
以前、阿久津直記『練習しないで、字がうまくなる! 』という本をこのブログで紹介した。
阿久津直記著『練習しないで、字がうまくなる! 』を読んで目が覚める
過去に何度も挫折しては数年後にまた懲りずにペン字の練習を再開するということを繰り返して現在に至っている私なのだけど、あの本の中で字がうまく見えるボールペン選びについて書かれているのを読んで、実際にいくつかボーペンを試してみた。そうしたら、ペン字よりもボールペン探しの方が面白くなってしまって、今はボールペンを買い漁る人になっている。完全に本末転倒だ。
しかし、ボールペンといってもその種類は多く、意外にも奥が深い世界だということを思い知った。どれも一長一短があって完璧なボールペンというものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね(村上春樹)。
ああでもないこうでもないといろいろ書き比べてみるのだけど、袋小路にさまよい込んだみたいになってどのボールペンがいいのか分からなくなってしまっている。自分ひとりでは判断できないので、皆さんに紹介して判断を半ば委ねてみようというのが今回の記事の主旨だ。
まずは安いものからということで、すべて200円以下のものに限定した(一部200円を超えている)。
まだまだ増殖中ということで、今後シリーズ化していくのではないかと思っている。
カメラの世界にはレンズ沼という言葉があるのだけど、これはボールペン沼と呼んでいいだろうか。世間には文房具好きの人がたくさんいるようだから、いろんな文具の沼にはまっている人もいるのだろう。中でもボールペン沼というのは文房具界ではありがちなのかもしれない。ネットを検索するとオススメボールペンのページがけっこうあることからしても。
まず断っておかなければいけないのは、あくまでもこれは私の個人的な感想であり、私は筆圧が弱いタイプだということだ。
筆圧は個人差があって、私はほとんど力を入れずにサラサラ書きたい方なので、筆圧が強い人とは感想がずいぶん違ったものになるはずだ。筆圧が弱いのでわりとカスレが発生しがちで、カスレるボールペンは好みではないということになる。
書く紙に関しては、Campusノートの澪という上質紙(中性紙)に書くことを前提にしている。下敷きは今回使用していない。

《三菱鉛筆 ジェットストリーム 0.5》 油性
安価なボールペンの王者。ボールペンの歴史を変えた金字塔的な存在。2010年代には年間1億本の売り上げを誇った。
反日感情が高まる中で文在寅大統領の側近チョ・グクが会見中にジェットストリームを使っているのが見つかって韓国国内で叩かれていた。
発売は2006年ながら今でも人気ボールペンランキンではトップになることが多い。
各メーカーが追いつけ追い越せでジェットストリームの対抗ボールペンを開発、発売するも、王者は強し。
自分に合ったボールペンを探そうとなったとき、まずはジェットストリームから始めるべきだと思う。これが基準となるからだ。
しかしながら、個人的にはこれがベストとは思えない。なにかこうぐっと来ないというか物足りない感覚がつきまとう。
確かになめらかな書き心地でカスレもまず発生しないのだけど、走り書きしたときの微妙なザラザラ感が気になるし、逆にゆっくり書くと少し滑る感じもする。
優等生だけどどこか面白み欠けるというのが私のジェットストリーム評ということになる。
ただ、油性ボールペンとしての信頼度は高いので、郵送物の宛名書きなどはこのボールペンを使うことが多い。
ヨドバシ価格 113円~

《ゼブラ ジムノックUK 0.7》 油性
ジェットストームの対抗馬の一本といえる油性ボールペン。
芯が0.7mmということもあって、ジェットストリームよりも濃い字が書ける。
書き味はなめらかながらジェットストリームよりも粘りがある。カスレも発生しない。個人的にはジェットストリームよりもこちらの方が好みだ。
同じ油性の黒でも色味がメーカーやボールペンによってけっこう違っていて、書き比べると違いが分かる。ジェットストリームとジムノックUKでは色味の方向性が違うので、そのあたりは好みが分かれると思う。
私としては一本、いい油性ボールペンを確保できたと感じている。
ヨドバシ価格 81円~

