
三重県四日市市のコンビナート夜景も年々知られるようになり、写真を撮りに訪れる人も増えた。四日市市も観光資源として認識して力を入れ始め、工場夜景クルーズも人気となっている。
四日市の工場といえば昔は公害のイメージしかなかったけど、近頃では夜景の方がすっかり有名になった。川崎、室蘭、北九州、周南市とあわせて五大工場夜景スポットなどともいわれる。
四日市工場地帯の撮影ポイントは主に4つある。
最もメジャーなのが霞ヶ浦緑地の四日市ドーム裏で(
MAP)、高いところから見るなら四日市港ポートビルのうみてらす14<
webサイト>(
MAP)、もう一ヶ所のメインポイントが大正橋の南で(
MAP)、それと少し離れた塩浜エリアだ(
MAP)。
車があれば一日ですべて回れなくはないのだけど、各ポイントへは鉄道でも行けるのが四日市工場夜景のいいところだ。
霞ヶ浦緑地へ行く場合は、JR関西本線の「
富田浜駅」が最寄り駅となる。
撮影ポイントまでは約2キロなので歩いて30分ちょっとかかる。
四日市ポートビルの場合も富田浜駅で降りて20分ほど歩く。
大正橋南は駐車場がないので注意が必要だ。最寄り駅はJR関西本線の「
四日市駅」で、徒歩約20分といったところだ。
塩浜エリアの最寄り駅は近鉄名古屋本線の「
塩浜駅」で、こちらは少々遠くて歩くと40分くらいかかる。鈴鹿川の南から撮る場合は更にかかって1時間くらいだ。

四日市工場の撮影ポイントはどこもほとんど東か北を向いての撮影になるので、夕焼けや沈む夕日を絡めて撮るのは難しい。
唯一夕焼けを撮れる可能性があるのは、塩浜エリアの鈴鹿川南だ。そこも正面からは撮れず、横からの夕日ということになる。

霞ヶ浦緑地公園からの定番カット(
撮影ポイント)。
初めて四日市の工場夜景を撮りに行くならここが一番いい。
ずっと開いている無料駐車場があり、トイレもあって、ドーム裏などは夜でもそこそこ明るい。犬の散歩の人やジョガー、釣りの人などもいるので安心感がある。
写真としては誰が撮っても同じようになってしまうというのはあるものの、長時間露光で煙の表現に変化を加えるなど、アイディア次第でいいのが撮れるはずだ。
レンズは超広角から超望遠までお好み次第。

500mm(35mm換算650mm)を使った撮影。
このように超望遠レンズで撮っても面白い。
ただし、工場地帯は海辺や川辺で風が強いので揺れ対策が必要だ。三脚が揺れてしまう場合は、地面や堤防に直接置いてしまった方が安定するかもしれない。
風の方向が左右の場合は、傘を持っていくと風を遮ることができる。

光をきれいに撮るためにはある程度絞りを絞った方がいい。f5.6からf8くらい、フルサイズ一眼ならf11くらいまで絞ってもいい。

四日市港ポートビル(
web)の14階にうみてらす21という展望室がある。ここも四日市工場夜景撮影の定番スポットとして人気がある。
平日は午後5時までなのだけど、土日祝日は午後9時まで延長営業となるので、このときは夜景が撮れる。
水曜日が休館日で、入館料は300円となっている。

ガラス越しの撮影になるため、室内の光の映り込み対策は必須となる。黒い布をカメラに被せるようにして撮れば映り込みはかなり防げる。カウンターでお願いすると黒布を貸してくれるそうだ。
ここは撮影場所が限られるため、誰が撮っても同じような画角になってしまう。
あまり欲張らず、中望遠くらいで切り取ると雰囲気が出る。
完全に暗くなってしまう前の夕暮れ時が狙い目だ。

