養老のおみやげ屋通りを歩いても幼少の記憶は戻らず <養老第2回>

観光地(Tourist spot)
養老2-1

Canon EOS 20D+Canon EF-S 17-85mm f4-5.6 IS



 ここは養老の滝の下流約1キロ地点。橋の上に立って自分の影を見つけると、つい記念撮影をしてしまう。垂井でもやった。他でもやった気がする。次はポーズ付きでやろう。
 この川の名前を、滝谷という。養老山地から始まるこの川は、養老の滝となって流れ落ち、養老公園を横断したあと、別の流れと合流して、津屋川と名前を変える。彼岸花を見に行ったあの川だ。津屋川は揖斐川と合流し、伊勢湾へと注ぎ込む。水もまた長い旅をしている。
 養老シリーズ第2回でもまだ滝は登場しない。そこへ至るまでの散策路と、おみやげ屋紹介で時間切れとなり、次回に続く。もしかすると、間に神社仏閣が挟まって、滝は更にそのあとになる可能性もある。
 実は、養老の滝というのはそんなにたいしたものではない。日本三大名瀑の一つを自称しているけど(一般的には袋田の滝の方が入る)、華厳の滝や那智の滝なんかと比べると迫力はだいぶ落ちる。すごく期待して行くと、拍子抜けしてしまう。
 私が見たかったのは滝よりもおみやげ屋通りの昭和ムードだった。子供の頃のぼんやりしたイメージと、現在の様子を見比べてみてどう感じるだろうというのが興味の大半だった。そういう意味では、養老シリーズのクライマックスは今回と言っていい。滝そのものは、ついでに見に行ったようなものだ。
 結論から言うと、非情にがっかりしてしまったというのが正直な感想だった。かなり寂れていて、昭和の名残が色濃いひなびた観光地を想像していたのに、行ってみたら意外と流行っているではないか。確かにおみやげ屋などはどこも古びていて昔のままのところも多いのだけど、訪れている人が多すぎる。活気がありすぎて面白くない。途中で団体さんまでやって来て、一時は100人以上の観光客に囲まれることとなってしまった。行く前は、せいぜい5、6人としかすれ違わないんじゃないと思っていたから、大きく思惑は外れることとなった。
 平日の午後ということもあってか、若いカップルも多かった。滝デートはありらしい。自分が大学生の頃は、デートで養老の滝に行くなんて発想はみじんもなかったけど、最近の傾向なのか、昔から密かな人気スポットだったのか。
 そんなわけで、他の人たちとは違う意味で拍子抜けとなった養老の滝行きだったけど、写真だけはやたら撮ってきたので、順番に紹介していきたい。たぶん、おみやげ屋にこんなにスポットを当てた養老の滝紹介は他にないだろうと思う。

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 正面遠くに見えているのが養老山脈だ。
 滝谷はこれでもかというくらいに自然の姿を打ち消されて、完全に牙を抜かれた状態となっている。豪快な滝が、1キロ先にはこんな姿になり果ててしまうのは、けっこう悲しいものがある。ここまで工事する必要があったんだろうか。大雨が降ると洪水になってしまうのかもしれない。

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 少し秋の気配。でもクモの巣のが張っていて、まだ夏の名残。
 北海道ではもう紅葉が始まっているというし、そろそろどこへ紅葉を撮りに行くか考えないといけない時期になってきた。去年は奈良と鎌倉へ行ったから、今年は京都かなとも思っている。

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 橋を渡って、駐車場を過ぎたあたりから、おみやげ屋が現れる。一部閉まっている店はあるものの、思いのほか古びていない。
 しげしげとあたりを眺めつつ、こんな感じだったかなぁと、記憶の中にあるイメージとのギャップを感じた。覚えているのはこんな風景ではなかった。道はここしかないはずだ。子供の頃の記憶というのも、いい加減なもので、他の場所で見た風景やテレビで観た光景などがあわさって、本来のものとは違ったものに作り変えられていることが多い。
 このあたりの風景自体がどういうふうに変化したのかもよく分からない。今更だけど、昔のアルバム写真を見てから行った方がよかったか。押し入れのどこかにしまい込んでいるはずだ。

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 ここで洋品店を営むか。養老の滝を見に行った帰りに、ついでにワンピースでも買っていこうかしら、なんて人はまずいないと思うのだけど。全然おみやげ物とも関係ない。
 周囲に少し民家もあるから、そういう人たち向けなのだろう。洋品店なのに喫茶もやっているらしい。店の中の一角がカフェになっているのだろうか。かなり斬新だ。

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 これはかつての旅館だろうか。看板には「瓢遊亭」とある。ネットで調べてみたら、化粧品・ジュエリー・ファッション小物の店と出ていた。本当か。店の佇まいからしてそんな感じはしないのだが。そういえば、表のショーウィンドウの中には、ひょうたんとか人形などの置物が飾られていたような気がする。とすると、やっぱり本当にそういう店なのかもしれない。
 二階の窓あたりを見ると、昔の旅館っぽい風情が感じられる。

