
FUJIFILM S2pro+Nikkor 35mm f2D
雨のち曇天。太陽はついに姿を見せず、青空が戻ることもなく、夕暮れどきを迎える中、ふと思い立って春日井の王子バラ園に寄ってみた。今日の装備は、FUJIのS2proと35mm F2Dという変な組み合わせ。この珍しいデジセットは、去年の年末に賢島の志摩マリンランドで使って以来じゃないか。たまには使わないとカビが生えそうなので、持ち出してみた。バラ撮りには向かないと知りつつも。
王子バラ園に到着したときはすでに日没時間が迫っていた。西の空がわずかに焼けていて、残された明るさはもうわずかだった。勝負は15分にかかっている。
わりと明るめのレンズとはいうものの、手ぶれ補正もなくゴツいボディのS2proでブレない写真を撮るのは非常に困難だった。三脚なんてセットしてる時間はない。ISO感度を200まで上げて、とりあえず撮れるだけ撮ってみて、使える写真が10枚あればいいやというつもりで撮り始めた。
それにしても、薄暗い中で肉眼でもバラが見えないような状況で写真を撮っている人というのは、客観的に見て変だったと思う。途中から夜桜見物ならぬ夜バラ見物になった。でも、その中でもちょっとした発見もあり、使える写真も10枚以上確保できて、思った以上に収穫があった。

秋バラは春とは違って花の数が少なく、一斉にわっと咲くというよりポツリ、ポツリと順番に咲いてくる。なので、どこをピークと見るかは難しいところなのだけど、王子バラ園に関しては25日現在、すでに出遅れという感じだった。これから咲いてくる花があるにしても、終わっている花も多かった。今年は夏が暑かった影響もあってか、どこも秋バラの出来がよくないという話もある。10月に入っても暖かい日が続いている。

この一枚を見て、S2proらしい発色がどういうものかを思い出した。深みがあって、色が力強い。リバーサルフィルムのような発色は好みが分かれるところだろうけど、私は嫌いじゃない。

35mm F2Dの最短焦点距離は25センチで、倍率は1/4.2だから、マクロ撮影は得意な方ではない。35mm換算で52.5mmというのは標準レンズの画角だ。本来はスナップや風景撮りのレンズだろう。ただ、開放f2ということで、ボケ味はきれいだ。今回は暗かったこともあって、バラ写真は一段絞りのf2.2で撮っている。

あたりはますます暗くなってきて、背景が暗いところではシャッタースピードが1秒とかになってしまって、とてもじゃないけど止められない。S2proを使い慣れてないということもあって、構えたときにカチッとこない。なんかぐらぐらする。シャッターのフィーリングはソフトだから、押したときのブレよりも構えたときにブレを止められないことの方が影響してるような気がする。
空バックにすればある程度シャッタースピードも稼げるということで、明るい背景を探しながらの撮影となっていった。

今日は時間がなかったので、バラの名前は一切気にせず、花の状態がよさそうなものを探して撮っていった。きれいに咲いているものは、春バラよりも繊細でエレガントだ。春は元気がよすぎて開けっぴろげな感じになってしまうことが多い。色も鮮やかになる傾向がある。

私が好きなマダム・ヴィオレとの再会も果たした。きれいに咲いている花がなくて、撮りづらいところにあったので、写真はちょっとブレてしまったのが残念だった。
同じ寺西菊雄作の荒城の月は、今回は咲いていなかった。時期がずれたらしい。天津乙女も暗がりの中で発見できず。

もう一歩寄り切れず、大写しにできないのがもどかしい。バラは花の姿を撮るだけでなく、花びらの造形美や色彩を撮るのも楽しいことだから、寄れないと面白くない。
35mm F2Dは、スナップ用としては高い実力を持ったレンズではあるのだけど。

ブレとの戦いは激しさを増し、だんだん私の形勢不利になっていった。空の明るさだけは足りず、人工的な明るさも味方につけて撮ろうと試みるも、夜には勝てない。フラッシュの光は好きじゃないから、使ったことがないし、使おうという発想もない。

これはどうにかギリギリ止まった一枚。しゃがんで、両肘をヒザの上にしっかり固定するというのが一番安定するポーズだ。
そういえば、ヒザ痛もようやく完治したのだった。痛かったことを忘れているくらいだから、もう大丈夫だろう。ただ、10時間オーバーウォーキングは、今後なるべく控えるようにしたい。特にアップダウンのきつい歩きは危険だ。ヒザを故障すると、撮影行きにも日常生活にも多大な支障をもたらすことが分かって懲りた。

もはや通常の撮影は事実上不可能なほど暗くなった。最後に街灯の下で照らされるバラを撮って終わることにする。
夜バラ写真というのは、私も初めて撮ったし、見たのも初めてくらいかもしれない。光の具合によっては面白い写真になる可能性を感じた。機会があれば、三脚を使ってじっくり撮ってみたい。たとえば、街中に咲いているバラを、バックに走る車と絡めて撮るなんてのも面白い写真になりそうだし、月とバラというのもありだろう。

この写真が今回一番の収穫だった。こんな写真は、自分の中のイメージにはまったくなかった。
雨とか曇りとか夜とか、そういう悪条件の中でしか撮れない写真もあることに、この頃気づいた。カッパを着て、ダイビング用の水中ハウジングで雨中の写真を撮るようになったら、私も本物になれるかもしれない。そんな気は全くないけど。早起き早朝撮影も却下。

個人的定番写真。王子バラ園へ行くと、必ずこの風景を撮っている。煙突がもくもくと煙を吐き出している光景は、何か心惹かれるものがあるらしい。

S2proの実力を見直した一枚。発色だけでなくS2proは水との相性がいいようで、水が絡むと印象的な写真になることが多い。S1proのときからそれは感じていて、FUJI全般の傾向と言える。賢島のときでも、あの海や夕焼けの写真が撮れたのはS2proだったからだと思っている。
だからもっと使ってあげなくちゃと思いつつ、あらためて使い勝手の悪さを感じたのも確かだった。とにかくトロい。ピントはゆっくり迷って合わないこともしばしばで、書き込みも妙に時間がかかる。連写も遅いし、何かにつけてのんびりしている。ゆったりとした気持ちで風景写真なんかを撮るときはいいけど、動きのあるものをテキパキ撮ろうとしても全然ついてこない。図体のデカさも、メリットはない。使いたいと思わせるシーンの限られたデジだ。
秋バラはこれで終わりとしていいのかどうか。花フェスタへ行くほどの気力はない。あそこはちょっと遠すぎる。鶴舞公園か、東山植物園か、行くとしてもそのあたりになるだろう。
バラ写真もいろんなレンズで撮ってきて、今のところ新しい試みというのは思いつかない。人の写真を見て、何かヒントが得られたら撮りに行こう。ソフトフォーカスレンズも全然寄れないから、マクロ的に使うのは無理がある。エクステンションチューブを安く買えたら、一度撮ってみたい気もする。
何はともあれ、この秋も王子バラ園に行けてよかった。2005年の春初めて行って以来、毎年2回ずつ休まず行っているはずだ。春秋の恒例行事になっている。
あとはコスモスをどこかで撮って、秋の野草ももう少し撮ったら、次はもう紅葉だ。花の季節があと少しで終わってしまうと思うと寂しい。
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