
OLYMPUS E-510+ZD 14-54mm f2.8-3.5
浄源寺三蔵門のこの角度と初めて出会ったのはおととしだった。その光景に胸を打たれて翌年再訪し、それが同じ12月5日だった。今年は2週間早い11月21日で、いかにも先走りすぎた。イチョウの落ち葉絨毯もまだまだ不充分だし、カエデも紅葉しきっていない状態では満足できない。2年とも12月5日は3日遅れといったところだったから、例年通りの進行なら12月2日前後が最高となる。ここを撮るだけでも岩屋堂へ行く価値があると私は思っている。
そもそもこんな早い時期に岩屋堂へ行く予定はなかった。紅葉まつりが11月いっぱいで終わって、駐車場も無料になる12月1日くらいに行こうと考えていた。それが前回もちらっと書いたようにナビの間違った誘導によってはからずも行くこととなってしまった。なんとなく作為じみたものを感じてあえて乗ってみたというのもある。この日に岩屋堂へ行っておけという天啓に従ったと解釈しておいた。ナビの間違いがなければ、オンシーズンの岩屋堂を見ることはなかっただろう。
残りの写真を整理したら、あと一回分におさまってしまった。全3回を予定していたのに、思ったよりあっさり終わってしまう。けっこう撮ったつもりだったのに、同じような写真が多かったり、手ぶれ写真があったりで、意外と枚数はなかった。
そんなわけで、今日は紅葉の岩屋堂後編ということでお届けします。
今日は午後から雨だったから、ピークは昨日から今日の午前中までだっただろう。行ってきた人はそうそうこんな感じだったと思うだろうし、行けなかった人はこんな感じなんだと気分だけでも味わってください。

ここの石仏を見ると、どこかで見たような懐かしいような気分になる。どこだろうなと思ったら、京都の化野念仏寺(あだしのねんぶつじ)だ。数は全然少ないのだけど、ちょっと雰囲気が似ている。イチョウ絨毯の風情ではこちらの方が雰囲気がある。車止めが無粋だから、撮影のときだけでも横にずらさせてもらうべきだった。

浄源寺前の駐車ペースにいっぱい車がとまっている時点でかなり驚いたのだけど、岩屋堂の中に大勢の人がいるのを見て更にびっくりした。あんなに賑わっている岩屋堂を見るのは初めてだった。
名古屋近郊の紅葉スポットとしては、香嵐渓と岩屋堂が有名なのだけど、両者はランクがまったく違う。ハワイのワイキキビーチと吉良ワイキキビーチくらいの差がある。それでもここがそれなりに賑わうのは、香嵐渓は大渋滞で悪名高いからだ。あそこはアプローチする道が一本しかないから、紅葉の時期は絶望的に渋滞して車が動かなくなってしまう。それが嫌で岩屋堂でお茶を濁してしまう人も多い。すべり止め的な人気紅葉スポットという言い方ができる。

観光地として枯れきっている今の岩屋堂を象徴する一角がこの場所だ。旅館だったのか、おみやげ屋だったのか、食堂だったのか、並びの家屋はどこも閉鎖されて久しい。
この場所にも人がぞろぞろ行き交っているというは面白くはあったのだけど、個人的には紅葉の時期でも人が訪れない岩屋堂というのを見てみたかった。誰も見る人がいなくても真っ赤に染まる木々の風景に無情を感じたかった。

ええー、っと驚いてのけぞった。開いてる店があったんだと。こんなところが開いてるのを見るのはもちろん初めてだし、開くような予感はまったくなかった。でも、これだけ人が訪れたらそれなりに商売にはなる。食堂兼おみやげ屋のような感じだった。
いつも岩屋堂へ行くと他に人がいなくて独り占めしてるような気分になるのに、この日ばかりは私の方が疎外感を感じることとなった。いつもは静かな馴染みの喫茶店が賑やかな団体さんに占拠されてしまったような気持ちだった。

