
PENTAX K100D+SIGMA 17-35mm f2.8-4
1年間、おのぼりさんとして東京の街を巡りながら、一番行くべき所へ行っていなかったことに気づいた。そう、東京タワーにまだ行っていなかった。おのぼりさんなら真っ先に行かなければならない東京のシンボル。昔も今も日本一高い山が富士山であるように、日本一高い建物はずっと東京タワーであり続けている。こんなときじゃないと行けないだろうということで、ツレと一緒に行ってみることにした。
東京巡り一周年記念として東京タワーに登ったのは正解だった。リリー・フランキーがそうであったように、東京という街に関わる人にはそれぞれ東京タワーに登るべきときがある。東京で生まれた人にとっては小さい頃両親に連れられて行くところだろうし、地方出身者なら初めて行く東京名所になるかもしれない。あんなものは気軽にひょいひょいと何度も行くようなところじゃない。何かのきっかけで、えいやっと気合いを入れないと行けない。たまたま巡り合わせで気軽に行くことになったとしても、それはきっと心に何らかの印象を残すものになるだろう。
東京タワーは21世紀の今でも、東京のシンボルとしてでんと大きく構えて立っている。時代と共に古びていって時代遅れのものに成り下がったと思っている人がいるかもしれない。私も登ってみるまでそう思っていた。けど、実際は違っていた。その圧倒的な存在感は今なお健在で、東京タワーはやっぱり日本一なんだと深く納得させられたのだった。
その偉容は、近づくほどに頭上にのしかかり、真下から見上げると、ただ感嘆の声をあげるばかりとなる。こりゃあ、すごいな、と。名古屋のテレビ塔とは全然違う。

写真が前後するけど、少し離れた場所から見た東京タワーだ。お馴染みのオレンジと白の光が夜空にくっきりと浮かび上がる。
これは冬バージョンで、暖かい色のオレンジ色となっている。夏場は涼しげな薄いオレンジ色で、東京タワーも季節によって衣替えをしているのだ。
他にもいろいろなイベントでライトアップの色が変わることがある。乳ガン早期発見啓蒙キャンペーンで毎年ピンクになり、今年の11月には世界糖尿病デーでブルーになった。少し前には 「マトリックス リローデッド」公開記念でグリーンになったり、 2002ワールドカップ開催記念ではシャンパンブルーになったこともあった。
照明デザインを担当したのは、ライトアップの第一人者、石井幹子だ。現在のように下から照らし出すライトアップが始まったのは1989年だった。それまでは鉄塔の四隅に一定間隔で電球を設置してシルエットを浮き上がらせていた。一晩の電気代2万5,000円を高いとみるか安いとみるかは難しいところだ。
東京タワーがある港区芝公園はやや半端なところに位置していて、初めて行く場合はちょっと迷う。どこからでも見えるから歩いて行けばやがては辿り着けるのだけど、地下鉄で行く場合はそうもいかず、やや面倒だ。一番分かりやすいのがJR山手線で浜松町まで行って、そこから歩くという方法だ。ただ、15分くらいかかってちょっと遠い。あとは、大江戸線の赤羽橋か、三田線の御成門駅、日比谷線の神谷町駅あたりが5分から7分くらいと近いものの、地方人には聞き覚えのない駅名だ。なんで東京タワー駅というのを作らなかったのだろう。
平日はともかく、週末の東京タワーはかなり混雑しているから、チケットをあらかじめ買っていくというのがオススメだ。コンビニの端末で買えば820円が740円とわずかに安くもなるし、チケット買いで並ばなくて済む。その後エレベーター待ちで並ばざるを得ないのだけど。

「誓いのタワー」にリボンを結ぶというイベントがあって、趣旨はよく分からないまま我々も参加してみた。誓いなのか願いなのか、その根拠や意図はどこにあったのだろう。特に願い事を書いたりするわけでもなさそうだ。東京タワーへ来たという記念と思っておけば大きな間違いではないだろう。
こういうものはあまり斜に構えず、素直にやっておくのが一番だ。深く追求してはいけない。去年も5万人がリボンを結びつけたとかで、完成したツリーの写真を見たらモコモコにふくらんでいた。上の写真は、まだまだやせ細っている状態だ。これからクリスマスにかけてだんだん膨張していく。

時間がなくておみやげ屋はあまり見られなかったのだけど、外からちらっと見たところ、かなり昭和色が濃そうだった。なつかしおみやげの定番である木刀が入り口すぐにあったり、神風と書かれたはちまきやペナントのようなものさえあった。もちろん、金色の東京タワーミニチュアも各種取りそろえられていた。やはりおみやげ物屋はこうでなくちゃいけない。王道中の王道をここに見た。

展望台の入り口が分からず、少し迷った。チケット売り場からエレベーターの方につながっていて、フットタウンと呼ばれるテナントスペースへ最初に行ったから分からなくなってしまったのだ。そこの2階から1階に降りたところにエレベーターがある。
コンビニで買ったチケットはエレベーター前のカウンターで通常のチケットと交換することを忘れないように。コンビニチケットを持って並んでいてもエレベーターの前で止められてしまうから気をつけたい。
それにしても長蛇の列にびっくり仰天。土曜の夕方6時半でこんな状態になっているとは思いもよらなかった。東京タワーはこんなにも人気スポットだったんだ。8時半頃帰るときに見たら、列は2倍以上になっていて外まではみ出していた。恐ろしいことだ。
結局、エレベーターに乗るまでに30分近く待たされただろうか。ただでさえ定員数の少なくて遅い旧式エレベーターなのに、この日は3基の内1基が点検で動いてなくて、2基でまかなおうとしてるから無理がある。この点検作業はしばらく続くようだ。土日は階段も解放されているようだけど、夜は閉まっている。

