酒も飲めないくせに酒の文化館に迷い込んで逃げ出す二人 - 現身日和 【うつせみびより】

酒も飲めないくせに酒の文化館に迷い込んで逃げ出す二人

國盛酒の文化館

OLYMPUS E-1+SIGMA 18-50mm DC(f3.5-5.6), f5.0, 1/200s(絞り優先)



 ミツカンの「酢の里」を訪れたならば、セットで行っておきたいのが「國盛 酒の文化館」だ。別にどちらから先に行ってもいいし、片方しか行かなくてもいいのだけど、せっかく半田まで足を伸ばしたならついでに寄っていこうかとなるのが人情というものだろう。私もツレも酒を一切飲まない人間だけど少しだけ入ってきた。本来なら事前に電話予約が必要らしいけど、このときはそのことを知らずに普通に入れてもらえた。駐車場は酢の里と共通になるようで、歩いて5分もかからない。
 國盛(クニザカリ)という酒がどの程度有名なものなのか、酒に縁のない私にはさっぱり分からない。酒といえば、「信長 清洲城鬼ころし」くらいしか知らない私。ワンカップ大関は酒の種類なのか商品名なのかもあやふやなくらいだ。もしかしたら國盛というのは酒好きなら知らない人はいないってくらい有名なのかもしれない。
 酒の博物館である「酒の文化館」は、中埜酒造株式会社がやっている。中埜といえばミツカンだから中埜家の兄弟会社なのかと思いきや、少し事情が違った。

 江戸時代、半田は酒造りが盛んな土地だった。最盛期には227軒の酒蔵があって灘に次ぐ全国で2番目の大生産地だったそうだ(現在は7軒ほどしか残ってない)。温暖な気候ときれいなわき水に恵まれ、運河が発達していたことで江戸と上方の両方に酒を運ぶのに都合がいいという地の利もあった。半田の酒を上方との中間に位置しているということから「中国銘酒」と呼ばれていたという。
 江戸時代末期の1844年、小栗富治郎がこの地で酒造りを始める。酒の名前は、この国と共に盛んになるという願いを込めて「國盛」とした。江戸ではペリーが来航して大騒ぎになり、ミツカン酢によって江戸前鮨が大流行している時代だ。この時期は酒も盛んに飲まれていた。
 明治になり、二代目、三代目と移り、時代も変わっていった。昔からの伝統的な製法を残しつつ最新の技術も導入されていくことになる。
 その後明治42年に、ミツカンの中埜家に経営が移り、会社の名前も丸中酒造合資会社となった。中埜家との関わりはそういうことだったのだ。出発点が同じだったわけではない。
 第二次大戦、オイルショックという苦しい時代を乗り越え、現在はミツカングループの一角として、中埜酒造株式会社となっている(平成2年まではマルナカ株式会社だった)。
 前置きが長くなった。それでは、「酒の文化館」へと踏み込んでみよう。

酒の文化館の見学者たち

 入口の受け付けで名前とどこから来たかを告げる。見学コースを希望しますかと訊かれて、自分たちで回りますと断った。そんなに本腰を入れて見学するつもりはなかったから。酒に興味がない身で1時間近いコースはきつい。大学の講義じゃないんだから。
 二階へ上がると思った以上に狭くて逃げ場ない。ガイドのお姉さんと見学客とのやりとりが妙に盛り上がっていて熱気に圧倒される我々。完全に場違いなところに迷い込んでしまったことを悟るのに時間はかからなかった。入って2分で逃げ腰になる。
 それでも多少は興味があるフリをして写真などを撮りつつ見て回る。しかし見て回るといっても一周5分もかからない。二周してみたけどそれ以上どうすることもできず、お邪魔しましたーとこっそり入口から帰ろうとする私たちは呼び止められてしまう。ちょっとお待ちください、と。万引きが見つかった中学生のようにひるむ二人。いや、何も盗んでません! と言おうと思ったら、出口はそっちじゃありませんと注意されてしまった。どうやら見学コースを逆走していたらしい。あ、いや、すみませんと恐縮しつつ、コースに復帰する。けど、コース上には販売コーナーがあり、店員さんがニコやかな顔で待ち構えている。否が応でもそこを通らずには外へと出られない仕組みになっているのだ。思わず目が合ってしまって固まること3秒。3秒が永遠に思えた。けど、酒を飲まない我々に買いたいものなどあるはずもなく、どうもありがとうございましたー、と愛想笑いを浮かべながら逃げるように出口から飛び出したのであった。
 完全に入る場所を間違えたようだ。「酢の里」だったら酢でもおみやげに買ったかもしれないけど、酒はいらなかった。他にも食べ物とかのおみやげもあったのだろうけど、そこまでじっくり見る余裕はなかった。ここは酒を飲む人が入るところだ。もしくは、酒造りに興味津々の人か。高校生のとき、間違えてパンクの洋服店に入ってしまったときの遠い記憶がよみがえった。あのときは怖かったな、トゲつきの革ジャンとか買わされそうになって。

