
KONICA MINOLTA α-7 DIGITAL+MINOLTA 50mm Macro f2.8
先週、来週のサンデーはタイ料理を作ろうと書いた。実際、そう思って調べてみたのだけど、タイ料理の壁は意外と高かった。何を作ろうにも、ナンプラーとココナツミルクがないと話にならず、タイ料理を一度作るためだけにそれらを買い揃える気にはなれなかった。それらを避けて作ろにも、香辛料や野菜なども特殊で、すべてを日本の食材で代用してしまうとタイらしさがまったく出なくなってしまう。そんなわけで、タイ料理は断念せざるを得なかった。
次に思いついたのが沖縄だった。特に何かのきっかけがあったわけではなく、ガッキーのファンだとかそういうことでもないのだけど、ふと頭に浮かんだのだった。
沖縄など行ったこともないし、沖縄料理なんて見たこともない私だから、全然想像ができないところから出発して、最終的には遠くから沖縄本島を眺めるあたりまではいったと思う。沖縄までは上陸していない。私が作ったのは、あくまでも想像上の沖縄もどき料理だ。だから、私のサンデーを沖縄の人が見て、そんなの沖縄料理じゃないサーなどと怒ってはいけない。なんくるないサーと暖かい目で見守ってください。
沖縄料理といってまず思い浮かべるのがゴーヤーチャンプルだ。しかし、ゴーヤーは一度食べて懲りた。あれはもう食べたくない。苦みや渋み、酸っぱさというのは、舌が危険を知らせるサインだ。ゴーヤーの苦みは、これは食べちゃいけないぞという警告レベルを超えている。本場のゴーヤーチャンプルーは苦みも抑えて美味しいのかもしれないけど、自分で作るときはあえてゴーヤーを入れるという選択肢は考えられなかった。だから、ゴーヤー抜きのチャンプルーにした。
調べてみると、チャンプルーというのはいろいろな種類がある。定義としては、沖縄の豆腐を使った野菜炒めをそう呼んでいるようだ。へちまを使ったナーベーラーチャンプルー、もやしを使ったマーミナーチャンプルーなどがあって、今回はキャベツを使ったタマナーチャンプルーと、そーめんを使ったソーミンチャンプルーのミックスチャンプルーでいってみた。右手前のがそれだ。
沖縄の豆腐は入手が難しそうだったので、普通の木綿豆腐を使った。その地点ですでにチャンプルーの定義からは外れてるのだろうけど、これはまあ仕方がない。
チャンプルーというのは、混ぜるという意味のちゃんぽんあたりに語源があるようだ。
そーめんを軽くゆがきつつ、まずは水切りした豆腐をサイコロに切って、フライパンでガァーっと炒めて表面に焼きを入れる。いったん取り出し、次にキャベツ、鶏肉(本来は沖縄らしく豚肉を使う)を炒めて、豆腐とそーめん、ニラを加えて、塩、コショウ、ダシの素、しょう油で味付けする。
非常にシンプルなのに美味しいのは何故だろう。調味料も必要最小限しか使ってないし、野菜の甘みが出てるというふうでもない。ダシとニラが効いているのだろうか。そーめんのマッチングも思った以上にいい。これは簡単だし、美味しいし、バリエーションもあるし、気に入った。また作って食べたい。
左前は、一応ラフテーを意識して作った豚肉料理だ。これはラフテーの原形からは遠い。ラフテーというのは豚の三枚肉の角煮のことをいうと思うのだけど、どこまでが許容範囲なのかはよく分からない。沖縄では泡盛で煮込んでいくそうだ。
今回は余った焼き豚があったので、それを使ってみた。それだけでは寂しいということで、ゆで卵も一緒に煮込んだ。もはやラフテーはどこかへいってしまっている。
ラフテーの語源はよく分からない。臘火腿(らほとうい)という中国語から来ているのではないかと言われているけど、これはハムのことを指すらしいから、どこかで間違ってラフテーになってしまったのかもしれない。沖縄人は、そんな細かいことを気にしないといえばそうなのか。
これは時間がかかるけど、調理は単純。塩、コショウ、しょう油、酒、みりん、ダシでひたすら煮込んでいく。途中で水と味を足しながら、2時間でも3時間でも好きなだけ煮込んでいけばいい。半日だってかまわない。私が使ったのは焼き豚だから、いくら煮ても柔らかくはならないけど、豚の三枚肉なら煮込むほどに柔らかくなる。
便乗したゆで卵が美味しかった。煮込みおでんのゆで卵みたいに味が染みこんでいて。
右奥は、にんじんシリシリという沖縄のポピュラーな家庭料理らしい。
これもいたってシンプルな料理で、作り方は簡単だ。ニンジンをシリシリ器でシリシリして……って、なんですか、そのシリシリ器ってのは? 詳しいことは分からないのだけど、野菜とかのスライサーのことを指しているらしい。沖縄における正式な商品名なのか、単にそう呼ばれているものなのか、はっきりしたところは不明だ。北海道のママさんダンプのようなものだろうか。
そんなシリシリ器なるものは持ってないので、包丁で千切りにした。ここがちょっと面倒。ああ、シリシリ器さえあればなぁ。
