
Canon EOS 20D+Canon EF-S 17-85mm f4-5.6 IS / EF 75-300mm f4-5.6 IS
昨日は名東区の水の神様について紹介した。今日は名東区の竜の神様について書きたい。
名古屋といえばドラゴンズだから竜にまつわるものが多いかといえば、そんなことはない。そもそも竜とドラゴンは別ものだ。なんとなくごっちゃになってしまっている人も多いんじゃないだろうか。
ドラゴンも竜も想像上の生き物という共通点はあるものの、それぞれがイメージするものは違っている。
西洋のドラゴンは鋭いキバと爪を持った巨大なトカゲのような姿で、翼があって空を飛ぶ。更に口からは炎やら毒やらを吐き出す怪獣的なイメージとして描かれることが多い。
それに対して中国や東洋の竜は、怪獣というより神の化身というべきもので、権力の象徴でもあり、崇高なものと思われている。
ドラゴンの訳語を竜としてしまったのが問題で、別の字を当てるべきだった。
竜と龍という二つの字も、少し混乱の元になっている。旧字体は龍の方だからこちらが本式と思っている人も多いと思うけど、実際は竜の方が古く、より神聖な文字とされている。
日本における竜も、中国から伝わってきたものだ。もともと日本には竜というものはいなかった。
ただ、相当古くに伝わったのは間違いない。干支の伝来が少なくとも400年代や500年代というから、そのとき一緒に竜が入って来たのか、竜だけはもっと以前から伝わっていた可能性もある。
たとえば干支の中の竜というものが分からなかったとしたら、別のものに変えてもよかったのにそのまま使っているところを見ると、日本人は竜をすんなり受け入れることができたということだろう。干支で唯一実在ではない生き物を採用しているということはそういうことだ。日本では豚が一般的ではなかったら猪に変えている。ベトナムでは猫が入っていたりもする。
ただし、中国人の竜に対する感覚と、日本人の感覚とはかなり違っているように思う。中国の方がもっと位が高そうで、日本においては蛇の神と結びついたところがある。なので、日本の竜にまつわる神社は蛇が関係していることが多い。竜と言われてもピンと来なかったから、イメージしやすい大蛇を思い浮かべたとしても不思議はない。
そんなわけで、まずは三徳龍神社というのを紹介しようと思う。
名東本通りに面したすごいロケーションのところに、その神社はあった。神社というと鳥居や生い茂った高い木々が目印になるものだけど、ここは半地下にあるから上の方を見て探していると見落としてしまう。

すごいことになっている。下へ降りる階段があって、降りきってすぐに民家の離れ風の拝殿がある。
どうして道路よりもこんなに低いところに神社が建っているのだろう。

下から見るとこんなふうになっている。
左側にやや広いスペースがあって、社務所ともいえないような神社関係の建物がある。当然ながら無人だ。
この状況に少し戸惑いつつ、とりあえず参拝をすることにした。

拝殿前に置かれた石が気になった。座布団4枚重ねで何かいわくありげに置かれているけど、説明書きはない。
御供物はお持ち帰りくださいと書かれている。神社にお供え物を持ってくる人はあまりいないと思うんだけど、こんな注意書きがあるということはそういうことがたびたびあったのだろうか。

拝殿裏に回ってみると、本殿ともう一つの祠があった。
昭和のはじめ頃、安良霊神なる人が竜のお告げを聞いて、竜神を祀ればこの地区は繁栄するというので、地元の人たちで祠を建てたのが始まりだそうだ。
現在のように三徳龍神社となったのが昭和43年(1968年)というから、まだ新しい。
水の神を祀った貴船神社といい、ここの竜神といい、名東区は水にまつわる神社が多い。神明社では耳を持った竜の神様が祀られていた。それだけ水不足で困っていたということなのだろう。牧野ヶ池や明徳池などはそのときの名残なんじゃないかと思う。
竜というのは風水の思想においても大切な役割を持っているし、繁栄や成功というものには関わりが深いから、縁があれば大事にしておくに限る。

一番奥の裏手に回ったところ。手前に少し梅が咲いていて、境内の中央付近には御神木がある。

名東区のもう一つの竜にまつわる神社として、白美龍神社がある。これは牧野ヶ池緑地の中にあるから、知らない人も多いだろう。ほとんどゴルフコースの中にあって、この鳥居から行こうとすると、道が険しくてけっこう遠いので苦労する。この日は雨上がりで靴が泥まみれになってえらい目にあった。

アップダウンのある雑木林の中を10分ちょっと歩くと辿り着く。途中案内は一切ないから、本当にこの道を進んだところにあるんだろうかと不安になる。とりあえず道なりに進めば着く。途中で右に折れる道を折れてはいけない。緑地の西から入ればもっと楽に行ける。
私は再訪だった。最初に訪れたのはもうずいぶん前のことだ。4年ぶりくらいだろうか。
このときは望遠レンズしか持ってなくて、これ以上下がれず、全体像を撮ることができなかった。下がろうとするとゴルフ場に不法侵入になってしまう。

白くて美しい竜とはどんな神様かと思ったら、五合池にすんでいた巨大な蛇だそうだ。
昭和28年にゴルフ場を造っていたところ、たびたび大蛇が姿を現したので、御嶽山の修験者を呼んで祈祷してもらったところ、この地に古くからすんでいる女神ということが判明し(?)、その女神のいうにはゴルフ場を造られてしまってはすみかもエサもなくなるから、それならいっそのこと神社を建てて祀って欲しいと言ったんだそうだ。
その蛇を見たという人は多く、なんでも6メートルからあったんだとか。
江戸時代あたりならともかく戦後にそんな話がまともに取り合ってもらえたのかと笑ってしまいそうだけど、これが名古屋市や愛知県を巻き込んでのけっこうな大ごとになって、神社建設に動くことになったのだという。
きちんとお世話をしている人たちがいるようで、うち捨てられているような感じはない。神社は建てるよりも維持していく方が大変だ。
このように、竜と蛇はごっちゃになりつつ神として祀られているというのが日本という国だ。中国にも他の国にもこういう発想はないだろう。
竜神といっても色々で、竜にまつわる神社は他でもちょくちょく見た。日光東照宮も竜絡みの逸話があった。この先もあちこちで出会うことになりそうだ。
名東区神社巡りは今回が第6回だった。近いうちに7回目もあるかもしれない。
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