
PENTAX K100D+SMC Takumar 50mm f1.4
今日のサンデー料理のテーマは、和の食材を洋のソースで食べるというものだった。和洋折衷というのは前にもやったけど、あれは和食と洋食を組み合わせるというもので、今回は食材とソースを分けて考えたところに新しい試みがあった。
日本ほど世界中の料理が渾然一体となった国は他にないんじゃないかと思う。世界三大料理と呼ばれるフランス、中国、トルコは、それぞれの独自性にこだわった料理を確立していて、他の国の影響はさほど大きくない。トルコは西洋と東洋が交わる場所ということで様々な国の料理が融合しているけど、その上で独自の料理を作り出していった。
日本が他の国と決定的に違っているのは、自分の国の和食というものを持ちながら、他の国の料理が並列的に存在していることだ。アメリカやヨーロッパなどもいろいろな国のレストランなどはあるのだろうけど、家庭の食卓に他の国の料理が混在することは少ないんじゃないだろうか。中国料理の種類がいくら多くても、日本における多様性はまた別のものだ。
言葉を変えれば、日本は節操なくいろんな国の料理を取り込んだとも言える。結果的に、今日本人が毎日の食事で食べているものは、和食でも洋食でもない新日本料理とでも言うべき独自の料理となっている。日本風の洋食に日本風の中華、イタリア風、フランス風など、食卓に並ぶ料理を分類するのが難しいくらいだ。
外国人は日本の家庭料理を見てどう思うのだろう。食べて美味しいと思うのだろうか。いつか機会があれば、日本食をあまり食べたことがない様々な国の外国人を集めて私の料理を食べてもらいたい。どんな反応をするのか、全然見当がつかない。外国といってもその幅は広く、アフリカ人とロシア人の味覚が同じではないだろうから、なかなか興味深い実験になりそうだ。
そんなことを考えつつ、今日はまずソース作りから入った。最初にソースを作って、それに合うであろう和の食材を選ぶというアプローチ方法を採った。今回のサンデーは、おかずを食べるというよりもソースを食べるのがメインだったと言ってもいい。順番に紹介していこう。
まず左手前は、一見するとトマトソースのように見えて、一応アメリケーヌソースのつもりで作っている。もちろん、本物とはだいぶ違ったもどきソースでもあり、そもそもアメリケーヌソースの定義がよく分かっていない。エビの殻でダシをとったソースのことをいうのだろうか。
オリーブオイルでエビの殻としっぽなどを炒めて、白ワインを加えてダシ汁を作る。
殻を取りだして、刻みタマネギ、ニンニク、切ったトマト、トマトペースト、ケチャップ、コンソメの素、塩、コショウ、砂糖、刻んだエビ、水を加えて、煮込んでいく。
本物はこれを漉してスープ状にするのだけど、もったいないので私はこのまま使う。もっと贅沢に作るなら、エビをオマールエビにしたり、伊勢エビにしたりしてもいい。
食材は、白身魚とジャガイモとニンジンで、白身はグリルで焼いて、ジャガイモはゆがいて柔らかくして、ニンジンはオリーブオイルでカリカリに炒める。最後にバジル粉を振りかけて完成だ。
エビの風味が強く出る分、通常のトマトソースとは違う味になる。コクがあって美味しい。白身魚との相性もよかった。コロッケにも合いそうだ。カニクリームコロッケのアメリケーヌソースも食べてみたい。
右奥は、ソースポロネーズ(またはポロネーズソース)から発進して、オリジナルのソースになったものだ。
ポロネーズというのはショパンの曲にもあるように、フランス語でポーランド風を意味する言葉で、音楽においてはポーランドを起源とするダンスや舞曲を指す。料理では、パン粉をバターで炒めたものをいうらしい。このパン粉ソースというのをヒントに、今回は思いつく限りのものをどんどん追加していって、結果的に偶然美味しいソースになった。ポロネーズからははなりズレている。
まず何か核になるダシが必要だろうということで、鶏肉を選んだ。オリーブオイルでゆっくり炒めて、白ワインで香りづけをしたあと、パン粉を投入。生パン粉の方がいいようだ。
これに、マヨネーズたっぷり、卵、カレー粉、マスタード、唐辛子、塩、コショウ、砂糖、しょう油、牛乳を加えて加熱して、かなりもっさりしたソースが出来上がった。もっと牛乳で伸ばせば柔らかいソースになったのだとは思う。
このソースは最終的にどんな味になるのかよく分からなかったので、食材はどんなものにも合いそうなダイコンにしておいた。それは間違いではなかった。ただやっぱりこのソースなら洋の食材の方がいい。パスタに絡めれば美味しくなりそうだ。チーズを入れ忘れたから、チーズも入れた方がいい。
左奥のは参考にしたものはなくて、ホワイトソースを食べたいというのと、まだ使い切れていなかったカボチャをどうにかしようというところから生まれた、カボチャカレー風味ホワイトソースだ。
まずはカボチャを潰して炒めて、白ワインで伸ばしたところへ、バター、小麦粉、牛乳を加えてホワイトソースを作る。これにほうれん草の刻んだもの、塩、コショウ、コンソメの素、カレー粉を足して味を調え、固さは牛乳で調節する。
食材は、豆腐、しめじ、ブロッコリーを使った。ブロッコリーは地中海沿岸が原産と言われているから和の食材ではないけど、愛知県田原市が全国一の生産量ということで友情出演してもらった。
この料理は、食材の味付けにソースをかけるというよりも、ほとんどソースを食べるための料理だから、食材は邪魔さえしなければそれでいい。
ソース作りはどれも上手くいった。特にアメリケーヌソースもどきは美味しかった。だったら全体の出来もよくて美味しく食べられたかといえば、そう上手くいかないのが料理というものだ。一言で言って、ソースが強すぎた。3つともそれぞれ主張が強すぎて、3品揃うとくどすぎた。ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノとジャック・ニコルソン競演の映画みたいで、濃厚すぎて疲れる味だった。作り手としては満足度が高かったのだけど。
料理はバランスが大事で、濃すぎても薄すぎてもいけない。いい塩梅だとか、いい加減という言葉があるように、ちょうどいい味がいい料理であり、美味しい料理だ。過ぎたるは及ばざるがごとしで、美味しすぎてもいい料理にはならない。
今回は食べ手を置き去りにしたような料理だったから、次からは両方満足できる料理を目指したい。作って楽しく、食べて美味しいというのが趣味の料理の基本だ。作り手の立場としては、簡単すぎてもつまらないし、難しすぎたら上手く作れないから面白くない。身の丈にあった料理を作ることが大切だ。