東京カテドラルは観光気分で行っても全然大丈夫なオープンマインド教会 - 現身日和 【うつせみびより】

東京カテドラルは観光気分で行っても全然大丈夫なオープンマインド教会

東京カテドラル

 JR山手線の目白駅(地図)を出て、学習院大学のある東へ向かって目白通りを進む。日本女子大を左手に見つつ2キロほど行ったところで、左手にちょっと異様な姿をした銀色の建物が突然姿を現す。巨大建造物といっていいほどの大きさにもかかわらず、少し奥に引っ込んでいるから意外と目立たない。直前まで行ってなんだこれはと驚くことになる。
 正式名称を東京カテドラル聖マリア大聖堂(地図)という。またの名はカトリック関口教会。
 その存在自体はだいぶ前に地図で見つけて知っていて、ネットで写真を見てずっと気になっていた。
 そして今回ようやく訪問の機会がやって来たのだった。

 いざ目の前まで来て、少しひるむ。巨大な建物が人を寄せ付けない雰囲気を放っている。一般人が入っていっていいものかどうか確信が持てない。
 ここ2年くらいでいくつかの教会を巡って、普通の人よりは教会に対して免疫ができていたつもりの私でも、ここはちょっと戸惑った。ひとりだったら引き返していただろう。
 でも大丈夫、入ってしまえばこっちのものだ。入ってはいけないのならこんなに大きく門は開いていないはず。それに教会というところは、非信者が思っているよりもずっとオープンマインドなところだ。日本の神社仏閣と一緒と思えば何も恐れることはない。仏教徒じゃなくてもお寺は訪問者を拒んだりしないし、信心がないからといって初詣に行ってはいけないというわけでもない。
 門をくぐったとたんに自転車に乗った二人組の外国人にアナタハカミヲシンジマスカ? などと訊ねられるなんてこともない(それは宗教が違う)。
 教会を見たら恐れず堂々と入って行くべし。おどおどしたら負けだ。



教会全体

 大聖堂の前に正装した男女が集まっていた。結婚式の招待客のようだった。その集団の間を颯爽と自転車で駆け抜ける我々。ちょっと恥ずかしいけど照れてはいけない。もしかしたら彼らは私たちをここの関係者と思ったかもしれない。観光のくせにレンタル自転車で教会に乗り付けるなんて人はあまりいないだろう。その自転車は写真の左下にしっかり写っている。
 ここは広い無料駐車場も完備しているから、車で行くにもいいところだ。信者さんや結婚式に参列する人たちのためだろう。
 ここまで敷地内に入ったからには当然聖堂の中も見てみたい。けど、結婚式だ。これはさすがに入れないと判断した。参列者に紛れ込むにはあまりにも普段着すぎた。Tシャツにマジックでネクタイを描いたくらいでは誤魔化せない。仕方がない、時間を置いて出直すことにする。その前に少しあたりを見学してみることにした。



ルルドの洞窟

 駐車場の反対側には聖母マリア像がある。フランスの巡礼地として有名なルルドの洞窟を模して作られたものだ。
 1858年、フランスのルルドという田舎町に住むベルナデットという少女の前に聖母マリアが現れた。彼女の証言を巡って町中が騒ぎになり、やがては教会を巻き込んでの大騒動に発展する。
 マリア様を見たというのは嘘なのか本当なのか。しかし、少女がマリアから掘るようにと言われた場所を掘ってみると、そこからは泉がわき出した。そしてそれを飲んだ病人が次々に治るという奇跡が起きる。
 その噂を聞きつけた人々がフランス中から訪れることとなり、教会もついにその事実を認めるようになった。
 少女ベルナデットはその後シスターとなるも病気のため35歳で死んでしまう。それから30年後、遺体を掘り返してみると埋葬時のままの姿を保っていたことからベルナデットは聖女として認められたのだった。
 現在ではルルドを目指して世界中から年間500万人もの人々が巡礼に訪れるようになった。
 東京カテドラルのルルドの洞窟には泉の仕掛けはなかった。水道水の蛇口のようなものがあったけど出てなかったから、あれは信者さんの儀式用か何かなのかもしれない。日本らしくここから温泉でもわき出たらよかったんだけど。



