
Canon EOS 20D+TAMRON SP 90mm f2.8
稲沢シリーズを続けると神社仏閣ばかりになってしまうので、いったん中断して、グリーンピア春日井に戻ることにする。そういえば、あちらもまだ終わってなかった。
今日は、グリーンピアのとなりにある築水池湿地(ちくすいいけしっち)を紹介しようと思う。去年の同じ時期、グリーンピアを訪れたときにも行っているから、一年ぶりの再訪だ。そのときの様子はちょこっとだけこのブログにも登場している。
この時期の湿地の花としては、まずトキソウがある。夏のサギソウと並んで初夏の湿地の主役だ。カキランももしかしたら咲いてるかと期待したけど、まだちょっと早かった。あれは6月の終わりから7月にかけてだ。築水池はササユリも自生しているから、それも楽しみにしていた。
ササユリはやや時期を外したようで、あまりきれいに咲いているものがなかった。群生してるわけではなくて点在してるだけだから、ちょうどきれいに咲いている時期に当たるかどうかは運次第だ。

池の周りの散策路脇に、こんなふうにポツリ、ポツリと思い出したように咲いている。ササユリというのは本来、明るい森林などを好むはずで、築水池は光があまり当たらないから、育成条件としてはあまりよくないんじゃないかと思う。特に湿地帯を好むというわけでもないし、どうしてここに咲いているのか不思議だ。
もともとササユリは人の暮らしの近い場所で、普通に咲いているありふれたユリだった。万葉集などで詠まれている山百合は、ササユリのことを指すと言われている。
ここまで数が減ってしまったのは、開発と乱獲ばかりではなく、人が野山に入らなくなったからというのもありそうだ。里山というのは、人と共存しないと植生は豊かにならず、放置するとどんどん荒れてしまう。雑草や木々が生えすぎて、ササユリにしてみたら明るさが足りなくなって数を減らしていったのではないだろうか。
自然に対して人間はいつでも悪者というわけではない。上手くバランスを取って共存していくことでお互いにとっての利益が生まれるというものだ。一度崩れたバランスを取り戻すのは難しい。

サギソウは姿を見れば、なるほどちょっとサギっぽいなと思うけど、トキソウはどこがトキだよと思う。トキなんて見たことがないから、これはトキじゃないとは言えないのだけど、写真で見るトキと野草のトキは結びつかない。
それもそのはず、名前の由来は、姿形ではなく色から来ているのだった。トキ色(鴇色)という色があって、それはトキの羽の一部の薄いピンク色をいう。その色とトキソウの色が似ていることから、こう名づけられたようだ。それでちょっと納得はしたけど、トキのどの部分がピンク色なんだろうというあらたな疑問がわく。
学名をニッポニアニッポンという日本を代表する鳥だったトキが絶滅してしまうなんて、なんとも残念というか恥ずかしいような気持ちだ。江戸時代までは、今でいうシラサギのように日本全国の田んぼにいるありふれた鳥だったのに。

築水池湿地のトキソウは、咲いている場所が立ち入り禁止になっているから、守られてたくさん咲いている。ただ、この花は雑然と咲いているから、離れて見るときれいじゃない。ほとんど雑草然としている。トキソウは、近くから見ないとその魅力が分からない。

夏の湿地を代表する植物の一つに、モウセンゴケがある。日本を代表する食虫植物だ。
葉っぱが立ち上がってぴよーんと伸びるのがモウセンゴケで、地べた近くで広がるのがコモウセンゴケ。ときどき、どっちがどっちか混乱する。
モウセンゴケは、白い花を咲かせ、コモウセンゴケはピンクの花を咲かせる。けど、私はまだ一度も咲いているところを見たことがない。特にコモウセンゴケは晴れた日の午前中しか花を開かないから、見られるチャンスは限られる。モウセンゴケは曇りの日の日中でも咲くそうなんだけど。
葉っぱの先についた水滴から甘い匂いを発して、それに誘われて止まった虫を捕まえる。はえ取り紙のように虫はくっついたまま飛べなくなり、モウセンゴケは虫を溶かして吸収してしまうのだ。その場面をぜひ一度見てみたいと思っているけど、いまだに見たことがない。そんなに都合よく虫が捕まるもんなんだろうか。モウセンゴケは相当群生してるけど、全部を養おうと思ったら虫の大群が必要だ。
実は虫を捕まえなくても生きていける。基本的には光合成で生きていて、虫はおやつのようなものらしい。虫からはチッ素分やリン酸などを吸収して、栄養にしているようで、虫を食べると元気になって、葉っぱも赤々となり、きれいな花をたくさんつける。
葉っぱについたものが虫かそうじゃないかもちゃんと区別できるというから、かなり賢い。
モウセンゴケの名前の由来は、葉っぱの様子が獣の毛で織った敷物「毛氈」から来ている。コケという名前がついているけど、苔の仲間ではない。

