初めての17mm世界に被写体との距離感が掴めない <フィルム1回>

フィルム写真(Film photography)
17mmの世界-1

PENTAX Z20 / Canon EOS 620+TAMRON SP 17-35mm f2.8-4+FUJI 400 / Kodak 100



 去年、最後にフィルムで写真を撮ったのは夏だったんじゃないかと思う。鳳来寺に持っていったのを覚えているし、海上の森でも一回使った記憶がある。その前は、鶴舞公園もフィルムで撮った。それ以来、今年に入ってまだ一度も銀塩カメラを使っていなかった。たまにはフィルムでも写真を撮ろうと思ったのが、夏の始めくらいだった。それから時は流れ、夏は終わり、季節は秋になった。手持ちのフィルム5本を撮りきるのに2ヶ月くらいかかってしまった。
 今回一つテーマとしてあったのが、17mmの超広角写真だった。TAMRONの17-35mmは、普段デジの広角ズームとして使っているレンズなのだけど、銀塩カメラにも使えるレンズだったことを、ふと思い出した。なんとなくデジタル専用と思い込んでいた。
 17mmというのはファインダーをのぞいただけでもその広さが実感できた。銀塩カメラの場合、デジよりも視野率も倍率も高いから、よけいにそう感じた。
 しかし、17mmならではの写真を撮ろうと思うと、これがなかなか難しい。単純に広いところで撮ればいいというのはあるにしても、ある程度ポイントがないと写真が漠然としてしまう。広く写るということは、それだけ被写体が小さくなるということで、見えているよりも風景がずっと遠くなる。
 そして私は、2ヶ月の間、17mmの風景を求めてうろつくことになった。
 今日から何回かに渡って、フィルム写真シリーズをやっていこうと考えている。途中で中断があるかもしれないけど、全部で10回プラスアルファくらいになりそうだ。フィルムで撮った写真の150枚と、デジで撮った150枚は全然意味が違う。デジのように捨てゴマや押さえ写真はほとんどないから、捨てるのは手ぶれで失敗したものだけになる。
 瀬戸編や藤が丘編などもありつつ、雑多な日常写真が大部分を占めている。意識的に近所の見慣れた風景をたくさん撮った。デジよりもフィルムで撮る場合、未来に向けて残そうという気持ちが強くなる。デジとフィルムでは、撮る意識がだいぶ違う。
 1回目の今回は、家の周りで撮った写真編ということにした。なるべく17mmらしい写真を集めてみたつもりだけど、撮り終わった今でも、やっぱり超広角は難しいと思う。使いこなすというにはほど遠い。
 1枚目は、朝の空写真だ。

17mmの世界-2

 フィルム写真は、色をコントロールできない。撮ってみるまでどうなるか分からないし、現像次第という面もある。jpegでCD-R書き込みだから、レタッチソフトで加工できることは限られる。頼んだ写真屋さんが使っている現像機によっても違ってくるのだろうし、写真屋さんの好みと自分の相性問題もある。
 今回は自分のイメージとは違っていたものが多くて釈然としないところもあったのだけど、それが意外で面白くもあった。デジのRAWで撮ってしまうと、どの写真も自分の好みに偏ってしまって驚きがない。

17mmの世界-3

 これは記憶に近い仕上がりだった。ただ、もう少し露出アンダーの現像でもいい。夕陽の色が上手く出ずに、飛んでしまっている。こうなるとレタッチで赤くすることはできない。無理にすると全体のカラーバランスが崩れる。
 広角レンズでは歪みや周辺の傾きが問題になることが多いけど、超広角になるとそれは避けられないから、味として受け入れるしかない。遠近感が強調されて面白い絵になる。個人的には広角の歪みは嫌いじゃない。

17mmの世界-5

 明るい光があるシーンでの白飛びの例。こうなると白い部分にデータは残ってないから、レタッチで補正は効かない。撮る時点でもっとアンダーにすればとも思うけど、おそらく現像機は自動的に建物などに露出を合わせて明るくしてしまうはずだ。一括で現像を注文しているから、個人でやっている写真屋さんに細かく指示を出すようなことはできない。フィルム写真にそこまでのこだわりは持ってないし。