司教館

 司祭の家や司教館などはさすがに関係者以外立ち入り禁止となっていた。ただ、柵や門があるわけではないので、近づこうと思えば誰でも近づけてしまう。東京の街中とは思えない無防備さというか大らかさだ。



大司教聖堂

 1887年(明治20年)、この地に聖母仏語学校が開かれたのが始まりだった。その後名称がまいかい塾、関口教会と変わり、1899年に最初の大聖堂が建設された。1920年には大司教聖堂(カテドラル)となる。
 カトリック教会には地域の区分があって、日本は16の教区に分かれている。それぞれに司教がいて、司教が儀式をするときに座る椅子のことをギリシャ語でカテドラといい、そのカテドラのある教会をカテドラルと呼んでいる。要するに地区の元締めみたいなものだ。名古屋でいえば千種の布池教会がそのカテドラルに当たる(名古屋カテドラル聖ペトロ・聖パウロ司教座聖堂)。
 最初の大聖堂は第二次大戦の空襲で焼けてしまい、現在のものは1964年に西ドイツケルン市の信者たちの寄進などで再建されたものだ。
 設計はフジテレビや東京都庁の設計でも知られる丹下健三。同時期に担当した代々木体育館との類似も指摘される斬新なデザインだ。これを40年以上前にデザインしていた丹下健三はやはりただ者ではない。
 しかしその丹下デザインには大きな欠点がある。斬新すぎるデザインと素材使いから雨漏りがひどいというのだ。雨漏り丹下とまで呼ばれている。
 東京都庁も中は相当ガタガタで、修繕するくらいなら新しいものを建て直した方が安く済むというし、代々木体育館や立教大旧図書館なども同様の症状に悩まされているという。東京カテドラルの大改修もそれが原因で、外観の全面張り替えで費用が8億円もかかってしまった。
 もう亡くなってしまった大物建築家に今更文句も言えないけど、悪く言えば欠陥住宅だ。いくらデザインがよくても、10年もしたら雨漏りしてくるような建物では困る。
 それはともかくとして、このデザインはやっぱり近くで見てもすごいと思う。近すぎると全体が見えなくてよく分からない。外壁は複雑な曲線を描いていて、上空から見ると十字の形をしている。その屋根は採光面となっていて、入り込んだ光が十字架を浮かび上がらせる仕掛けになっているそうだ。
 高さ39.4m。10階建てのビルに相当する高さだ。
 外装はステンレス・スチール張りの鉄筋コンクリート造りで、内部には柱が一本もないという特殊な構造をしている。
 内装は壁がコンクリートのうちっぱなしで、床は大理石、壁面の上部には黄色いステンドグラスが張られている。
 鐘塔は大聖堂よりも更に高い61.68メートル。写真ではゆがんでいるように見えるけど、実際に4つの面がねじれている。これまた変わったデザインだ。
 鐘は高いところに4つ並んでいて西ドイツから輸入したものだそうだ。どういう仕掛けで鳴らしているのだろうか。