この赤い橋は、紅橋(くれいないばし)だ。思い出した。
ここは岩屋堂の中でいいアクセントになっていて、定番撮影スポットとしてみんな写真を撮っていく。
橋そのものはコンクリートの安っぽい朱塗りで情緒はない。木橋にしろとは言わないけど、もう少しなんとかならなかったのか。瀬戸市はあまりお金がないのか、観光地に金をかけない。けっこういい資産を持っているのに、有効活用できていない。
岩屋堂は瀬戸を代表する紅葉スポットなのだから、もう少し全般的に整備が必要だ。昭和の観光ブームは二度と来なくても、できることはいろいろある。もっと宣伝をして、この時期だけでも屋台を並べて、瀬戸駅から臨時バスを走らせれば、人も来るし、お金も落としていってくれる。

橋の上ではおじいちゃんが携帯で孫の写真を撮っていた。こんな光景は5年前には見かけなかった。まだ写メールなどそれほど普及してなかったし、年配の人が携帯で写真を撮るということもあまりなかった。時代と共に人々の光景も少しずつ変化していく。ここ数年でデジタル一眼を持っている人も激増した。

旅館もこのあたりで終わりになる。泊まりで訪れる人はどれくらいいるんだろう。旅館は営業をしてるようだから、それなりに人が来るようだ。
右端の自動販売機は、おでん缶の自販機だ。少し前に秋葉原で有名になったおでん缶は、名古屋の金山に本社がある天狗缶詰株式会社という会社が作っている。こてんぐのおでん缶は東京で先に有名になってしまって、名古屋人も地元発信のものだと知らない人が多いかもしれない。
市内でも自販機はあまり見かけないから、岩屋堂のものはなかなか貴重だ。瀬戸電の印場駅にもある。

小原村の四季桜の代わりにはならないけど、岩屋堂でもポツリ、ポツリと桜が咲いていた。一重咲きだから冬桜だ。この時期に咲く桜としては、八重咲きの十月桜もある。
島原川沿いを更に上流に向かって歩いていくと、瀬戸大滝の手前に大きな冬桜の木がある。あれはたくさんの花を咲かせる立派な木だから一見の価値がある。余裕がある人はぜひ見に行って欲しい。

引き返してきて、再びサカエ食堂の前。このあたりもきれいに紅葉していた。
シーズンオフの岩屋堂といえば、鳥撮りの人くらいしか訪れないけど、この時期は逆に鳥撮りの人は寄りつかない。鳥たちも人の多さに驚いていたのか、鳴き声さえあげていなかった。ここの鳥は人慣れしてないから、この騒動が過ぎるのを息を潜めて待っているのだろう。

プールの水はシーズンオフになるとすごく汚い。水を抜けばいいのにと思うけど、一年中入っている。
夏は川の水をせき止めて天然のプールもできる。夏休みも水遊びの親子でなかなかの賑わいを見せるようだ。その時期も見たことがないから、来年は一度見に行ってみようかと思っている。

看板だけが残った、つばめ屋。昔は軒先にツバメが巣を作ったりしていてこの名がついたのだろうか。
鈍く反射する二階の窓の様子が、懐かしの昭和を思い出させる。

これが岩屋山薬師堂だ。正面右寄りに巨石と穴があって、中に仏像が安置されている。
僧の行基がこの穴の中で、聖武天皇の病気平穏祈願のために三体の仏像を彫ったとされる。
岩屋堂の歴史に関しては以前にまとめて書いたので、ここでは繰り返さない。

最後にもう一度プールの横を通って帰る。
プール前には少し屋台が出ている。向かって左隣は、比較的新しい料理屋だ。うなぎ屋だっただろうか。
あらためて撮ってきた写真を見てみても、香嵐渓とは比ぶべくもない。岩屋堂は別に向こうに対抗しようとは思ってないのに、周囲が勝手に同等に扱おうとしているだけだ。岩屋堂には岩屋堂のよさがある。
今回はナビの間違いで行くことができてよかったということにしておこう。この日じゃないと撮れない写真もあった。
心残りとしては、浄源寺の参道風景だ。やっぱりもう一度行こうか。今回の状態では物足りない。行くなら本当は早朝のまだ葉っぱが踏み荒らされていない時間帯がいいんだけど、そんな時間に行く根性が私にはない。行けばいい写真が撮れるのだろうとは思いつつ。
今年の紅葉シーズンも残すところ一週となった。来週は天気も不安定なようだし、行ける日も限られる。その中であと2ヶ所くらいはどこかへ行きたい。あっちにもこっちにもは行けないから、一番行きたいところから行こう。