《パイロット アクロボール 0.7》 油性
とにかくなめらかさをとことん追求したボールペン。滑る、滑る。皮底の靴で氷の上を歩いているみたいだ。
これを気持ちいいと感じるか、滑りすぎると感じるかは人によるだろう。私はちょっと苦手だ。
速く書いてもゆっくり書いても滑りすぎてきれいな字が書けない。はねる必要のない線ではねてしまったりするし。
過ぎたるは及ばざるがごとし、といったところか。
ヨドバシ価格 140円~

《ゼブラ ブレン 0.7》 油性+水性(エマルジョンインク)
軸ががたつかない、ブレないことを目指して開発されたボールペンで、ブレンの名はそこから来ている。
確かにブレはないし、書き心地はなめらかだ。評価も高く、ボールペンの人気ランキングで1位になることもある。
ただ、評価の高さに反して個人的には今回紹介する中でもっとも苦手なボールペンとなっている。アクロボールが滑ることに特化しているのに、それよりもよく滑る。ボールペンはブレないけど書いているこっちの手がブレまくり。
字が上手い人はこれくらい滑っても制御できるのだろうけど、下手な人間が使うとますます字が下手になる。これはいけないと思った。
最初、0.5の芯を選んだら細すぎると感じたので0.7の替え芯を買って入れ替えたのだけど、太さ以前の問題だった。
安価なボールペンの中ではデザインは一番好きなので、可能であれば他のボールペンの芯に入れ替えて使いたい。
ヨドバシ価格 132円~

《ゼブラ サラサクリップ 0.5》 ゲルインク
ゲルインクボールペンの決定版的なボールペン。
トータルの書きやすさでいえばこのボールペンが一番かもしれない。油性ならジェットストリーム、ゲルインクならサラサを買っておけばまず間違いない。
丁寧に書いても、走り書きしても字が安定する。サラサラ書けるからサラサという名前なのだけど、ちょうどいい具合に制御が効くので、走りすぎないし引っかからない。そのあたりは絶妙のバランスだ。
油性と比べると字がくっきり濃いのがゲルインクの特徴で、そこは用途と目的によって使い分けたい。
ただ、いくつか不満もある。一番の不満はそのデザインだ。
見た目がどうにも安っぽい。いかにも事務用品といったふうで使っていて楽しくないし愛着が持てない。デザインはやはり大事で、安価だから仕方がないといわずもう少し値段が高くなってもいいからデザインを工夫してほしい。
たぶんそういう声が多かったのだろう、高級版的な位置づけのサラサ グランドというのが出ている。定価は1,100円だ(ヨドバシ価格551円)。いやいや、それもいいのだけど、200円くらいでもう少しなんとかならないかと思ってしまう。
せっかく書き味は抜群なのに、見た目の残念さから意外にも出番は少ない。
ちなみに、ブレンとの軸の互換性はない。
ヨドバシ価格 77円~

《パイロット ジュースアップ 0.4》 ゲルインク
ジュースという製品の改良版でジュースアップ。ジュースについては使ったことがないので分からない。
”激細×なめらか”というコンセプトで、軸が非常に細い。シャープペンの軸先のような恰好をしている。そのため、とても繊細な書き味になっていて、第一印象はよかった。
しかし、とにかくカスレる。書き出し、横線、縦線と、すべての線のどこかでカスレが発生してしまうことがストレスになる。ペンを寝かせ気味にしてもカスレるので、使い勝手が悪い。
これは私のように筆圧の弱い人間には向かないボールペンだ。逆にいうと、ペンを立て気味にしてしっかり書くタイプの人なら使いやすいんじゃないかと思う。手帖に細かい文字を書き込んだりするのに向いている。
しかし、自分に合わないボールペンほどデザインが気に入るというのは皮肉だ。
ヨドバシ価格 196円~

《パイロット フリクションボール ノック 0.5》 フリクションインキ
軸についたラバーでこすると文字が消えるボールペン。これもボールペンの歴史を変えた商品といえるだろう。
消えるボールペンなんて使い道があるのかなと思っていたけど、使ってみるとけっこう便利なものだ。摩擦熱で消えるようになって、わりと残らずしっかり消える。ただし、筆跡は残る。
書き味はというと、これはもう一歩。少し滑りが悪くて引っかかる感じがあるし、カスレもときどき生じる。他のボールペンとは明らかに感触が違うので、これだけを使っていれば馴染むのだろうけど、他と書き比べるとやはり違和感がある。
色も薄味傾向なので、濃くてくっきり書きたい人は不満を持つと思う。
消せるという特徴を評価すれば他は我慢するしかないのか。
ヨドバシ価格 202円~

