
今日は曇りのち小雨の一日だった。こんな日の夕方はなんとなくつまらない。いつも行くドラッグストアのレジ担当が男だったときみたいに。
だから、少し前に撮った夕陽の写真でも眺めて楽しむことにしよう。最近すっかり夕陽の逃げ足が遅くなったおかげで、簡単に捕まえられるようになった。喜ばしい。逆に初夏のようにあまりにも長く居座られると、そろそろ帰った方がいいぞ、と声をかけたくなったりするのだけど。
夕陽、夕焼け、夕景。いろんな色があり、様々な表情を見せてくれるけど、どれもいい。物心ついてから30年以上見てもちっとも飽きない。毎回、ああ、いい色だなと思う。天にそのつもりがなくても、これは天の贈りものだと思う。晴れ渡った青空もいいけど、やっぱり夕焼け色には特別な何かがある。人の心の深い部分に届く。それは懐かしさからくるものなのか、人間の遺伝子の記憶なのか、動物の本能なのか。これは人間だけが感じてる感情なのだろうか?
世界の人々は夕焼けに対してどんな気持ちを抱いているんだろう。日本人と同じなのか違うのか。確かなことは言えないけど、日本人は世界の中でももっとも夕焼けが好きな国民なんじゃないかと私は思っている。それは日本における夕焼けの多彩な表情と無関係ではないだろう。日本には四季があり、海があり、山がある。島があり、港があり、街がある。人々の暮らしがあり、歌がある。おそらくこれだけの要素を兼ね備えた国は他にないだろう。だから日本人が夕焼け好きなのは当然といえば当然なのかもしれない。
ねえ、お母さん、どうして夕方になるとお空が赤くなるの?
そんなことを訊かれて困ったことがあるお母さんもいるだろう。そんなお母さんの代わりに私が答えましょう。
大人になったら勉強しなさい、と。
それでも納得しない場合は、ちゃんと答えてあげるといい。子供の頭では理解できないことも、正しく教えてあげることは大切なことだ。一部でも分かるかもしれないし、分からないところは自分で調べて分かるようになりたいと思うかもしれないから。
ややこしいところは飛ばして簡単に言うと、夕方になって太陽が地表近くの位置に来たとき、光がチリのたくさんある空気の層を通過して私たちの目に届く。そのとき、七色の中で波長の短い紫や青の光はバラバラに散乱して人の目からは見えなくなって、波長の長い赤色だけが目に届くから赤く見えるということになる。よい子のみんなは分かるかな? 分かんねえだろうなぁ(ネタが古い)。
こんな実験をしてみるといい。透明なコップに水を入れて、そこにほんのちょっと牛乳をたらして濁らせる。そのコップで白い蛍光灯を透かしてみると、蛍光灯は黄色に見える。それとよく似た現象だと子供に説明してあげると少しは納得するかもしれない。
夕焼けが赤いときとオレンジのときがあるけど、あれにも理由がある。大気中のチリや水蒸気が多いと赤くなり、少ないとオレンジになる。冬の乾いた空気のときはオレンジになり、夏の高気圧で湿ったときは赤くなる。
空気中のチリや汚れが増えすぎると、今度は赤色さえ届かなくなって、夕陽もぼや~んとしてしまうのだという。だとするなら、遠い将来地球の人々は濁った夕焼け空にかすんだ夕陽を見ることになるのだろうか。今の私たちは少し汚れた空の下で、歴史上もっとも美しい夕焼けを見ているということになるのかもしれない。
夕陽を見ていると夕焼け小焼けの歌を思い出す。今の子供が大人になったときはどうなんだろうか。学校ではまだ童謡なんかを教えているんだろうか。
ふたつあるうちのどちらを思い出すかは人それぞれだろう。私は、夕焼け小焼けで日が暮れての方を思い出す。人によっては、夕焼け小焼けの赤とんぼの方なんだろう。
日が暮れての方の2番の歌詞を知ってるだろうか。
♪子供が帰った後からは まるい大きなお月さま 小鳥が夢を見るころは 空にはきらきら金の星♪
こんなふうに続いてるとは知らなかった。
ところで、夕焼け小焼けの「小焼け」ってなんだろうと思った人も多いんじゃないだろうか。「夕陽が沈んで15分くらいすると空が少しだけ明るくなるのが小焼けだ」というもっともらしい説があるようだけど、それはちょっと出来すぎのような気もする。本当のところは、言葉の調子を整えるためのもので意味はないそうだ。そんな日本語もないという。なんだ、そうなんだ。それはそれで面白くないな。やっぱり夕陽が沈んだあとの残照を小焼けと呼ぶ方が気が利いている。
歌詞の続きといえば、夕焼け小焼けの赤とんぼの方の3番がすごいことになっている。
♪十五でねえやは 嫁に行き お里の便りも 絶え果てた♪
なんて恐ろしい歌詞なんだ。続きが気になるぞ。しかし、話をはぐらかされて、
♪夕焼け小焼けの赤とんぼ とまっているよ竿の先♪
ここで終わってしまい、ねえやのその後はようとして知れない。「TVのチカラ」の超能力捜査にお願いしようか。
季節は冬から春へ。夕焼けは秋が一番だけど、春には春のよさもある。今後も夕陽を追いかけていこう。次にいい夕陽が撮れたときは、「ゆうひが丘の総理大臣」の思い出話を書きたいと思う。
♪恋人よ~ 愛なん~て~ 言葉は捨てろよ~
流行の服も~ 生き方も~ 疲れるだけさ~♪
夕陽を見つめながらこの曲を口ずさんでいる男を見かけたら、ソーリ、ソーリ、ソーリと呼びかけてください。辻本清美のモノマネで。
(今日も全編ネタは古かった)