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    2023/05/22

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    2022/10/18

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勝手に紹介 ~個人的昭和の名曲 女性ボーカル編

音楽(music)
空と雲

 10年ぶりの再放送となったNHK朝ドラの「あまちゃん」(NHKオンデマンド)をまた観ている。
 あれからもう10年も経ったのかという感慨を抱きつつ、10年前と変わらず楽しめている自分がいて嬉しくもある。
 やはり「あまちゃん」は希有の名作とでも呼ぶべき作品で、あれを超える朝ドラはもうなかなか出てこないだろう。
「あまちゃん」が画期的だったのは、リアルタイム視聴でネットを通じて大勢の人たちとネタや笑いを共有するという視聴スタイルを確立したことだ。
 前髪クネ男の衝撃が日本中を駆け巡ったときのことは今でもはっきり覚えている。
 ひとりで観てひとりで笑うのではなく、間接的であっても大勢と笑いを供にするというのは喜びをもたらしてくれるものだ。
 今では当たり前になったそんな視聴スタイルの走りが「あまちゃん」だったように思う。

 その「あまちゃん」を観ていてあらためて思ったのがアイドルというものの存在だ。
 近年は若い世代も昭和アイドルの曲をよく聴いているという。
 10年前と変わった点のひとつに、YouTubeやサブスクなどで古い曲を聴ける環境が整ったというのもある。
 YouTubeで何か昭和歌謡を聴けば関連動画がたくさん出てきて数珠つなぎでいろんな曲に出会うことができる。
 昭和世代にとっては懐かしい感覚でも、平成世代にとっては新鮮な驚きがあるんじゃないだろうか。

 そんなわけで、ここ数日まとめて昭和の曲を聴いてみて、せっかくならそれを紹介しようというのが今日の記事だ。
 いつもやっている「勝手に紹介シリーズ」の姉妹編で、今回は「個人的昭和の名曲 女性ボーカル編」と題してお届けします。
 一般なアンケート結果とはけっこうズレがあるけど、当時聴いていて思い入れのある曲に限定した。
 昭和っていい曲がたくさんあったなとあらためて思った。
 今はもうこんな曲は誰も作れないし誰も歌えない。たとえ作っても売れない。
 昭和には昭和の空気感のようなものがあって、それはあの時代限定のものだ。
 その時代に生まれ合わせたことをわりと幸運に思っている。




 中森明菜 『セカンド・ラブ』

 中森明菜って、こんなかわいらしい感じの歌い方だっけ? と思った。
DESIRE』あたりの歌い方のイメージが強いから、意外に感じられた。
 そして、すごくスローだ。こんなスローだったんだ。
 サビへ向かうところの伴奏に昭和感が色濃い。
 来生たかお節でもある。




 薬師丸ひろ子 『セーラー服と機関銃』

 同じく来生たかお・来生えつこのコンビ曲。
 薬師丸ひろ子は同名の映画の主演でもあり、これはその主題歌でもあった。
 今思えばむちゃくちゃな設定の作品だけど、当時はそれを疑問と思わず楽しんでいた。




 小泉今日子 『木枯しに抱かれて』

 小泉今日子の代表曲といえば『なんてったってアイドル』が挙げられるのだけど、曲としては『木枯しに抱かれて』が好きだった。
 作詞・作曲はTHE ALFEEの高見沢俊彦。
 当時は職業作家だけでなく、シンガーソングライターやアーティストたちが本気で作った曲をアイドルに提供していた。だから名曲が生まれたともいえる。
 後にそれをセルフカバーしてヒットした例も少なくない。




 原田知世 『時をかける少女』

「あまちゃん」つながりでこれ。
 イラッとさせるサムシングを持つ正宗さんのピチピチの若い姿を見ることができる。
 それにしてもMVが突っ込みどころ満載で笑えるし、どう考えてもヘンだ。
 すっかり忘れていたけど、この曲は作詞作曲が松任谷由実だった。




