
Canon EOS 10D+TAMRON 28-300mm XR(f3.5-6.3), f6.3, 1/100s(絞り優先)
拾い食いしてる最中のリスザル。何やら考え中。サルだって日々の暮らしの中でいろいろなことを考えながら生きているに違いない。これは食えるのかなとか、あの子供うるせぇなとか、飼育員め早くメシよこせとか。このときは何か小さな虫でも見つけたんだろうか。指先でつまんで一所懸命見ていた。食うべきか食わざるべきか、それが問題だ。
リスのように小さいからリスザル。その中でも写真のこいつは、ボリビアリスザルだ。普通のリスザルはコモンリスザルといって、頭の毛が体と同じ明るい褐色なのに対してボリビアリスザルは黒いので区別がつく。頭だけ黒くてちょっと笑える。口の周りも黒くて泥棒メイクだし。
その他、セアカリスザルというのもいて、リスザルというのはこの3種の総称だ。
ボリビアリスザルは名前の通り、南米ボリビアの森林を中心に、コスタリカやパナマなどで暮らしている。かつてはコモンリスザルの亜種とされ、最近は独立種として扱われているようだ。
胴体は30センチ前後、体重も1キロ程度と、とっても小さい。6畳一間のアパートでも飼えなくはない。
ジャングルの中では、数十頭の群れで行動し、果物や昆虫をとって食べている。性格は至って穏やかで、他の群れとぶつかってもエサの取り合いをするようなことはないそうだ。コモンリスザルは、エサ取りが得意なオマキザルの群れにくっついていっておこぼれちょうだいしたりするという。賢いんだかやる気がないんだかよく分からない。
リスザルの一日は、散歩から始まる。しばらく歩いたら朝の食事で、そのあとは夕方までまったりと過ごす。隠居のじいさんのような生活だ。性格的にはイタズラ好きな面もあるそうだ。
こんなリスザルだけど、あるとき大役を仰せつかった。猿で初めてロケットに乗って宇宙へ行くというのに指名されてしまったのだ。もちろん、リスザルの方からお願いしたわけではない。1958年、アメリカのロケットで宇宙に打ち上げられ、地球に帰ってきたあと、パラシュートが開かず無事帰還ならず。落ちていく途中、だから頼んでないのに~、と思ったんじゃないだろうか。

たそがれながら何か食っているのはカニクイザル。小さな子供が、あっ! カニ食ってる! と嬉しそうに叫んでた。それを聞いたお母さんは、あれはカニじゃないだろう、と突っ込んでいた。確かにカニじゃない、イモか何かだ。
ただ、こいつの好物がカニであることは確かなようで、そこから名前が付けられた。インドネシア、フィリピン、ミャンマーなどの東南アジアの島々に広く生息している。
すんでいる環境も様々で、海沿いから川や池、ジャングルから大都市まで、適応能力が高い。海ではカニなどを食い、池や森では果物や昆虫、都会では都会の食べ物を食べているそうだ。なので、都会育ちのカニクイザルはカニなんて食ったことも見たこともないのかもしれない。
体長50センチ前後と、ニホンザルより少し小柄なものの、かなり近い種類と言われている。ニホンザルの尾っぽが短いのに対して、カニクイザルの尾っぽは50センチもあるという違いはあるけど。
性格的にはニホンザルよりもおっとりしてるそうだ。

見るのは初めてなのに見慣れてるように思えたワオキツネザル。テレビなんかで見てるのか。縞々模様の長い尾っぽが目印だ。
ワオキツネザルって、ワオ! という驚きから来てるのかと思っていたら、輪尾、つまり輪っかのような尾っぽから来てるんだそうだ。なーんだとちょっと残念。英名もring-tailとそのままだ。学名のLemur cattaは、日本語にすると化け猫。鳴き声がニャーというかギャーという叫び声みたいで、それが騒いでる猫の鳴き声に似てるところから付けられたのだろう。
アフリカのマダガスカル島にのみに生息している珍しい猿で、絶滅が心配されている。ただ、そのわりには日本の動物園にたくさんいる。繁殖も難しくないというし、現地では何が起きているのだろう。
大きさは40センチほどで、体重は3キロ前後。特徴である尾っぽは50センチ以上ある。この尾っぽはそれぞれ個体差があって、仲間同士の視覚的なコミュニケーションにも用いられているらしい。
食べ物は、主に果物や葉っぱなどで、ときにシロアリやセミなども食べる。
ワオキツネザルは島国育ちということで、他のサルとはいろいろ違っている点が多い。まず、原猿類と呼ばれる原始的な霊長類で、知能は他のサルのように発達していない。顔がキツネっぽいのもサルらしくない。
他のサルには見られないメス上位の社会を形成してるという点も珍しい。数頭から数十頭の群れの中で、一番下のメスよりも一番上のオスの地位は低い。まったくもってメスには頭が上がらないワオキツネザルなのだ。エサも一番いいところは食べさせてもらえなかったりする。
趣味はひなたぼっこ。夜中に冷えた体を温めるために、朝一はみんなで太陽の方に腹を向けて1~2時間ほど日に当たる。ようやく温まったところで遅めの朝飯を食べ、すぐに日陰で昼寝。午後は木の上を走り回ったり、叫んでみたり、地面を歩き回ったりして過ごす。オスはメスの顔色をうかがいながら。
更にオスにとって厳しいのは、メスが交尾可能なのが一年に一日しかないということだ。その日ばかりはオス同士の争いが激しくなるという。そりゃあもう必死さ。のんきにひなたぼっこなんてしてる場合じゃない。
ひとくちにサルと言っても世界にはいろんなやつらがいて、それぞれ個性的な性格を持ち、様々な暮らしをしている。ただひとつ共通して言えることは、悪いサルはいないということだ。人間にとって悪いサルはいても、世界にとって悪いサルはいない。それぞれの環境の中でみんな一所懸命生きている。自分の持てる知能の限りを尽くして。
だからやっぱり、人間はサルから進化したのではないと私は思う。サルはサルだし、人間は人間は。最初から最後まで、良くも悪くも。
人間よりサルの方が優れているとは言わないけど、人間は今一度サルから学ぶべきだろう。生物としての基本的な部分を。もしかしたら、ワオキツネザルの女性絶対優位の社会を人間界にも適用したら、その方が上手くいくのかもしれない。そしたら戦争もなくなりそうだし。