霞ヶ浦緑地を撮り、うみてらすも行った、次はどこだとなれば大正橋南がいい(
撮影ポイント)。
橋の北の工場側には近づけないので、三滝川を挟んで南側から撮ることになる。
撮影ポイントはわりとあって、ここはいろいろと工夫の余地がある。レンズは超広角から超望遠までなんでもいける。
撮影場所自体は暗いものの、車は入ってこない道なので安心して三脚を立てられる。堤防があるのである程度風も遮ってくれる。
ただ、堤防の高さがあるので、そこそこ高い三脚(150cm以上)が必要になるという点に注意したい。背の低い三脚だと手前に堤防が写り込んでしまう。
逆に言うと、ミニ三脚を堤防の上に置いて撮るのもひとつの手だ。

大正橋南から撮る工場夜景は、工場の格好良さみたいなものを再認識させてくれる。

塩浜エリアを撮らずして四日市工場夜景は語れない。
近鉄名古屋本線の塩浜駅から歩いて40分くらいかかるので車がないと厳しいのだけど、それでも訪れる価値のある場所だ。
四日市の工場撮影の中で、唯一ここだけが工場に近づいて撮ることができる(
撮影ポイント)。
工場から絶え間なく発せられる音を聞き、煙突から吐き出される化学薬品の香りがする空気を吸いながらの撮影となる。
ここも撮影ポイントは限られるため誰が撮っても同じような画角になりがちなのだけど、写真の味付けの違いによって意外と個性が出る。
明るく撮るか暗く撮るか、ホワイトバランスはどうするか、全体を広く撮るか切り取るか。センスが問われるところだ。

雨が降ったら撮影行きは中止にしてしまうのはもったいない。雨の工場夜景もまた素敵なのだ。
レインコートを着たり傘を差したりしてカメラを守りつつの撮影はなかなか厳しいものがあるのだけど、それを乗り越えたとき、晴れの日には撮れないものが撮れる。
雪の日ももちろん狙い目だ。

塩浜は工場に近づいて撮るのもいいのだけど、鈴鹿川を挟んだ南から撮るのもまたいい(
撮影ポイント)。
磯津橋を渡って東に行くと川辺に降りていける場所がある。すぐ右手はもう伊勢湾だ。
風の弱い日なら川面が鏡面になり、映り込みもきれいになる。
夕日は左手に沈み、夕焼けも期待できる。
個人的にはこの場所が四日市工場夜景の中で一番気に入っている。黄昏と夕暮れの間のブルーモーメントの時間帯が美しい。

川辺に降りず、堤防の上から撮るとこんなふうに光の映り込みを絡めて撮ることができる。
少し距離があるので、標準から望遠が適している。

工場の細部を眺めていると、用の美という言葉を思い出す。これら工場を形作っているすべてのパーツが必要というのも驚きなのだけど、それを美しいと感じる人間の感覚も不思議だ。美を追究したわけでもないのに。

四日市は西高東低で西には山、東は海という地形なので、西へ行くと標高が高くなり、高台から夜景を眺めることができるポイントがいくつかある。
その中で一番のオススメは垂坂公園だ(
地図)。
工場からだいぶ離れてしまうのだけど、四日市の夜景とあわせて撮ることができる。
ここは無料駐車場やトイレもあるので、デートで訪れるカップルも多い。展望台も用意されている。
今回、ナイトクルーズは紹介できなかったのだけど、このように四日市工場夜景は様々な場面から撮ることができる日本屈指の工場夜景撮影スポットとなっている。陸海空から撮れるということで3D工場夜景などとも呼ばれている。
カメラやレンズの性能が上がった今、入門用の一眼カメラと三脚さえ持っていけば誰でもきれいな工場夜景写真が撮れる。カメラさえ動かなければ三脚もいらないくらいだ。レリーズケーブルを持っていなくてもセルフタイマーを使えばブレない写真が撮れる。
工場夜景は目で見るだけでも充分きれいなのだけど、写真に撮ってこそ美しさが引き出されるという面があるので、まだ撮ったことがないという人もぜひチャレンジしてほしいと思う。人の写真を見るよりも自分で撮ったものを見る方が喜びは倍増だから。
『工場夜景』 工場ナイトクルーズ(編) 二見書房
こちらで四日市エリアの解説を担当しています。
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