教会入り口

 戻ってきてみると、結婚式も終わったようで、先ほどの人たちもいなくなっていた。それではいよいよ中にお邪魔することにしよう。
 っと、扉が開かない! 木の扉は固く閉ざされていて我々を拒む。やっぱり一般人は入れないのかとあきらめかけたとき、横の通用門らしきところから入っていく二人組がいた。私たちも便乗だということであとをついていって潜入に成功した。
 実はもともとこちら側しか開いてなくて、基本的に日中は誰でも自由に入れるようになっているらしい。儀式の途中でも入れるというのだけど、本当だろうか。もしかしたら関係のない結婚式のときでもこっそり参加してもいいのかもしれない。
 内部は残念ながら撮影禁止となっている。人がいないときにお願いすれば撮らせてくれるという話もあるのだけど、このときはけっこう人がいて、真剣にお祈りをしてたので写真を撮れるような雰囲気ではなかった。
 中は静謐という言葉ぴったり当てはまるような空気感で、コンクリート特有の冷たさが神聖さにつながっている。それも設計時の狙いだったのだろうか。木の造りの方が温もりを感じるから私は好きなのだけど、これはこれで悪くない。私が知っている布池教会や多治見修道院とはまた違った神聖さがあった。しばらく座っておとなしくしてると心が浄化されていくようだ。
 建物が大きいだけに中も広い。ここで結婚式を挙げるなら、参加者の多いカップルじゃないと寂しいくらいになりそうだ。数百人は収容できるんじゃないだろうか。
 葬儀も行われることがあって、設計の丹下健三や(2005年)や吉田茂元首相もここで執り行われた。
 見所としてはまず、パイプオルガンがある。音響効果も計算して設計されていて、初代のパイプオルガンは 松任谷由実の「翳りゆく部屋」(1976年)で使われたことでも知られている。
 二台目は2004年に完成した。教会用パイプオルガンとしては日本最大のもので、この建築に合わせてオランダで制作されたそうだ。この日は演奏者が練習をしていて、その音色を聴くことができた。かなりの大音響で、神々しくもある。
 他には、祭壇のマリア像、聖フランシスコ・ザビエルの胸像、洗礼室などがある。中でも私が一番胸を打たれたのが、ピエタ像のレプリカだった。原寸大のものをフィレンツェに制作を依頼して1973年に贈られたものだという。
 老いた天才ダ・ヴィンチと若き天才ミケランジェロは、絵画と彫刻とどちらが優れた芸術かということを巡って子供のようなケンカをしていたけど、ピエタ像を見たダ・ヴィンチが心を打たれなかったはずがないではないかと、そのときはっきり実感として分かったのだった。最初に見たときは内心恐れおののいたんじゃないだろうか。
 レプリカであの衝撃度ということは、本物を見たら私はどうなってしまうのだろう。確実に泣くからフィレンツェまで見に行くのはやめよう。



カテドラルと外国人

 外に出てきて、ふーとため息が出て、ひとつ大きく深呼吸をした。無意識のうちに、濃密な空気感に息を詰めていたらしい。通常の空気のところに出てきてホッとした。山頂から下りて登山口に戻ってきたときのような感じだ。
 表では外国人の信者さんらしき人たちが集まってきていた。
 この日は曇り空で、青空をバックにした写真を撮れなかったのが少し残念だった。教会には真っ青な青空がよく似合う。灰色の空だと銀色の建物だからモノトーンになって、少しまがまがしいような感じになった。
 夕焼けのときもいいのだろうけど、西の空は建物が太陽を隠してしまうから、夕焼けをバックに撮ることはできないかもしれない。

 教会はキリスト教信者だけのものではない。無神論者が観光気分で訪れてもいい場所だ。神社や寺へ行くように。みんな神様を信じて神社へ行ってるわけではない。教会だって同じことだ。
 東京カテドラルは、ちょっと入って行きづらいと感じるかもしれないけど、全然平気だ。ずんずん中に入っていっても大丈夫。木の扉の罠に引っかからず、横から入っていけることに気づけば勝ちだ。あの木の扉の前で引き返してしまったという人もいるんじゃないだろうか。だとしたらもったいない。
 ここは東京観光のひとつとしてオススメできる。丹下健三の建築物を堪能して、中に入って非日常的な空気に包まれてみれば、いい感じの脱力感と満足感を味わうことができるだろう。神様がいてもいなくても、そんなことはたいして重要ではない。
 教会は人の思いと時間が作り上げた素敵な空間だとあらためて思った。

 【アクセス】
 ・東京メトロ有楽町線 「江戸川橋駅」または「護国寺駅」下車 徒歩約20分(江戸川橋駅からの方が分かりやすい)
 ・JR山手線 「目白駅」から都営バス白61系統「新宿駅西口行き」に乗って約7分(210円)。「ホテル椿山荘東京前」下車。徒歩すぐ。
 ・JR山手線「新宿駅西口」より都営バス白61系統「練馬車庫前行き」に乗って約28分(210円)。「ホテル椿山荘東京前」下車。徒歩すぐ。
 ・無料駐車場あり(なるべく公共交通機関を使用してくださいとのこと)

 カトリック東京カテドラル関口教会webサイト
 

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コメント
非公開コメント

行こうと思っていたのでとても勉強になりました。
ありがとうございます。
入り口には気をつけます。

2018-05-12 09:18 | from -

東京カテドラル



 こんにちは。
 東京カテドラルに行ったのはもう10年以上前になるので、今は事情が変わってるかもしれませんが、きっと入れるはずです。
 なかなか他にはない空間なので、楽しんできてくださいね。

2018-05-12 23:37 | from オオタマサユキ

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