
トラフズクに会いに庄内緑地に行ってきた。ポイントを探してうろつくこと約20分。あー、いました、いました。トラフズクさん、お休み中です。寝起きドッキリの桑マンのように忍び足で静かに近づくと、気配を感じたのか、薄目を開けたトラフズクさん。ん? 気づかれたか? いや、大丈夫。またすぐに目を閉じて寝てしまいました。
夕方とはいえ、太陽が出てるうちはまだ睡眠の時間だ。夜行性の彼らにしてみたら人間でいう早朝にあたる時間帯だったのだろう。もうちょっと寝かせてっ! と思っていたのかもしれない。
しかし、ホントにいるんだ、トラフズク。静かに感動した。フクロウを見たのは生まれて初めてだったから。しかも、こんな名古屋市内の公園にいるなんて。今年は4羽来てるらしい。木の茂みに隠れるようにすっこんでいるから、私には3羽しか見えなかった。今日ほど目が悪いことを残念に思ったことはなかった。双眼鏡を買おうかと初めて本気で思ったのだった。ますます野鳥の会の人に近づいていく私。
木の枝が邪魔して全身を撮ることができなかったけど、そんなことよりも実際に見られただけで充分満足だった。東山動物園で初めてコアラを見たときよりも20倍くらい嬉しかった。
トラフズクというのはあまり聞き慣れない鳥の名前かもしれない。フクロウの仲間で、大きさは40cmくらいだから、わりと大きめ。実物はとても存在感があってそれ以上に大きく感じる。
特徴はなんといっても目立つ耳だ。頭の上に猫のようなウサギのような耳がぴょ~んと立っている。ただし、これは耳ではなく飾りの羽だ。どんな役に立っているのかは分からないけど、これがチャームポイントになっている。バニーガールになった女の子の魅力がアップするように(アップするのか?)
目がまたいい。昼間は寝てるから閉じてることが多いのだけど、目を開けると赤っぽいオレンジ色の光彩で、猫が暗いところにいるときのような瞳をしている。この目だけ見ると鳥のようには見えない。動物の目を思わせる。
なかなか見かける機会はないけど、すごく珍しい鳥というわけではなく、北米からヨーロッパ、アジアの広い範囲で普通に生息している。日本にいるやつは、中部から北の地方で繁殖して、寒い冬になると南の方に下がって越冬する。そのときが観察のチャンスとなる。雪の少ない地方なら実は意外と身近にいるフクロウなのだ。
昼間は寝床の木でじっとして動かない。人が近づいたり話しをしていてもわりと平気らしい。日が沈んで夜になると活動を開始する。ネズミが好物で捕って食べる。ネズ公にとってはやっかいな鳥だ。小鳥も食べる。昼間はのんきそうに見える彼らも、夜はハンターになる。特命係長・只野仁みたいだ。
繁殖は初夏。一夫一婦でカラスやタカたちの中古の巣を借りて行う。昼間は寝ないといけないし、夜はエサを捕らなきゃいけないから、巣なんて作ってるヒマはないのさ、ウーウー(勝手な想像と鳴き声の代弁)。
卵は5個前後、あるいはときにもっとで、わりと子だくさん。橋下弁護士並み。メスが卵をあたためて、オスがエサを捕ってくる。子育ては両方でする。この巣を見つけたらラッキー。子供のトラフズクもまたかわいいので、いつか見てみたい。
この耳にこの姿、どこかで見たことあると思ったら、「となりのトトロ」だった。トトロはこのトラフズクがモデルになったのではないかという話がある。あれはお化けという設定だったけど、耳といいスタイルといい、似てるところはある。宮崎駿監督が実際どれくらい参考にしたかは分からないけど、ヨーロッパなどでもポピュラーなフクロウでイラストや切手にもなっているので、そちらからのイメージだったのかもしれない。
トトロの由来は、「所沢のお化け」というのを監督の知り合いの女の子がうまく言えず、「ととろざわ」と言ったことがきっかけになったんだそうだ。由来的には所ジョージに近いものがある。
トラフズクは漢字で書くと、虎斑木菟。虎斑(とらふ)というのはトラの模様の意味で、ズクは、角(つく)から来ているとか、兎の脚に似てるから名づけられたなどと言われている。少し釈然としないところもある。
英名Long-eared Owlは、そのものずばり、長い耳のフクロウという意味だ。こっちの方が分かりやすい。
どんな鳥も初めて見たときは感動するものだけど、こいつは格別だった。今なら庄内緑地公園へ行けばまず間違いなくいるので、近くの人はぜひ。この場所は渡りの途中の短期滞在なので、そろそろいなくなるだろうから、少し早めに。
場所は、第一、第二駐車場から噴水を越えて、バラ園を過ぎて、池の更に向こうの一番奥、庄内川に近いあたりだ(直接ポイントに行くなら奥の第四駐車場が近いかも)。木の周囲に黄色いロープが張ってあるし、たいてい誰かが入れ替わり立ち替わり見に来ていて、木の上を見上げてるのでそれと分かるはず。一度中日新聞に載ってしまったことで週末はすごい賑わいになってしまうそうだ。夕方は逆光になるので、時間に余裕があれば午前の方がいいかもしれない。
昔から毎年ここには彼らがやって来るんだと地元のおじさまは言っていた。前は10羽くらい来たこともあったとか。これだけ毎年人が集まってきてもここに来るということはよほどお気に入りなのだろう。来年は子供も連れてきてくれると嬉しい。
花や野草や鳥や虫に興味を持つようになってから、再会を待つ喜びが増えた。今年出会ったものとはまた次の年も会いたいと思う。トラフズクたちにもまた来年、きっと会いに行こう。それまでお互い元気で暮らそう。