまして。
     長く名古屋にお住まいだったのですね。
     今は横浜ですか。もう名古屋弁は出ないでしょうか。
     横浜も何度か行ったので、このブログでも登場してます。
     鎌倉も。

     頼朝が名古屋生まれかもしれないってのはきっとご存じですね。
     熱田神宮の前に生誕地の碑が建ってますからね。

     野間大坊は一度行ってるんですよ。でもだいぶ前のことなんで、このブログでは出てません。
     再訪して、もう一度詳しく書きたいと思ってるのだけど。

     将門塚は、早朝にあのあたりを歩いて探したので見つけられませんでした。
     神田明神は行きました。
     東京には、それぞれ冑とか、いろんな書くパーツを祀った神社があるんですよね。
     全部回ったことがあればかなりマニアックです。(^^;

     片山神社はちょっと独特の空気を感じました。
     人がいないときがよさそうです。
  • 頼朝は名古屋生まれ
    2009/06/18 00:01
    頼朝は名古屋生まれはちっとも知らんかったです。
    鎌倉はおどろおどろしくて、明るい観光で楽しんでます。
    将門首塚は地下鉄大手町の駅で、三井物産方面℃5を出るとのぼりがみえます。こちらの方がおどろおどろしいですが.....
    わざわざコメントをありがとうございます。これからもなつかしい故郷名古屋を楽しませてもらいます。
  • 頼朝は不人気だから
    2009/06/19 01:23
    ★ガンジーさん

     こんにちは。
     頼朝が名古屋生まれかもしれないってのは、名古屋人でもあまり知らないことなんですよね。
     確証が低いからか、頼朝自体にみんなあまり興味がないからか。
     前に書いたことがあるんで、暇なときにでも読んでみてください。
    http://okuromieai.blog24.fc2.com/blog-entry-368.html
    http://okuromieai.blog24.fc2.com/blog-entry-369.html
     今ならもう少し詳しく書けるから、またいずれ機会があれば頼朝についても書いてみたいと思ってます。

     将門の首塚も一度お参りにいかないといけないですね。
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