ようやく大展望台に到着した。ここまで来るまでになんだかえらく苦労したから、感動というよりもやれやれという気持ちが強かった。リリーさんのようにドラマチックとはいかなかった。
150メートルという高さは今となっては平凡だ。東京には他にももっと高い展望スペースがたくさんあって、私たちは何ヶ所も行ってるからこの程度では驚かない。
ちなみに、日本で一番高い展望スペースは、横浜ランドマークタワーの273メートルだ。東京タワーのこの上にある特別展望台の250メートルより高い。サンシャイン60のスカイデッキが240メートル、名古屋ではミッドランドスクエアのスカイプロムナードが220メートルだ。以前はJRセントラルタワーズの245メートルがあったけど今はない。名古屋のテレビ塔は180メートルだ。

大展望台にはタワー大神宮がある。これぞ日本文化。外国人にこのセンスが理解できるだろうか。現代でも超高層ビルを建てる前に神主さんを呼んでお祓いをするくらいだから、昭和33年にここを建てたとき神様もお祀りしようと考えたのは不思議ではない。あるいは、こんなに高い建物を建ててしまったことでバベルの塔のように神の怒りを買うことを恐れて、先回りしてここに神様を呼んでしまおうと考えたのかもしれない。
祭神は、伊勢神宮と同じ天照皇大神(あまてらすすめおおかみ)。ちょっと大胆な神様選びとも思えるけど、ここが天に近い場所であることを考えると妥当なところか。
御利益は、恋愛成就、合格祈願、交通安全だそうだ。どの程度の力なのかは分からないけど、天界に一番近い神社だから願い事が聞き入れられやすいなんてことも言われたりする。
正式名称「日本電波塔」が建てられたのは、昭和33年(1958年)のことだった。戦後の復興めざましい東京で、今後発展していくであろうテレビ、ラジオの放送事業に対応するための総合電波塔として建設された。
高さは一般的に333メートルとされているけど、実際には332.6メートルだそうだ。ちょっとだけサバを読んでいる。完成当時はパリのエッフェル塔よりも高く、世界一高い塔だった。
工事は大量の職人がかき集められ、これだけの規模でありながら1年3ヶ月で完成している。ビートたけしのおやじさんの菊次郎もペンキ職人として参加するはずがそれを断ったというエピソードがたけしの作品の中で出てくる。最近では、映画『三丁目の夕日』で建築途中の東京タワーが登場していた。
2011年の地上デジタル放送に向けて、新東京タワー構想が実現の手前まで来ている。紆余曲折を経て、墨田区に建てられるという話が決まって、いよいよ着工間近となったところで待ったがかかった。今ある東京タワーのアンテナの位置を高くすれば地デジにも対応できると言い出したからだ。
完成すれば高さ610メートルという異次元の塔となる第2東京タワーだけど、この先の展開は読めない。工事を始めるなら2008年からということだ。さて、どうなることか。個人的には東京タワーは1本でいいだろうという思いがある一方で、450メートルの展望台からの眺めも見てみたいとも思う。
もし新東京タワーが建てられなかった場合は、東京タワーの背が今より100メートルくらい伸びる可能性もある。それはそれで見てみたい。

ずいぶん前置きが長くなってしまった。東京タワーといえば展望台からの眺めがメインだろう。夜なら東京の夜景だ。その写真を出さずにどうする。
当然三脚は禁止だけど、ガラスの映り込みも少なく、おあつらえ向きに肘を載せる台があるから写真は撮りやすい。手持ちの夜でブレを完全になくすことは無理でも、ある程度抑え込める。
手ぶれ補正付きのK100Dならシャッタースピードは1秒でこれくらいは止まる。一段絞りのF3.2だったか。できればもう少し絞りたかった。

こちらはお台場方面だ。芝はもう海に近いところで、隅田川の河口も見える。遠くにはレインボーブリッジのライトアップもよく見えた。
昼間なら富士山や房総半島まで見渡せるそうだ。元日は朝の6時にオープンして、初日の出を見るために大勢の人が展望台に登るという。

六本木には近いから、ヒルズやミッドタウンも近い。ただ、新宿の高層ビル群は遠く、全般的にはやや見所が少ないようにも思った。池袋は遙かに遠く、サンシャインも暗くて高いビルとして小さく見えるだけだ。
そして、何か物足りないなと思って、はたと気づいた。そうだ、東京タワーがないんだ、と。
東京で高いところに登れば、たいていのところからは東京タワーが見える。それを目印に方角を判断してるのに、目標物としての東京タワーがない。これは意外な盲点だった。当たり前なんだけど、東京タワーを見たければ東京タワーに登っている場合じゃない。

東京タワー名物のひとつガラス張りの床「ルックダウンウインドウ」。足下から真下を見られるようになっている。
ただ、夜はガラスの傷に光が反射して下は見づらい。昼間はきっと恐いのだろうけど、夜はさほどではない。子供はこの上で飛び跳ねていた。あんまりはしゃぐと床が抜けるぞ。
ここも座るところがほとんどない。スペースの問題もあるだろうし、長居されても困るという思惑もあるだろう。休みたければフロアにあるカフェで何か注文しろということか。
このあと、特別展望台にも登るのだけど、その話は後編で。だいぶ長くなったので、前半はここまでとしたい。続きはまた明日。