シリシリさえ終われば、あとはツナ缶と混ぜて炒めていくだけだ。最後に溶き卵を流し入れて、混ぜながら炒めて、ダシの素、塩、コショウ、しょう油で味付けすればできあがり。
これも素朴ながら、今まで食べたことがないような味で、なんとなく不思議な気がした。特別変わったことはしてないのに、新鮮さがある。めんつゆで味付けしてもいいようだ。
左奥のものは、沖縄風天ぷらとタコライスをアレンジしたオリジナルだ。これはぜひ、沖縄に逆輸入したい自信作だ。ん? 逆輸出か? 沖縄以外の人にもオススメしたい。
沖縄の天ぷらは、卵と小麦粉と牛乳と塩を混ぜたものにエビや白身魚などを浸して衣をつけて揚げるというスタイルで、私はそこから一歩進めて、団子と衣を一つにした。手抜きという言い方もできる。
エビと白身魚を細かく砕いて、刻みタマネギ、小麦粉、卵、牛乳、塩、コショウを混ぜて、しばらく冷蔵庫で休める。
手で団子状にできるほど固くないので、スプーンですくって油の中に落として揚げる。温度はやや低めで。
ソースは、タコライスの上の部分のオレ流だ。
タコライスと聞いて、当然、タコが乗ったライスを想像したら、全然違っていた。タコは登場すらしてない。タコスの具から来ていて、それをご飯の上に乗せるからタコライス。そういうことだったのか。知らないまま沖縄へ行っていたら、すみません、これタコ入ってないんですけど! と抗議して恥をかくところだった。たこ焼きのタコ入れ忘れとは訳が違う。
タコライスというのは、もともと沖縄のパーラー千里というところが考案したオリジナルだったのが、評判を呼んで沖縄で広く一般的なものとなっていったというのが経緯のようだ。名古屋でいうところのあんかけスパに近いだろうか。
オリジナルのタコライスは、牛挽肉、ニンニク、タマネギ、ピーマンを塩コショウ、チリパウダーで炒めて、チーズ、レタス、トマトとともにご飯の上に乗せて、サルサソースをかけて食べるというものらしい。ただ、最近は一般化して、いろいろなパターンも登場して定義はやや曖昧になっているようだ。
今回私が作ったタコソースもどきは、タマネギの刻み、酒、しょう油、みりん、ダシの素、砂糖、ウスターソース、ケチャップ、豆板醤、とろけるチーズ、粉チーズ、トマトの刻みを混ぜて熱して作った。かなりピリ辛でほどよい甘みもあって、これはいける。ちょっとエキゾチックな味ながら天ぷらとの相性もいいし、他のもののソースとしても使えそうだ。
沖縄風タコ天ぷらとして沖縄料理の一員として加えて欲しい。
今日は、一つひとつは簡単だったので、4品作ってみた。それだけでなく、更にデザートまで作ってしまった。サーターアンダギーという沖縄ドーナツが下のものだ。

これも至ってシンプル。これ以上ないというほど素朴なドーナツだ。けど、これが懐かしくて優しい味なのだ。天ぷらをしたついでに作って食べてみて欲しい。冷めても美味しいから。
サーターアンダギーって、何のことだと思いきや、サーターは砂糖で、アンダギーは揚げ物のことと知って、ウッと一瞬言葉を失った。沖縄の料理名はなまってるだけってのもけっこう多い。
これも中国から渡ってきたもののようで、沖縄という土地はいろんな外国の影響を受けてきた歴史があるから、それらがない交ぜとなって、歳月を重ねる中で沖縄特有のものとして定着していったのだろう。
卵1個に対して小麦粉100グラム、ベーキングパウダー小さじ1、砂糖50グラム、サラダ油小さじ1で、あとは混ぜて揚げるだけだ。
最初に卵と砂糖を、そこに粉を入れて、最後にサラダ油を加えて混ぜる。きめ細かい仕事をしようと思えば粉も振るうべきなんだろうけど、あまりデリケートなお菓子ではないので適当でいい。最初の泡立てでしっかり混ぜればふんわり食感になって、あまり混ぜないとしっとり重ためになるんじゃないかと思う。
油の温度は160度くらいの低めにしないとすぐに焦げてしまうので、そこだけ注意が必要だ。
沖縄料理の再現度としては、70パーセントもいってないと思うけど、私としては満足度が高かった。素朴な沖縄の家庭料理との相性のよさに自分でもちょっと驚いた。本場の沖縄料理を食べたらまた違う印象を持つのだろうけど、自分で作る沖縄もどき料理は美味しく食べられた。また他のものにも挑戦したい。
外国料理というのは、食材にしろ調味料にしろ、なかなか揃えるのが難しいものがあって限界がある。だから、日本国内に目を向けるというのはいい方向性だ。沖縄ほど特徴的な料理があるところはあまりないにしても、各地の郷土料理というのはあって、それぞれの土地の家庭料理でも意外なオリジナル料理があるものだ。全国各地、けっこう変なものを食べている。
全県制覇という試みも面白いだろう。馴染みのない県の人たちは何を食べているのか調べて自分で作ってみれば、今以上に親しみも湧いてくるに違いない。
今後、県の郷土料理はシリーズ化していこう。サンデー料理のいいネタが見つかった。