 斉藤由貴 『卒業』

 作詞松本隆、作曲筒美京平のゴールデンコンビが斉藤由貴のデビューシングルとして作った曲。
 それだけ斉藤由貴に対する期待度が高かったのだろうし、それに応えた斉藤由貴の実力は見事だった。
 松本隆・筒美京平コンビの最高傑作といっていいんじゃないか。




 松田聖子 『セイシェルの夕陽』

 松田聖子といえば、『赤いスイートピー』、『青い珊瑚礁』、『白いパラソル』、『夏の扉』など数多くのヒット曲があるのだけど、何故かマイナーなこの曲が記憶に残っている。
 シングル曲でもなく、アルバム『ユートピア』に収録された曲だ。
 ザ・アイドルといえば松田聖子で、松田聖子の前に松田聖子なし、松田聖子の後に松田聖子なしというのは今後も変わらないだろう。




 山口百恵 『秋桜』

 伝説のアイドルといえば山口百恵だ。
 14歳でデビューして人気絶頂の21歳のとき、三浦友和との結婚を機に芸能界を引退。以後、一度も表舞台に出てくることなく現在に至っている。
 私が初めて自分のお小遣いで買ったレコードがこの曲だった。
 作詞作曲は、さだまさし。
 発表が1977年(昭和52年)だから、18歳かそこらでこの曲を歌いこなしていた。
 見た目も歌い方も、大人びているというより貫禄ありすぎ。
 当時のアイドルというのは、一般人とは隔絶した世界の雲の上の存在で、気軽に会いに行けるような人ではなかった。




 キャンディーズ 『微笑みがえし』

 世代的にはピンクレディーの方が近いし曲もよく耳にしていたのだけど、ピンクレディーにはあまり興味がなくて、どちらかといえばそれより上の世代のキャンディーズの方が好きだった。
 ただ、キャンディーズはほどなく解散してしまったので、それほどちゃんと聴いたわけではない。
 その中ではこの曲が印象に残った。




 Sugar 『ウエディング・ベル』

 1981年(昭和56年)のSugarデビューシングル。
 昭和の曲はけっこう無茶な歌詞も多かった。今なら駄目かもしれないようなものもある。
 一発屋と呼ばれるような歌手が昭和にもいたのだけど、一発でも当てられたならたいしたもので、この曲も昭和歌謡の1ページを彩っている。




 あみんもこの一曲で終わってしまった感があるけど、片割れの岡村孝子はソロで長らく活動していた(いる)ので一発屋とはいえない。
 歌詞がちょっと怖い。




 久保田早紀 『異邦人』

 子供の頃にこの曲を聴いていい、好きだと思っていた自分の感覚にちょっと驚く。
 今になって当時の映像を見ると、こんなきれいな人だったんだと知ることがある。
 子供の頃はあまりそういう目線では見ていなかったし、今は自分が年を取って相対的に若く見えるからというのもある。
 逆に、こんなだっけ? と思うこともある。




 小林麻美 『雨音はショパンの調べ』

 小林麻美は幼心にもいい女ってこういうのをいうんだろうなと思ったのを覚えている。
 ベッドの上でタバコを吸うシーンから始まるMVというのも斬新だ。




 REBECCA 『フレンズ』

 80年代に巻き起こった空前のバンドブームの中で、女性ボーカルのバンドというのもひとつのジャンルとしてあって、その中でもREBECCAは走りと呼べるような存在だった。
 最大のヒットとなった『フレンズ』は4枚目のシングル曲で発表は1985年(昭和60年)だった。
 その前年の1984年にプリンセス プリンセス(後にPRINCESS PRINCESSに改名)がデビューしている。
 少し遅れてLINDBERGも後に続いた。