コモウセンゴケは、通常のコモウセンゴケの他に東海から近畿にかけて分布するトウカイコモウセンゴケと、ナガバノモウセンゴケがある。愛知県で見られるものは基本的にトウカイコモウセンゴケだと思うのだけど、あまり区別がついてない。トウカイコモウセンゴケは、モウセンゴケとコモウセンゴケの交雑種で、中間的な特徴を持っていると言われている。
西日本では白い花を咲かせるシロバナコモウセンゴケが一般的らしい。愛知県ではピンクがほとんどだと思う。
モウセンゴケよりはやや寒さに弱いようで、宮城県が北限とされている。
モウセンゴケは夏だけ葉っぱが緑なのに対して、コモウセンゴケは常緑で、冬には赤色に紅葉する。

ひょろひょろっと頼りないような細い茎を伸ばして、その先にいくつかの小さなピンクの花を咲かせる。一度くらいは咲いているところを見てみたい。虫を捕らえているところも。

草の間からカエルもこんにちは。
これはニホンアカガエルか、違うか。全身が見えてないからはっきりしない。
カエルの見分け方の勉強も進んでない。もうちょっと頻繁に写真に撮れるといいんだけど、最近はあまり見かけなくなって偶然撮れる機会も少なくなった。もっとカエルに親しもうと思えば、カエルのいるところへ積極的に出向いていかないといけない。

ジャノメチョウは久しぶりに撮った。おととしくらいは勉強も兼ねてよく撮っていたけど、最近は見かけても撮らなくなっていた。久々に撮ったら名前が分からない。覚えたはずの見分けポイントもすっかり忘れてしまっていた。
もう一度調べて勉強し直して、少し記憶が戻った。これは白色の帯が真っ直ぐに近いから、ヒメジャノメでいいと思う。この白い線が波打っているとコジャノメだ。コジャノメは翅の色ももう少し濃い。
ジャノメは蛇の目から来ている。丸い模様をヘビの目に見立てたのは納得だ。

この時期、よく姿を目にするホオジロだ。鳴き声でも分かりやすい。大きな声でピッピチューといった感じで鳴いている。どう耳を澄ませても、一筆啓上仕候(いっぴつけいじょうつかまつりそうろう)とは聞こえないけど。

胸を反らせて鳴く姿勢もホオジロの特徴だ。あまり警戒心が強くないから、そこそこ近づいて撮れる。
メスは頭の色がオスに比べると褐色というけど、メスは見たことがないのでよく分からない。高いところで鳴いているのはオスで、そういうふうに目立つ行動をしてくれないと見つけられない。

湿地帯はワイルドな場所にあることが多くて、あまり誰にも彼にもオススメできない。築水池湿地も例外ではなくて、場所はグリーンピアのすぐ隣ではあるけど、車をとめるところから現地まではかなりきついアップダウンの道を15分くらい歩かないと辿り着けない。低山歩きくらいの覚悟が必要だ。
それでも、ここにしか咲かない花があるから、行く価値はある。トキソウに加えて、そろそろカキランも咲き始める頃だろう。この日は見かけなかったけど、ハッチョウトンボも飛ぶはずだ。8月になればサギソウも咲く。
グリーンピアシリーズはこれで終わりではなくて、まだサボテン編と温室の花編が残っている。どちらも季節ものではないから、焦ることはない。そのうちどこかで紹介したい。神社仏閣の合間の一服という感じで挟み込もう。
梅雨の中休みも終わって、また梅雨空が戻ってきそうだ。今日尾張旭と春日井で少し神社仏閣巡りをしてきたから、ネタの在庫はできた。雨の日は神社仏閣の話をゆっくり長々と書くことにしよう。
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