
Canon EOS 620+TAMRON SP 17-35mm f2.8-4 / Canon EF50mm f1.8II +FUJI 400
フィルムで撮る瀬戸も今回で最終回となった。雨が降る中、瀬戸蔵を出発して、末広町周辺を少し歩いて写真を撮ってきた。アーケードの写真は昨日紹介したから、今日はそれ以外の補完編のようになっている。
傘を差しながらの一眼片手撮りはかなり無理があったものの、ISO400のフィルムを使ってどうにか手ぶれを抑え込んだ。雨降りでも屋外は意外と光があって、シャッタースピードは稼げるものだ。今回は自分史上最も雨度の高い写真となった。雨の日でもその気になれば写真を撮れると分かったのも収穫だった。
上の写真は、瀬戸蔵の前にいる巨大招き猫だ。笑えるけどあまりかわいくない。写真でじっくり見ると、ツメの描き方とかが乱暴だ。模様や字もあまり上手とは言えない。誰が作ったものだろう。これだけ大きいからさすがに陶製ではなさそうだ。

瀬戸蔵の中の陶器屋さん。一般的な食器類の中に招き猫もたくさんいる。
瀬戸焼の特徴は特徴のないことと言われるくらい幅広くて、どういうものが瀬戸焼らしいものなのか、私も全然よく分かっていない。陶器だけでなく、磁器もたくさん作られている。
18世紀の後半、瀬戸の陶器が下降線を辿り始め、衰退していく中で加藤民吉という陶芸家が現れる。次男坊で本業を継げなかった民吉は、磁器の技術を習得するために九州肥前に渡り、そこで得た技術を瀬戸に持ち帰ってオリジナルの磁器を焼き始めた。それによって瀬戸は磁器でも知られるようになり、息を吹き返したのだった。陶祖藤四郎に対して民吉は磁祖(じそ)と呼ばれ、窯神神社(かまがみじんじゃ)に祀られている。今回そちらは行けなかったので、また機会を見つけて行きたいと思っている。
秋に行われるせともの祭りは、この磁祖・加藤民吉の祭りで、陶祖藤四郎の陶祖祭は春に行われている。このあたりは意外と曖昧になっている部分で、よその人からするとどっちがどっちかよく分かっていないのではないかと思う。瀬戸焼というと、今はもう、磁器を思い浮かべる人の方が多いのかもしれない。
陶器の瀬戸焼は伝統の流れを汲む黄瀬戸(きぜと)、瀬戸黒(せとぐろ)、志野(しの)、赤津(あかづ)、織部(おりべ)などに分類される。

瀬戸蔵の柱の中に飾られていたペアの招き猫。なかなかかわいい。ちょっとネズミっぽいか。
作家によっても招き猫の表現はいろいろで、猫らしくないやつもいたり、デフォルメされたものや、リアルなもの、スリムなものなど幅広い。去年の招き猫大賞は、逆立ちする招き猫だった。

このあたりの道も、すっかり小綺麗になった。昔はもっと雑然とした感じだった。愛・地球博のおかげだ。でもあれがもし、当初の予定通り海上の森をメイン会場にしていたら、瀬戸の激変ぶりはこんなものではなかったはずだ。瀬戸電ではとてもじゃないけど人を運びきれないから、リニモがここまで通っていた可能性は高い。そんな瀬戸の姿は想像がつかない。

昭和の喫茶店。こういう昔ながらの喫茶店も少なくなった。店構えだけ残っていて閉鎖されているところも多い。このcoffee橘はまだしっかり営業していた。こういう店もなくなってしまうと近所の常連さんは困ってしまう。みんながコメダさん好きというわけではないし、洒落たカフェなんて入りたくない人だって多い。ましてやスタバなんて、注文する段階で年配の人は弱ってしまう。トールとかグランデとか、なんだそれって感じだ。注文はアイスかホットで通じるだろう。コーヒーの種類なんて、そっちで美味しいと思うものを出してくれって話だ。
純喫茶というのも最近は見かけなくなった。

末広町商店街が見つからず、軽くさまようことになったときの一枚。二本南側に行きすぎていた。
この道を進むと、新世紀工芸館というのがある。ギャラリーや各種工房などが入っていて、企画ものの展示や、陶芸体験などもできるようになっている。入館は無料で、カフェコーナーのようなものもあるようだ。
このときは招き猫作品の展示をしていたのだけど、時間もなかったので通りすぎた。
更に少し行ったところに市営の駐車場があって、そこも1時間無料だから、末広町商店街を散策する場合は、そちらの方が少し近い。

裏通りの路地に古い建物が残っているのは、そこに油断があるからだ。よそものはあまり通らないという安心感から油断が生まれ、体裁を整えることがおろそかになって、結果的に古いたたずまいが残る。表通りに面していると、古くなっているのを人に見られると恥ずかしいという思いが働いて改装してしまう。昭和好きにとっては残ってくれた方がありがたい。

これは陶生町あたりだったか。ここらには格子の家がいくつか残っていた。半分改築してあってきれいになっていながらも、昔の姿を残そうという意志が感じられる。こういう味わいはいいものだ。

いい感じの道と家並みが続く。昭和の懐かしい匂いがある。夕方に野球帽をかぶった少年が駆けていく姿が似合いそうだ。

似たような写真が続くけど、この連続する風景を見てもらいたくてあえて並べてみた。
曲がった道沿いに家を建てているから、家もそれに合わせて曲がっている。ちょっと坂道になっていている分、土台も傾いていたり、玄関もダイレクトに道と面している。いや、これは玄関ではないのか。
それにしても、昭和だなぁと心の中でつぶやかずにはいられなかった。

なんというか、非常に味のある家だ。ところどころ崩れかけているようなところがありつつ、創意工夫で乗り切っているのが感じられて、頑張ってるなと思わせる。味わいのあるクラシックカーのような家だ。まだまだいける。このまま建ち続けていて欲しい。

最後に瀬戸蔵の展望台に登って、瀬戸の町並みを見下ろしてみた。
正面右手にパルティせとがあって、その左に赤い電車が見えている。あそこが尾張瀬戸駅で、瀬戸電の終点になっている。昔は名古屋城のお堀の中を走っていた。

瀬戸蔵の二階からの眺め。遠くには窯の煙突も見える。
今回の瀬戸紹介はこれで終わりとなった。古民家久米邸や窯神神社など、いくつか取りこぼしたものはあるものの、商店街をすべて見て撮ることができたのはよかった。フィルムで撮ろうと思わなければこの企画はなかった。
またそのうち瀬戸の町歩きもしてみようと思っている。地図を見ても曲がりくねって入り組んだ路地が多いから、歩いて回ればいろいろ収穫がありそうだ。町撮りの面白さも分かったし、他のところも撮りにいこう。
明日は小ネタを挟んで、来週は藤が丘編を予定している。フィルムシリーズはもう少し続く。
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