 中村あゆみ 『翼の折れたエンジェル』

 昭和60年(1985年)のヒット曲のひとつ。
 思い返せば80年代半ばというのは、アイドルがいて、バンドがいて、シンガーソングライターがいて、演歌がいてと、様々な音楽が混在した時代だった。
 聴き手の棲み分けができていたともいえるし、いろいろなジャンルのいろいろな曲を同時に聴くこともできた。
 今は画一的になってしまって、昔ほどの広がりがなくなっている感がある。




 テレサ・テン 『時の流れに身をまかせ』

 少し前にドラマか何かでちらっと流れて、あらためてちゃんと聴いたら、こんないい曲だったんだと見直すことになった。
 これは売れるわ、と思った。
 テレサ・テンの歌い方も魅力的。
 この曲が1986年発表というのはちょっと意外で、もう少し前の曲だと思っていた。




 竹内まりや 『駅』

 もともと中森明菜のアルバム曲として提供したものを、作詞作曲をした竹内まりやがセルフカバーしたのがこの曲だ。
 中森明菜版は聴いたことがなくて、今回初めて聴いてみたのだけど、やはり竹内まりや版の方が馴染みがあってよかった。
 火サスこと火曜サスペンス劇場のエンディング曲だと思っていたら違っていて、竹内まりやの曲は『シングル・アゲイン』だった。
 水谷豊が浅見光彦をやっていたときの火サスを思い出した。




 岩崎宏美 『聖母たちのララバイ』

 火サスのエンディングといえばこれでしょうという人も多いんじゃないだろうか。
 岩崎姉妹の妹の岩崎良美の代表曲なら、やはり『タッチ』だ。




 杏里 『オリビアを聴きながら』

 作詞作曲は尾崎亜美。
 発表が1978年と、意外に古かった。80年代の曲と思っていた。




 松任谷由実 『ノーサイド』

 松任谷由実をここに入れるのもどうかと思ったのだけど、昭和の歌謡界の中心に君臨したひとりには違いないので参加してもらうことにした。
 代表曲は数あれど、個人的に深く自分の中に根ざしているのはこの曲なのだ。
青春のリグレット』(曲と踊りが合ってないぞ)も好きなのだけど、今回はこちらを選んだ。
 情景描写によって心情を描写する松任谷由実の真骨頂がここに表れている。




 中島みゆき 『悪女』

 中島みゆきも代表曲は多いし好きな曲は人それぞれだろうけど、私は子供の頃によく聴いていたこの曲が一番記憶に刻まれている。
 こんな曲を好きという子供はちょっと嫌だなと自分でも思うけど。
 中島みゆきを聴いているやつは暗いやつだというのが当時の風潮で、中島みゆき好きを公言するのはなかなか勇気がいることだった。
 でも、さだまさし好きはまあまあ大丈夫だった。ぎりぎりだけど。
 それにしても、よくこんな曲がヒットしたものだと感心する。今発表したら絶対にヒットはしない。
 あいみょんあたりが歌ってもポップな感じになってしまって、この感じは出ない。




 小比類巻かほる 『I'm Here』

 作詞作曲はラッツ&スターの鈴木雅之。
 いや、昭和世代にはシャネルズといった方が通りがいいだろうか。
 車の免許を取りたての大学生のとき、車の中で同名タイトルのアルバムを繰り返し聴いていたので、この曲を聴くとあの頃の感覚がよみがえる。
 それは必ずしも楽しい記憶ではないのだけど、懐かしい思い出ではある。
 そろそろ昭和も終わろうとしていた頃だ。



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勝手に紹介 ~既出アーティストの新曲編

音楽(music)
空と雲

 勝手に紹介シリーズ。
 今回は既出アーティストの新曲編をお届けします。
 このシリーズでおなじみのアーティストも増えてきて、ちょっと怠けているとどんどん新曲が発表されて追いつけなくなりそうだ。
 それは嬉しいことではあるのだけど。