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 そろそろ本格的なおみやげ屋通りに入ってきた。営業していた店は、10軒弱くらいだったろうか。それだけ店があるということは、それなりに人がやって来て、営業が成り立つくらい売り上げがあるということだ。私が思っている以上に養老の滝というのはメジャーな観光地らしい。瀬戸の岩屋堂などと一緒にしてはいけない。
 上り坂は最初から始まっていて、それが最後までずっと続く。終盤の300メートルくらいはかなり急になるから、途中であきらめてしまう年配の人もいた。私は奈良と滋賀・岐阜歩きで痛めたヒザがまた悪化することになった。今日になってもまだ完治しない。

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 歩き進んでも記憶はいっこうに戻らない。見覚えのない風景が続く。記憶喪失というのはこんな感じかもしれないと思う。思い出そうにもどうにも思い出せない。
 子供の頃というのは、案外風景を見ていない。自分の興味のある対象が次々と切り替わっていって、全体を俯瞰して関係性を把握しようとか、この風景を覚えておこうという頭がない。だから、記憶は断片的なものとなって、上手くつながらない。
 それにしても、ここまで思い出せないとは思わなかった。ちょっと焦る。

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 養老といえば、養老サイダーを思い出すという人も多いかもしれない。昔から養老の名物だった。
 ただ、本家養老サイダーは、施設の老朽化と職人の高齢化で、2000年に工場が閉鎖になって製造中止になってしまった。それを受けて、現在は別の会社が養老山麓サイダーという名前で再販している。
 ちょっと飲んでみようかと思いつつ、やめてしまったのは、大人になってからの私は炭酸水が苦手になってしまったからだ。子供の頃は毎日がぶ飲みしていたのに、大学生くらいからほとんど飲まなくなった。辛いから、というお年寄りみたいな理由で。
 ごく稀に飲んでみると、ファンタ程度でも涙がにじむ。コーラなど、辛すぎて飲めない。
 昔はコーラとかサイダーとかソーダ水とか、よく飲んだものだ。あの味の記憶は、今でもはっきりと残っている。

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 若いカップルとすれ違って、振り向いて写真を撮ったとき、左の店の座敷で何か食べたかもしれないと、ふと思った。味噌田楽のようなものを食べたような記憶がよみがえったのだけど、定かではない。
 両親に訊いてみても、そこまでは覚えていないだろう。その記憶は、京都での記憶と混乱しているようにも思える。
 結局、最後までおみやげ屋通りの記憶が戻ることはなかった。本当に私、養老の滝へ行ったことがあったんだろうか。

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 このおみやげ屋が最も昭和の風情を色濃く残す店だった。30年くらい変わってないんじゃないだろうかと思わせる。
 ラムネという響きも懐かしい。そういえば昔はサイダーといえば三ツ矢サイダーのことで、一般的にはラムネといっていた。フタのビー玉を押し込んで口を開けて飲むやつ。あのビー玉を取り出したかったのだけど、確かビンを返すと10円とかもらえたんだった。
 コーラもペプシももちろんビンで、自販機に栓抜きが付いていた。当たりが出ると、ルパン三世の下敷きがもらえるとか何とかがあったんじゃなかったか。

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 おみやげ屋が終わると、上り坂が急勾配になってくる。右手の建物は、かつてのお食事処のようだけど、閉鎖されて久しい感じだった。養老の滝全体がこんなふうになっていると私は想像していたのだった。
 養老を侮っちゃいけない。

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 これは旅館だろうと思ったら、酒屋さんだった。看板を掲げているところをみると、今でも営業しているのだろうか。
 ここで橋を渡って左から養老の滝を目指すことになる。右にはリフト乗り場があって、そこから滝へ行くこともできるのだけど……。

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 リフト乗り場自体が異常に上の方にあって、険しいつづら折りの階段を登っていかないといけないのはどうにかならなかったのか。この階段を登る体力と時間があったら、そのまま道を行ってもほとんど変わらないんじゃないかと思う。リフトの宣伝文句は、「濃尾平野を一望」だから、楽をするためにリフトを利用するのではなく、景色を眺めるためというのが主目的かもしれない。実際、登りよりも下りの方が利用客が多いらしい。そんなリフト、あんまり聞いたことがない。
 私も帰りに乗っていこうと思っていたら、営業終了時間になっていた。5時までと思っていたら、10月から4月までは4時半で終わりだった。失敗した。そうと知っていたら行きに乗っていたのに。
 しかし、リフトというのは文字通りスキー場にあるあのリフトで、高所恐怖症の人はとても乗れないくらいスリリングらしいから、私もちょっと危なかったかもしれない。片手で掴まって、片手で写真を撮れたかどうか自信がない。
 リフト乗り場には、昭和50年代に一世を風靡したインベーダーのゲームテーブルが今も現役で置いてあるという話だったから、それだけでも見たかった。

 ここから先は、もう特に何も見所はなく、滝を目指して坂を登っていくだけだ。その先に大きな感動は……たぶん、ない。ああ、なるほど、こういう感じかぁというちょっとした感慨があるだけだ。養老の滝が不幸だったのは、滝とセットになる観光名所を持たなかったことだ。あともう一つでも惹きつける要素があれば、その後の運命も違ったものになっただろう。紅葉の時期はけっこう賑わうのかもしれない。
 養老シリーズは、あと3回の予定だ。滝編と、神社仏閣編と、番外編が残っている。
 明日に続く。
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