
名古屋の金山にある名古屋ボストン美術館に鈴木春信展を見にいってきた。
名古屋ボストン美術館は経営が上手くいかず、今年2018年で閉館が決まっている。去年だったかおととしだったかにそのニュースを聞いて終わるまでに一度は行っておかないといけないと思っていた。
期間は明日1月21日(日)までなので、駆け込みになってしまった。興味のある方は明日までなのでギリギリ間に合うか、この記事を見ているのが21日なら本日限りということになる。
鈴木春信に関しては作品を生で見たことがなく、興味があった。日本にはほとんど残っておらず、大部分が海外に出てしまっているので見る機会は少ない。
現存数は1,000点ほどとされており、そのうちの800点ほど海外の所蔵で、その中の600点以上を本家のボストン美術館が持っている。向こうでも展示されることは少ないようだ。
今回はビゲロー・コレクションを中心に全部で150点ほどが来ている。初の里帰り作品も多く、春信の作品をこれだけまとまって見られる機会はめったにない。
私が思っていた以上に人気があるようで、終わりが近い平日の昼時というのに、訪れている人は多かった。
150点といってもすべてが春信作品ではなく、同時代の浮世絵師たちの作品も多く展示されていた。50点くらいは春信以外の作品だっただろうか。
それらと比較すると春信の技量がいかにずば抜けていたかがよく分かる。とにかく描写が巧みで、人物が生きている。シーンを描いたものが多く、その中で人がちゃんと息づいて動いている。単に絵が上手いとかそういうことではない。
美術館で本物を生で見ることの意義は、作者と同じ目線、同じ距離感で作品と対峙することができるという点だ。絵を構成している線の一本いっぽんがいかに巧みに描かれているかなどは、間近で見て初めて感じ取れることが多い。
春信の人物は動き出しそうなのに他の絵師の人物は止まっている。他の絵師も充分上手いのに、それでも明かな差がある。その差がどこから来るのかは分からない。技量の違いといってしまえばそれまでなのだろうけど。
もう少し早く紹介できればよかったのだけど、すっかり遅くなってしまった。
名古屋ボストン美術館の展覧会は残り2つとなった。次回は2月18日から始まる「ボストン美術館の至宝展」で、最後は「ハピネス展」となっている。
訪れてみて気づいたことは、美術館として悪くないけどやはりボストン美術館の借り物だけでは厳しいだろうということだった。
愛知県美術館や名古屋市美術館のように自由な展覧会ができないのはつらい。そのため常設展もなく、展覧会と展覧会の間がけっこう空いてしまう。
ずっと展覧会の内容を気にしていたわけではないけど、魅力的な展示会の情報が引っかかってこなかったということからすると、展覧会の弱さということに尽きるのだと思う。
ボストン美術館頼みの限界ともいえるし、名古屋人気質を読み切れなかったのも敗因だろう。名古屋の人間は珍しくて新しいものには飛びつくけど、一度行ってしまうとなかなか二回は行かない。名古屋でリピーターを獲得するのは難しく、それができるかできないかが生き残りの鍵を握る。
今更だけど普通に東京や神奈川あたりに作っていれば普通に継続していたようにも思う。


【アクセス】
・JR/名鉄/地下鉄「
金山駅」南口出口より徒歩約1分
・駐車場 なし(周辺に有料駐車場あり)
公式サイト 鈴木春信展