 文藝天国 『七階から目薬』 

 熱烈新曲お待ちしてますアーティストのひとり(ひと組)、文藝天国。
 再生回数を増やすには映像をつけた方が断然いいのだけど、聴けるだけで嬉しいというのはある。




 Laura day romance 『sweet vertigo』

 いつも待ってるもうひと組、Laura day romance。
 井上花月の歌声は私の脳内を幸福にする要素を多分に含んでいる。
 理由は不明。




 Laura day romance 『灯火管制の夜』

 Laura day romanceをもう一曲。




 にしな 『春一番』

 安定のにしなさん。
 何も疑うことなく作品に身を委ねるだけでいい。




 三浦透子 『点灯』

 三浦透子の声も歌も好きだ。
 女優の片手間で歌も歌っているというレベルではない。




 琴音 『君に』

 琴音は期待しているアーティストなのだけど、発表曲が多い方ではなく、しばらく沈黙していたから心配していた。
 なので、今回の新作発表は嬉しさと安堵の両方だった。
 少し前に映画『金の国 水の国』の劇中曲として「Brand New World」は発表していたものの、YouTubeでは一部のみのショートバーションになっている。




 ヨルシカ 『アルジャーノン』

 ネットを通じて作品を発表し、それを我々が受け取るというスタイルでいうと、ヨルシカは最も成功しているアーティストのひと組かもしれない。
 ここにひとつの幸福な形があるように思う。
 この曲は名作で、ヨルシカの代表作のひとつになるんじゃないだろうか。




 あたらよ 『憂い桜』

 あらたよはけっこう勢力的に新曲を発表し続けていて、それゆえここのところ作品の出来不出来が出てきているようにも感じる。
 この先であらたよの真価が問われるのかもしれない。




 TOMOO 『17』

 TOMOOはこのシリーズ初なのだけど、とりあえずここで紹介しておきたかった。
 近いうちに特集しようと思っていて、まずは挨拶代わりの一曲としてこれを。


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勝手に紹介 ~初出・既出取り混ぜておすすめアーティスト曲編

音楽(music)
空と雲と電線

 勝手にアーティスト紹介シリーズはちょっと久しぶり。
 前回の「月詠み編」が去年2022年の10月だったから、3ヶ月も経っていた。その前の既出アーティストの新曲紹介は8月だったから、実質的には5ヶ月ぶりくらいになる。もう少し短い間隔でやっていきたいと思っているのだけど。

 新年一回目というのは特に関係なく、今回は初出アーティストと既出アーティストの新曲をあわせて紹介します。
 ずっと紹介したいと思っていたアーティストが何人(何組)かいるのだけど、特集しようとすると時間がかかってしまうので、まずは1曲か2曲だけでも出しておいて、またあらためて特集することにしたい。
 お気に入りアーティストたちの新曲も続々と発表されているので、ぼんやりしているとついていけなくなってしまう。
 というわけで、前置きはこれくらいにして早速いってみよう。




 NOMELON NOLEMON  『night draw』

 YouTubeのオススメ広告で出会って一発で気に入った曲だ。
 ああ、この感じ好きだと思った。
 2021年、ボカロPとして活動していたツミキがシンガーソングライターのみきまりあをボーカルに迎えて作ったユニットで、まだ一般的な知名度はそれほど高くないものの、YouTubeのチャンネル登録者数は18万人を超えている。 
 今後必ず伸びていくはずだから、今から追っていけば古参を名乗れる。
 みきまりあは、YOASOBIの幾田りらやにしなと同じ”ぷらそにか”(web)出身の21歳だ。
 NOMELON NOLEMONでの活躍を経て個人としても今後出てくるのではないかと思う。
 とてもセンスのある言葉で綴られた歌詞と魅力的な歌声で、特徴的なのだけど飽きが来ない。繰り返し聴いていたいと思わせる。