17mmの世界-6

 超広角は、広いところだけではなく狭いところでも威力を発揮する。人の視界よりも広い範囲が写り込む。
 部屋の中でも撮ってみたけど、全部写ってしまっているから、その写真は出しづらい。店の中で撮るのも面白かったなと、今になって思った。

17mmの世界-7

 夕焼け色に染まった住宅の色がきれいに出ている。空の青も自然だ。
 ただ、明るいところは白飛びしている。フィルムはラティチュードが広いとはいえ、明暗を両立させるのが難しいシーンもある。

17mmの世界-8

 縦撮りでも超広角ならでは写真になる。地面から空まで写る。
 高層ビル群を真下から撮るなんてのも面白そうだ。東京の街を超広角で撮るという企画もやてみたい。

17mmの世界-9

 手ぶれのサンプル。このときはかなり暗くて、確か1秒くらいだったんじゃなかったかと思う。17mmとはいえ、手ぶれ補正なしでは1/4くらいが限界だ。
 ちなみに、これは近所のお好み焼き屋さん。半ば駄菓子屋のようになっていて、夕方に行くと小学生がたかっている。

17mmの世界-10

 何度通ったか分からない引山交差点。東向き。
 17mmならこれだけ広く写る。真ん中車線の先頭ならもっとよかった。おもむろに車を降りて、横断歩道の真ん中で写真を撮ろうかと思いつつ、あまりにも恥ずかしいのでやめておいた。いい写真を撮ろうと思えば人目など気にしていてはいけないのだろうけど。

17mmの世界-11

 引山バスターミナル。最初、どこを撮ったのか分からなかった。こんな写真は撮った覚えがないぞとさえ思った。普段見慣れている光景も、超広角になるとまるで違って見える。
 このあたりも昔と比べると大きく様変わりした。引山バスターミナルができるまでは、完全に郊外といった趣で、まだ空き地もあちこちに残っていた。環状2号線が通ったのも大きく風景を変えることとなった。

17mmの世界-12

 いい夕焼け空だったので、車を置いて急いで歩道橋の上まで登っていった。少し遅かった。この5分くらい前までは、もっと濃い色に染まっていたのだ。惜しいことをした。

17mmの世界-13

 シャッタースピードは1/2くらいだったはずだけど、そのわりにはよくブレずに止まった。歩道橋の手すりにしっかり手を固定したのがよかった。本来なら当然三脚を使うべきシーンではある。
 ヘッドライトとテールライトの光線写真というのはありがちで、自分はやらないぞと反発しつつも、一回くらいは撮ってみてもいいかなと思ったりもする。それが本当に必要で効果的な場面なら、そういう写真もいい。単なる光線写真というのではつまらない。

17mmの世界-14

 近所の飲食店街といえるかどうか、ささやかな夜の明かり。
 昔はここに化粧品の店くらいしかなかったような記憶がある。道を挟んだ反対側に帽子屋さんがあった。大衆食堂いびきが昔と変わらず今でも営業しているのは偉い。たまにあそこの甘いカツ丼の味を思い出して食べたくなることがある。
 今ではこのあたりで飲み食いすることはまったくなくなった。この写真も、10年後、20年後には懐かしい風景になるんだろうか。

 写真の質感はどれもいかにもフィルムといった感じだ。デジタル写真とは明らかに違う。フィルムの方が奥行きや立体感がありつつも、乾いた感じがする。デジ写真の方が無機質だと思いがちだけど、実はウエットだ。デジの方がその場の空気感に忠実だとも思う。フィルムは現実とは別物の世界だ。ホワイトバランスの転び方によっても印象がだいぶ変わってくる。
 フィルム写真については、また追々書いていくとして、今回のメインテーマである17mmの超広角に関して一言で言うと、難しいというものだった。5本のフィルムのうち4本分くらいは17mmで撮ったのだけど、まだコツが掴めなかった。完成図が上手くイメージできないから、何をどう撮っていいのか、漠然としてしまう。狙いを持って撮らないと、17mmを使いこなすのは無理なのだろう。もう少し手前の近いところに被写体を持ってきて、奥行きを強調した写真なんてのも撮りたかった。人入り風景も少なかったのは残念だ。
 明日も17mm写真シリーズは続く。どういう内容にするかはまだ決めていない。
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