
シマウマの白黒ツートンは正しい。マレーバクに感じた違和感はない。それどころか美しくさえある。シマウマカラーのロングコートを身にまとって夜の錦三丁目あたりを闊歩してみたい。いや、してみたくない。ゼブラーマンじゃないんだから。
写真は子供のシマウマを見守る母親なんだと思う。体が赤っぽいのは、まだ小さいからだ。生まれたばかりのシマウマは、茶色っぽくて全身縮れ毛に覆われており、しばらくは縞も茶色をしている。はっきりと白黒になるのは大人になってからだ。
シマウマは、白地に黒なのか、黒地に白なのか、というのはよく言われることだ。あれは、白地に黒が正しい。写真のシマウマの足を見ると分かると思う。黒い縞が薄くなっていて、地肌の白が多く露出している。でも、たまに黒地に白の変わったやつもいるというから油断は出来ない。
毛を剃ってみると、黒の下は黒で白の下は白だそうで、そういう意味では元から白黒と言った方がいいのかもしれない。
ではひとつ質問。シマウマの縞は縦縞か横縞か? 当然、縦縞だろうと思うと不正解で、答えは横縞だ。縦に見えてるのは人間の目からで、シマウマの視点から見ると横縞だから。馬のようにヒヒーンと立ち上がった図を想像してみると、あ、横縞だ、と気づく。頭からagnis b.のボーターTシャツを着せると、ほら横縞が縦になる。
もうひとつ見逃してはならないのは、たてがみもシッポも縞模様が入っているということだ。念が入っている。
縞模様の話は続く。
何故シマウマは縞模様をしているのか、という素朴な疑問。こんな白黒じゃ目立ってしょうがないんじゃないか。いやいや、サバンナではこれが目立たない格好なのだ。いつも群れで固まって行動しているシマウマを遠くから見ると、灰色っぽく見えてまわりの木々や草と同化してしまう。特にライオンなんかの肉食獣は色が見えてないので、シマウマも近づかないとよく見えないらしい。縞模様も目がチカチカするとかなんとか(ホントか?)。単にオシャレでこんな模様をしてるわけではない(当たり前)。
縞模様になっているもうひとつの理由として、仲間同士が相手を見分けるためなんじゃないかという説もある。人間でいうところの指紋のように、ひとつとして同じ模様はないという。なるほど、写真を見るとそうだ。それでも、親兄弟は似るというから、それも面白い。
シマウマはアフリカのみに生息していて、大きく分けると、ヤマシマウマ、サバンナシマウマ、グレビーシマウマの三種類の亜種がいる。一般的で私たちがよく知っているのは、サバンナシマウマで、日本の動物園にいるのはその中のグラントシマウマとチャップマンシマウマだ。東山動物園のはチャップマンだけど、グラントの方が多いかもしれない。縞模様の違いで区別されている。もうひとつ、クアッガという亜種がいたが、これはすでに絶滅してしまった。
グラントは、スーダンからタンザニアにかけての東アフリカに、ナミビアやジンバブエなどアフリカ南部にチャップマンが暮らしている。
通常は1頭のオスと数頭のメス、その子供たちという群れで暮らし、乾期になると水と食料を求めて大移動をするので、そのときは数百頭の大所帯になる。そのときが子供が襲われるピンチなので、なるべくみんなで固まっていこうというわけだ。
シマウマは、漢字で書くと縞馬で、馬科に属してはいる。けど、実際はロバの方に近いと言われている。
鳴き声は、馬とは違い、ワンワンと鳴くんだとか。甲高い犬の鳴き声に似てるらしい。一度聞いてみたい。
食べ物は、イネ科の草の葉や根っこ、木の葉など。喉の渇きに弱く、水がないと長く生きられない。昔の野球部には入れない。
性格は神経質であると同時に気性が荒くもある。自分より弱い者をイジメ、強い者からは走って逃げる。顔に似合わず性格はヒネている。だから、家畜にはまったく向かない。かつて何度も手なずけようとしてことごとく失敗したという。下手に出ると言うことを聞かず、強く出るといじけて気持ちがダメになってしまう。当然ペットとしても飼えない。ワシントン条約にも引っかかるし。
でももし人間がシマウマを飼い慣らすことができていたら、今ごろは競馬場で走っているのは馬ではなくシマウマだったかもしれない。何しろシマウマは訓練されたサラブレッドより速く走ることができるのだ。サラブレッドが時速60キロくらいなのに対して、シマウマは時速70キロで走れる。そのへんをうろついてる無名のシマウマでさえ、ディープインパクトより速い。
草食動物と肉食動物がサバンナを思って見る夢はきっと違うだろう。片や襲う側、片や襲われる側、それぞれ立場が違うから。それでもやっぱりシマウマもサバンナを駆け回る夢を見るのだろうか。走るときは命がけの逃走であったとしても。乾期は喉も渇くし腹も減るけど。
動物園で毎日を過ごす動物たちが何を思って暮らしているかは分からない。私が彼らにしてあげられることは何もないけど、せめて彼らの代わりにサバンナを自由に駆けている姿を想い描こう。使命を終えて、彼らの魂がサバンナへ帰っていけるように、天の関係者各位にお願いしたい。