
Canon EOS 20D+EF50mm f1.8II
唐突だけど、今日はチェコスロバキア料理を作った。
おそらく、チェコスロバキア料理について詳しい人は少ないだろうから、写真を見てへぇこれがそうなんだと信じてしまったかもしれない。チェコスロバキア料理をよく知っている人は、これが偽物だということにすぐに気づくだろう。ただ、意気込みとして、チェコスロバキア料理を作ってみようとしたのは確かだ。ぼんやりと雰囲気は出てるのではないかと、自分では思っている。本物のチェコスロバキア料理を一度も見たいことがないから実際のところはよく分からないのだけど。
そもそも何故チェコスロバキア料理などを作ろうと思ったのかといえば、自分でも思い当たる節はない。ふと、チェコスロバキアという国が思い浮かんで、そうえばチェコスロバキアの人って何を食べてるんだろうと考えたのがきっかけだ。この時点では、チェコとスロバキアが分裂していたことも分かっていなかった。
その国の人が何を食べているかを知るには、まず地理と歴史を学ばなければならない。チェコスロバキアについて持っている基礎知識はあまりにも少ない。首都がプラハで、昔サンフレッチェ広島にいたハシェックって確かチェコ代表だったよなというくらいのものだ。
ただ、よくよく思い返してみると、そういえばカフカはプラハの生まれだったことを思い出した。ドボルザークもそうだ。スポーツ関連では、名テニスプレイヤーを多数生んでいる。レンドルやナブラチロワがそうだし、ヒンギスはスロバキア生まれだ。村山のザトペック投法は、チェコの陸上選手で金メダリストのザトペックから来ている。日本ともまったく無縁の国ではない。ボヘミアンガラスもチェコの伝統工芸品だ。葛城ユキのヒット曲「ボヘミアン」も、チェコのボヘミア地方に住んでいたジプシーのことだ。一昔前に流行ったボヘミアンルックを着ていた人たちはチェコを意識してはいなかっただろうけど。
歴史的に見ると、大国の思惑に翻弄された小国で、けっこう苦労している。
もともとスラブ系の民族が住んでいた土地で、チェコとスロバキアはお仲間だった。その後、チェコはドイツ系の支配が強くなり、スロバキアはハンガリーとオーストリアに飲み込まれ、だんだん別の民族へとなっていく。
1918年、第一次大戦によって、オーストリア-ハンガリー帝国が崩壊すると、チェコスロバキアとして独立することになる。もともとお仲間だったんだから、この際一緒にやっていこうという話になったらしい。
しかしながら、工業地区で豊かなチェコと、農業地帯だったスロバキアではいろんな面で温度差が大きかった。経済的格差もあって、次第に互いの不満が高まっていく。
ナチスの干渉やら第二次大戦やらあれこれあって、最終的には1993年に分離することになった。スロバキアにしたら横暴なチェコのやり方についていけず、チェコからすると支えるのに負担が大きすぎるスロバキアはお荷物と感じていた。分離は両者の思惑が一致したことで円満に進んだのだった。
世界地図を見ると、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、ウクライナと、西欧と東欧に囲まれた中欧の国だということが分かる。なので、文化的にも、料理も、西欧、東欧の影響を受けながら発展していった。チェコ名物の料理は実はハンガリー料理だったり、周辺の国がそれぞれ自分のところがオリジナルだと言い張ったりしている料理もある。何をもってオリジナルとするかは難しく、境界線は曖昧だ。
内陸ということで、まず海の魚がない。周辺の国と必ずしも仲良くしていたわけではないから、有益な交易ルートを確立してなかったのだろう。自給自足を基本としている。
主食はまずジャガイモだ。これを潰したり、こねくったり、煮たり焼いたり、いろんなところで使う。日本でいう米に近い感覚のようだ。
海の魚が入ってこないから川魚を食べる。マスなどが主で、クリスマスには鯉を食べるそうだ。
肉もよく食べる。肉料理の種類は多く、味付けはシンプルながらパンチが効いていて、けっこう日本人好みのようだ。
野菜は少ない。寒冷地で多くの野菜が育たないから、新鮮な生野菜などはあまり食べないようなので、ベジタリアンにはつらいかもしれない。
ビールの国というのも今回初めて知った。ビールといえばドイツというのが一般的なイメージだけど、消費量世界一はチェコなんだそうだ。たくさんの種類のビールがあり、国民飲料としてみんなでこぞって飲んでいるらしい。バドワイザーもチェコ生まれなんだとか。