 NOMELON NOLEMON 『線香金魚』

 NOMELON NOLEMONからもう一曲。




 坂口有望 『サイレント』

 もうひとりぜひ紹介したいと思っていたのが、この坂口有望(さかぐちあみ)だ。
 ドラマ『科捜研の女 2022』(web)を観た人なら、あ、この曲、と気づくかもしれない。主題歌としてたまにドラマの中で一部がかかっていた。
 個人的には下で紹介する『2020』で知っていて、ちょっと変わった曲を歌うアーティストという印象だったので、こういうオーソドックスなバラード系の曲を歌うのが逆に意外だった。
 大阪出身の21歳と若いながら活動期間は5年を超える実力派シンガーソングライターだ。
 好きな小説がスコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』というのは渋い。
 今後の活躍を大いに期待したい。




 坂口有望  『2020』

 売れてもこういった個性的な曲を今後も作っていってほしい。




 RADWIMPS 『すずめ feat.十明』

 映画『すずめの戸締まり』(web)の主題歌で、公開前に一部がYouTubeにアップされて、主役のすずめ役の声優を演じた原菜乃華が歌っているのではないかという噂が流れて、私もそう思っていたのだけど、実際は十明(とあか)という無名のアーティストが抜擢されたのだった。
 とても魅力的な歌声だ。
 ただ、先行発表されたときの予告動画のときの息づかいが弱まってしまったのはちょっと残念だった。ああいうブレスもまた曲の一部であり、表現だと思うから。
 アイナ・ジ・エンドなどはそのあたりを効果的に使って表現している。




 にしな 『ホットミルク』

 安定のにしなさんの才能だ。

 寒くなり始めた夜に
 窓ガラス開け放って
 毛布の中くるくるくるまる夜
 つま先から凍えてゆく温度
 重ねて温め合う
 なぞる2つの記憶

 ねぇいつかは終わる恋をしていたのね、私達も
 かき混ぜれば解けてゆく悲しみさえ切ない

 上手に眠れない夜の隅
 飲み干すホットミルク
 かき混ぜたスプーンに残る熱が
 ゆっくり溶けてく
 もう1人でも平気よ

 何気ない歌詞のように思えて実はけっこう高度なことをしている。
 重ねて温め合ってなぞっているのは二つの記憶と二人の体で、混ぜ合わせて溶かしているのはホットミルクと二人の悲しみ、冷めていくのは二人の恋とホットミルクで、それぞれに掛かっている。
 もちろん無意識にではなく意識的にやっている。こんな古典的な和歌のような手法を使ってJ-POPの歌詞を書いているアーティストはほとんどいない。にしなくらいだ。




 あたらよ 『また夏を追う』

 あらたよは一曲、いっきょく、身を削って書いているような感じがする。実際はそんなことはなくて余裕を持って作っているのかもしれないけど、聴き手の勝手な印象としてそんなふうに思う。
 天才タイプのにしなと、凡人タイプのあらたよというと、あらたよに失礼だけど、結果としてあらたよはいい曲を出してくる。
 一曲を一気に書き上げたモーツァルトと何度も何度も書き直して苦労して書いていたベートーベンのように違うタイプの天才といった方がいいのかもしれない。
 昔、尾崎豊がインタビューの中で、80点の曲ならいくらでも書けるんだけど、と言ってその後の言葉を飲み込んだのを思い出す。




 上野優華 『ジコアイキセイ』

 上野優華は『あなたの彼女じゃないんだね』のようなラブソング系が似合うアーティストだと思っていたけど、こういったおしゃれ系(?)の曲もしっかり歌いこなせるのか。
 作詞作曲は秋元リョーヘイ。
 上野優華は歌唱力というより表現力に優れた歌手で、カラオケが上手いだけでは歌手になれないということは、彼女の歌を聴けば分かる。
 歌唱力プラス・アルファのアルファとは何かというのは難しいところなのだけど、人の心に訴える力で、それはもう天性のものとしかいいようがないのだと思う。練習で身につくようなものではない。


