稲沢名所といえば一に国府宮神社で二番目はアジサイ寺の性海寺

神社仏閣(Shrines and temples)
性海寺山門前と紫陽花




 稲沢のアジサイ寺として知られる性海寺(しょうかいじ)。
 真言宗智山派のお寺で、山号を大塚山という。智山派の総本山は、京都東山の智積院(ちしゃくいん)で、大本山に川崎大師成田山新勝寺高尾山薬王院がある。名古屋でいうと、大須観音宝生院が別格本山となっている。
 開祖は覚鑁(かくばん)で、と書き始めると長くなるので今回はやめておこう。真言宗智山派についてはいずれどこかで書く機会もあると思う。

 性海寺は、弘法大師空海が創建したということになっている。あまりはっきりしたことは分かってないようだけど、818年(?)に空海が熱田神宮へ参詣へ行くときこの地を通り、何らかの形で関わってお寺が建ったということらしい。銅像の歓喜天をここに埋めたのが始まりとかなんとか。
 当初の本尊は、空海作の愛染明王だったのかどうか。このあたりもよく分からない。
 現在の本尊、善光寺式阿弥陀三尊像は、1115年、浄連源延上人の手によるものだという。
 1253年(?)、大塚の領主・長谷部源政と熱田宮司出身の僧・良敏が伽藍を再興したというのは、はっきりしているようだ。
 1580年前後に兵火で一度焼失し、1648年に伽藍が再建されたという。
 ただ、この寺を大切に保護したという顔ぶれを見ると、北条時頼、足利尊氏、浅野長政、松平忠吉、徳川義直と豪華なメンバーが並ぶから、かなり重要な寺という位置づけだったらしいことがうかがえる。



性海寺山門

 山門はさほど立派というわけではないけど、江戸時代のものということでなかなかの風格を漂わせる。



性海寺多宝塔

 ちょうどアジサイシーズン終盤ということで、けっこうな賑わいを見せていた。それは門を入って右側の歴史公園の方で、境内は閑散としている。みんなお目当てはアジサイで、寺そのものを目的に訪れた人たちじゃない。
 私が見たかったのはこれ、多宝塔だ。最初に訪れたのは2005年だったか。
 この多宝塔は、コンパクトでスリムな印象を受ける。
 室町時代に建立されたもので、国の重要文化財に指定されている。
 高さは約13メートル。一辺が約3.6メートル。
 下層は四角形で、上層は円形、内部は八角形になっているそうだ。屋根は銅板葺で、相輪は青銅製。
 木製の渋い多宝塔とはまた違った魅力がある。



性海寺多宝塔近くから

 これは裏側から見たところ。



性海寺多宝塔拝殿

 多宝塔の拝殿には愛染明王が安置されている。
 以前は多宝塔と連結されていたそうだけど、今は分離している。
 愛染明王というのは、これまであまり縁がなくてよく知らないのだけど、大阪天王寺にある勝鬘院(愛染堂)は行ってみたい。ここには聖徳太子が建立して、豊臣秀吉が再建した多宝塔がある。



性海寺太子堂

 多宝塔に目を奪われがちだけど、本堂(太子堂)も江戸時代初期に再建された古い建物で、重要文化財に指定されている。
 入母屋造で、屋根はこけら葺。シャチホコも乗ってる。
 本堂の扉はいつも閉まっているのか、時間が遅かったから閉まっていたのか。この中には、室内用の木造宝塔と木製五輪塔があるはずだ。どちらも国の重要文化財で、宝塔は織田信長が安土城に建てた宝塔のオリジナルと言われているものだ。高さ約2.6メートルの黒漆塗で、クギやカンナを一切使わずに造られているという。見られるものなら見たかった。



性海寺紫陽花見物の人たち

 せっかくこの時期にここまで来たのだから、アジサイも少し見ていこうということで、歴史公園に移動する。
 かつては庭園だったところが伊勢湾台風で被害を受けて、平成4年に歴史公園として整備されて今に至っている。どうしてアジサイにしたのかはよく分からない。何か一つくらい稲沢の花名所を作ろうということになってアジサイを選んだのかもしれない。
 約90種類、1万株のアジサイが植えられている。品種名のプレートがあって親切だ。手入れも行き届いている。
 行ったのは6月13日で、やや遅かった。まだ花はかなり残っていたものの、枯れ始めているものもけっこうあって、ピークは外していた。ここは県内の他のアジサイスポットより早いようだ。今年でいえば、6月10日より前に行くべきだったろう。



性海寺古墳とアジサイ

 奥の方へ進むと、こんもりと盛り上がったところがあって、その上から境内を見渡せるようになっている。ただの高台かと思いきや、実は古墳だ。歴史公園と名づけたのは、これがあるからだろう。
 空海が仏像を埋めたのはこことされている。
 大塚古墳と呼ばれる古墳は、直径約50メートル、高さ5メートルほどの円形で、周りは堀で囲まれている。ただし、現在の盛り土は鎌倉時代以降のものだろうと言われている。
 鎌倉時代、ここには大塚城という城があって、そのときこの古墳に土を持って物見台としていたようだ。築城は長谷部信蓮という人物らしいけど、詳しいことは分かっていない。
 大塚山という山号や、大塚町という町名は、ここから来ている。



性海寺アジサイ風景

 古墳の上というか、物見台山頂からの眺め。定番の撮影スポットだ。
 手前にアジサイが咲いていて、現代の建物は木々にさえぎられて、絵になる風景だ。



性海寺アジサイ

 性海寺は一度行ってるから、もう行かなくてもいいかと思ったのだけど、多宝塔コレクションということで思い直してもう一度行っておいた。今回、しっかりいい条件で撮れたし、アジサイも見られたということで、思い残すことはない。愛知の多宝塔コンプリートに一歩近づいた。

【アクセス】
 ・名鉄名古屋本線「国府宮駅」から徒歩約40分。
 ・無料駐車場 あり
 ・拝観時間 不明(夕方には門が閉まるかも)
 
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