《三菱鉛筆 ユニボール シグノ 極細シリーズ 0.5》 ゲルインク
ゲルインクのボールペンの中ではスタンダードな一本。
ボールペン探しをするずっと以前から長年使っている一本で、何も知らずに選んでいたけど、今回あらためて書きやすさを検証したらかなりいいということを再認識した。
カスレもなく、滑りもちょうどいいので書き具合が安定している。可もなく不可もなしといえばそうなのだけど、不満がないというのはいいことに違いない。
サラサ同様、見た目が事務用品なのはいただけない。
ヨドバシ価格 147円~

《ぺんてる ボールPentel B100 0.6》 水性
水性ボールペンは油性やゲルインクと比べるとちょっと特殊なボールペンだ。インクがどばっと出るので字が濃い。この濃さが好きという人もいるだろうけど、水性ゆえの弱点も併せ持つ。
やはり滲みやすいし、水気に弱い。大事な書類とかには使えない。
ただ、書き味はよく、濃くてくっきりした字が書きたいときは水性ボールペンがいい。
B100は昔からの定番商品なので、長く使っている人もいると思う。見た目は事務用品なのだけど、一周回って逆にカッコイイとも思える。
軸先が丸いため、ペンを傾けるとカスレが生じるのは残念なところだ。構造上仕方がないとはいえ、あと一歩惜しいと感じる。
0.6mmの水性ということで細かい字を書くのも苦手だ。
ヨドバシ価格 86円~

《パイロット Vコーン 0.5》 水性
これも昔から販売されている定番の水性ボールペンで、私もずいぶん長く使っている。連続して使っている筆記具としてはこれがたぶん一番長い付き合いだ。
水性ボールペンとしてはもう完成していて、書き味に関しては何の文句もない。個人的には水性ボールペンはこれ一本で事足りる。
インクはよく出るけど滲まないし、太すぎず細すぎないちょうどいい太さで、カスレも一切生じない。
デザインは無骨だけど透明プラスチックのような安っぽさはないし、飽きもこない。グリップはないけど握りやすくて滑ったりすることはない。
欠点を挙げるとすれば、水性ボールペンゆえにキャップ式でちょっと面倒なのと、渇きが遅いから書いてすぐに手で触れたりするとこすれてしまうといったあたりだろう。そういう点でいうと、左利きの人はちょっとやっかいだろうと思う。もしくは、縦書きの場合、問題が起きたりする。
それでもこれを超える水性ボールペンはなかなかないだろうと思う。
ヨドバシ価格 86円~

《ぺんてる トラディオプラマン 0.4-0.7》
これは番外編。ボールペンではなく、プラマンの名が示すのはプラスチック万年筆の略だ。
字の濃さや書き味は水性ボールペンに似ている。万年筆のような繊細さはない。
軸先が特殊で、力の入れ具合で線の太い細いを表現できるようになっている。筆圧が弱くてもカスレたりすることはなく、安定した線が書けるのも魅力だ。字だけでなく絵を描くのにもいいんじゃないかと思う。
ただ、ちょっとしたというか、状況によって大きな欠点となるのは、裏写りの問題だ。普通のノートに書くと裏面だけでなく次のページにもインクがついてしまうので、そこは注意が必要だ。なので、使えるシーンと使えないシーンがはっきりしている。
私のお気に入りの一本ということで紹介したかった。300円オーバーと少し高めではあるのだけど、一度試してみてほしい。字を書くことが楽しく思えるペンというのはそうめったにあるものではない。本来の自分の字の20パーセントアップくらい上手く見える。
自分に合うボールペン探しの旅はまだ始まったばかりだ。
上に紹介したものとは別に手元にはすでに3本増えている。第2弾もそれほど遠くなさそうだ。
あなたもボールペン探しをしてみませんか? 10本買っても1,500円くらいだし、楽しいですよ。
第二弾はこちら。
続・自分に合うボールペンを探しています。
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