 今回はちょっと曲数少なめで、特にいい曲、好きな曲を紹介しました。
 今回紹介しきれなかった分の新曲は、近いうちにまたやりたいと思ってます。

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勝手に紹介 ~【月詠み】

音楽(music)
2022-10-18.jpg

 勝手に紹介シリーズ、今回は【月詠み(つくよみ)】です。
 前回の勝手にシリーズは8月3日の既出アーティストの新曲紹介だったのだけど、本編としてはその前7月6日の【あらたよ】だから、実質3ヶ月以上空いてしまっていた。
 この間、あまり音楽を聴いていなかったというのもあって、なかなかその気になれなかった。
 ただ、月詠みについてはそれ以前から知っていて、早く紹介したい気持ちがあった。

 コンポーザー兼プロデューサーのユリイ・カノンは2015年からボカロPとして活動していて、ある程度名前は通っていたので知っている人は少なくなかっただろう。代表曲としては『スーサイドパレヱド』、『おどりゃんせ』、『だれかの心臓になれたなら』などがある。
 これを聴くと分かるように、ボカロP時代はアップテンポでハイキーの曲が多かった。
 そのユリイ・カノンを中心とした音楽プロジェクト名が月詠みで、活動開始は2020年10月のことだ。
 一作目の『こんな命がなければ』 をYouTubeに投稿したのが10月10日だから、ちょうど2年ということになる。
 少しずつライブ活動もしているようだけど、まだまだネットの中だけの存在なので、一般的な知名度は低そうだ。
 とはいえ、チャンネル登録者数は43万人だから、決してマイナーな存在ではない。
 ここ最近はタイアップ作品が増えてきているので、広く一般に知られるのも時間の問題かもしれない。
 本人たちが表に出てくる気があるのかどうかは分からないのだけど。

 ネット検索をすると、それなりの件数が引っかかるものの、情報量としては少ない。
 そんな中、Real Sound(web)は早くから月詠みに注目して追いかけていたようで、何本かの記事が月詠みについて知る手がかりを与えてくれる。

 ⽉詠みはなぜ考察意欲をかき立てるのか ユリイ・カノンに問う、ストーリーを通した音楽表現の面白さ

 月詠み ユリイ・カノン、1st Story完結に向けて クライマックス飾る「月が満ちる」から始まったストーリー

 月詠み、ユリイ・カノンが綴る葛藤の先にある願い 新ボーカル迎えた第2章で明かされ始める物語のベール

 ボカロ曲から人間が歌うJ-POPへの移行はわりとスムーズだったようで、むしろ月詠みとして発表する楽曲の方がユリイ・カノンの世界観や思想をよく表しているように思う。
 人工的なのだけど人間的で、絶望しながら希望を捨てきれないでいる世界観はある種の人間の共感を呼ぶ。
 あまりあれこれ解説めいたことを書くよりも月詠みの曲を聴いてもらった方が早い。好きな人は好きだと思うし、駄目な人は駄目だろう。好みが分かれるアーティストだと思う。

 まだ曲数が少ないので、古い順に全曲を紹介します。




 月詠み 『こんな命がなければ』 2020年10月10日

 月詠みとしてのデビュー曲で、まだボカロ曲の名残が色濃い。
 当初、ボーカルはmikotoだった。この後、第2章と銘打ってプロジェクトは大がかりとなり、ボーカルもYueに交代することになる。




 月詠み 『ネクロポリス』 2021年1月16日

 2曲目にして早くもTBS系「CDTVサタデー」2月度エンディングテーマに採用された。
 走るピアノがユリイ・カノンの特徴で、それは1曲目からなのだけど、この曲は間奏のベースが印象的だ。
 ソフトでどんな音も作れるといっても、その楽器の本質的な良さを理解してないといい曲は作れないわけで、1つの楽器を極めるのも才能だけど、ソフト的に多くの楽器の音色を操れるというのも間違いなく才能だ。