このような基礎勉強を踏まえて、今日はチェコスロバキア料理に挑戦してみた。出来上がったのが上の写真3品というわけだ。
まず左手前は、ブリンゾヴェー・ハルシュキというものを意識して作ったジャガイモ料理だ。
ジャガイモをレンジで加熱して潰して、卵、小麦粉、塩、コショウ、コンソメの素を入れてよく混ぜる。コンソメの素なんてチェコスロバキアには売ってないだろうけど、現地のレシピそのままで作ったらきっと美味しくないから、自分の好みに合うようにアレンジする必要がある。
よくこねくって粘りけを出し、沸騰したお湯にスプーンですくって落とす。5分くらいゆがいて浮かんできたらすくい出す。
ソースはホワイトソースを作った。バター、小麦粉、牛乳、塩、コショウ、コンソメをフライパンで温めながらよく混ぜて作る。終盤にとろけるチーズを加える。本場では羊のチーズを使ったりするそうだ。
焼いたベーコンを乗せて完成となる。
これはなんというか、すごく美味しいわけではないけど不味くもなく、少しの量なら食べられるけどたくさんあると飽きる料理だ。おかずというよりご飯的な感覚で食べるといいかもしれない。
ハルシュキ再現度がどれくらいなのか、私には判断がつかない。
奥のは、グヤーシュ、またはグラーシュと呼ばれるスープを基本としている。
牛肉や豚肉の煮込みスープのことで、ハンガリー発祥のチェコ料理だ。ハンガリーとチェコでは少し味付けが違うらしい。日本のビーフシチューに近いようで遠い。
これも定義がよく分からないので、自分なりにアレンジして作った。
タマネギ、鶏肉、ジャガイモ、ニンジン、黄色パプリカ、トマトをオリーブオイル、ニンニク、ショウガ、白ワインで炒める。
鍋に移して、水を加え、コンソメ、塩、コショウ、砂糖、唐辛子、パセリで味付けをして、よく煮込んでいく。あとからブロッコリーも加えた。
本場のものには、ラード、グリーンペッパー、キャラウェイなどが入るようだけど、その結果どういうふうに味が変化するのか想像がつかない。家庭料理だから、各家庭によっていろいろと具材や味付けも違っているのだろうと思う。
これは万国共通に近い肉野菜煮込み料理だから、普通に美味しい。チェコを旅したときは安心して注文してよさそうだ。
右は代用料理で、チェコ料理でもスロバキア料理でもない。
マスや鯉なんて、ダイエーには売ってない。売ってたとしても、マスはともかく鯉は食べたいとは思わない。日本の鯉とチェコスロバキアの鯉では違うらしいし。
代わりに鮭を使った。
マス料理もシンプルさが基本で、フランス料理のように手の込んだことはしない。焼いたり蒸したりして、あとはソースをかけて食べるようだ。
今回は、ほうれん草ソースを作った。ほうれん草をかるく湯がいてきつく絞り、みじん切りにする。
ちょっとした試みとして、魚肉ソーセージを使ってみた。チェコスロバキア料理の特徴の一つとして、ハムやサラミなどの加工食品も豊富らしいので。
刻んだ魚肉ソーセージと、みじんのタマネギ、ほうれん草、あとはしめじも使った。チェコスロバキア人はキノコ狩りも好きなんだそうだ。
オリーブオイルとバター、白ワインで炒め、コンソメの素、塩、コショウ、バルサミコ酢、飲むヨーグルト、マヨネーズで味付けをした。
ソースが美味しくできたから、これならマスでも食べられそうだ。
その他として、牛のヒレ肉と野菜を煮込んだシチューのスヴィーチコヴァー、肉の煮こごりトラチェンカ、チェコのお好み焼きブランボラーク、スロバキアのカツレツ・シュニッツェル、豚肉ソーセージのカプストニカなどがよく知られた料理としてある。
豆類もよく使い、スープの種類も多い。
肉とジャガイモを中心に、素朴だけど創意工夫が見られて、日本人の好みに近いというのが、私のチェコスロバキア料理に対するイメージとなった。
私が作ったをチェコスロバキア料理と呼んでいいのかどうかは微妙なところだけど、少しでも近づこうとしたことは意味があった。こうして料理を作ってみようと思わなければ、チェコスロバキアについても何も知らないままだった。今回で多少なりとも近づけたような気がする。
久々の世界料理シリーズは楽しかった。また面白そうな国がひらめいたら挑戦してみることにしよう。アフリカとかだと作ろうにも食材が手に入りそうにないから、もう少し難易度の低いところがいい。南米なんかはよさそうだ。北欧なんかも未知の料理だ。