 月詠み 『新世界から』 2021年3月29日

 ガンプラ40周年記念映像「ガンダムビルドリアル」主題歌として制作された曲。
 MVは初の実写となった。
 より広く一般向けを意識した楽曲となっており、メジャーとしての意識がこの頃から明確になったのではないかと推測する。




 月詠み 『真昼の月明かり』 2021年7月15日





 月詠み 『絶対零度』 2021年8月26日

 この5曲目の後、2021年9月8日に1stミニアルバム『欠けた心象、世のよすが』を発表し、その後しばらくシングルの発表がされなかった。
 何らかの話し合いというか相談があったのだろう。ボーカルのmikotoはここまでとなり、次の6曲目が発表されたのは5ヶ月後の2022年1月26日の『生きるよすが』だった。




 月詠み 『生きるよすが』 2022年1月26日

 この曲をもって月詠みの第2章が始まった。
 ボーカルもYueとなった。
 mikotoのボーカルが好きで交代は残念に思った人も多かっただろうけど、Yueになって月詠みは明らかにスケールアップしたように思う。参加メンバーも増えて、もはやユリイ・カノンの個人的なプロジェクトではなくなった感もある。
 ただ、初期の月詠みを支えたのは間違いなくmikotoの歌声で、楽曲はそう簡単に色あせない。




 月詠み 『メデ』 2022年2月24日

 J-POPに寄り過ぎたと感じたのか、少しボカロ曲寄りに戻したのがこの『メデ』だ。
 ハイレベルのボーカルYueを得て、ユリイ・カノンがYueなら歌いこなせると読んで作ったのかもしれない。
 早い曲調でピアノが疾走するというのが月詠み/ユリイ・カノンの最も特徴的な点だ。




 月詠み 『ヨダカ』 2022年4月13日

 TVアニメ『BIRDIE WING -Golf Girl's Story-』エンディング主題歌。
 実写とアニメを組み合わせたMVが制作された。
 私が初めて月詠みを知ったのはこの曲で、全部の曲を聴いた後にもう一度聴いたら、この曲によって月詠みの真骨頂は初めて姿を表したのだと思えた。
 この後月詠みがどれくらい活動を続けるか分からないけど、月詠みの最良の曲のうちの一曲はこの『ヨダカ』だと言い切ってしまう。




 月詠み 『イフ』 2022年5月8日

 プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク『MORE MORE JUMP!』のために書き下ろされた楽曲の月詠み版。
 初音ミク版はこちら




 月詠み 『アメイセンソウ』 2022年6月29日

 この頃には月詠みとしてすっかり安定感が生まれている。




 月詠み『花に雨を、君に歌を』 2022年7月15日

 10曲目の『アメイセンソウ』と11曲目の『白夜』の間に発表された曲で、どういう扱いなのかよく分からなかったのだけど、どうやらユリイ・カノンがTHE BINARY(web)に提供した曲のようで、こちらがオリジナル版だ(2020年5月9日発表)。
 その曲を月詠みとして、YueとSERAがツインボーカルで歌ったのがこの曲ということらしい。なので、月詠みのシングル曲という扱いにはなっていない。




 月詠み 『白夜』 2022年7月20日

 これまでの月詠みの曲でこれが一番好きだ。
 ハイテンポが月詠みの特徴ではあるのだけど、こういうスローテンポの曲もよくて、個人的にはこういう曲調を好んで聴いている。
 毎回こうじゃくていいから、何曲かに1曲はこういう曲も作っていってほしい。




 月詠み 『月が満ちる』 2022年8月17日

 これまでの最新曲。
 第2章以降の月詠みはコンスタントに月に1曲くらいのペースで発表してきたのだけど、9月、10月は新曲発表がない。
 8月にAudio Novelと題して『「だれかの心臓の心臓になれたなら」追懐録』を発表しているから、今後は更に活動の幅を広げることを計画しているのかもしれない。
 月詠みプロジェクトはそう長くはないような気もするけど、まだまだいい曲を作っていってほしい。


 月詠み 公式サイト


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