酒の文化館の道具たち

 マジメに酒造りのことを勉強して知りたいという人にとって、ここはとてもいいところなのだと思う。ガイドさんの説明もおざなりではなく熱心で、見学者との掛け合いも楽しげだった。試飲などが入って酒場っぽい雰囲気も漂いつつ。
 1986年に中埜酒造が新工場を完成したのをきっかけに、日本酒の知識と理解を深めてもらうと、酒の博物館としてここは作られた。かつて使われた伝統の道具が並び、パネルの説明書きやミニシアターコーナー、人形による酒造りの様子紹介などがある。
 酒好きの人にとっての楽しみはやはり試飲だろう。8種類ほどの酒を飲み比べることができるそうだ。おみやげコーナーもたぶん充実していることだろう。私は目を合わせられなかったのでよく見えなかったけど。
 電話による事前予約が必要で(飛び込みでも入れるけど試飲はできない)、入場は無料。10時から4時で、第3木曜日が定休日。

 帰ってきてから少しだけ日本酒について勉強してみた。
 原材料は米と水と麹(こうじ)。それに酵母や乳酸菌なども使われる。原材料の80パーセントが水なので、水選びによって味は大きく違ってくる。
 蒸した米に麹菌というカビの胞子をかけて育てるところから始まる。これが米のデンプンをブドウ糖に変えて酒の母(もと)となり、水などを加えてもろみとなる。こいつを圧搾機で搾ると、酒と酒粕に分けられる。この酒粕が粕酢になるというわけだ。
 搾った酒は、ろ過と加熱をして、しばらく置いておく。そんなこんなで約60日、こうして日本酒が出来上がる。本当はもっと複雑な工程を経ているけど、詳しくは知らないので省略してしまう。
 いつ頃から日本で酒造りが始まったのかはよく分かっていない。米を発酵させた酒の原形みたいなものはかなり古くからあったのだろう。米作りが始まったと同時くらいにはもうあったかもしれない。清酒となるとずっとあとの時代のことだ。
 吟醸酒や大吟醸というのも今までどういう違いがあるのか知らなかった。米は中心の部分が酒造りには向いていて、まわりを50パーセント以上削ったものを大吟醸、40パーセント以上を吟醸酒といったように区別するそうだ。本醸造酒が30パーセント以上で、一般的な普通種はそこまで精米してないものを指す。
 純米酒というのは、白米、米麹、水だけを原料として造った清酒のことをいう。
 大吟醸の方が高級にしても、それぞれ好みがあるから高価なほど美味しく感じるというわけではないのだろう。昔、うちの死んだじいさんは、特級など持っていくと喜ばずに、いつも二級の日本酒を飲んでコタツで寝ていた。ただ、この一級、二級という呼び方は1992年に廃止されたらしい。

酒の文化館の裏

 出口からの脱出に成功した私たちはほっと一息ついた。まいったというより申し訳なかった。あれじゃあ完全に冷やかしだ。けど、きっと私たちみたいな人が他にもいるだろうから、向こうも慣れたものだろう。どこの世界にも迷子というのはいるものだ。
 運河沿いの裏側も風情があっていい。ツアーだと表しか見ないだろうけど、ちょっと自由行動で裏まで回ってみると蔵の違う顔が見られる。

 酒を飲めないと言うと、損をしていてかわいそうみたいな言われ方をすることがある。人生の喜びを知らなくてもったいない、と。けど、酒の席での失敗と酒が飲めないことの損失を天秤にかけたとき、酒で得られるものよりも酒で失うことの方が多いようにも思う。少なくとも可能性の問題として、酒によって大事なものをなくしてしまうことがあり得る。
 それに損得というのは酒を飲む側から見た論理であって、飲めない方からすると特に損をしたという感じはない。大麻を吸わなくても普通に生きていけるように、酒を飲まなくても他で充分幸福感は味わえている。飲まなくちゃやってられないような強いストレスも抱えてない。体にいいといっても、他にも体にいい飲み物や食べ物があたくさんあって、酒に代わるものがないというわけではない。
 おそらくこの先も、私の場合酒を飲まない人生が続くことになると思う。それでいい、たとえ損をしていたとしても。飲むのも人生、飲まないのも人生。どちらにも幸せと不幸がある。自分の意志でどちらにするか決めればいい。
 酒が飲めない人生に乾杯。

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コメント
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フフフ・・オオタさんはお酒が飲めないんですね。
私も一緒です。完全な下戸じゃないんですけど。
いわゆる「たしなむ程度」っていうやつですか。カクテルとか甘いのしかダメです。
日本酒、焼酎、ワインは全くダメです。
昔、「三次ワイナリー」というところでオオタさんと同じ目に会いました。
私だけ飲めなかったので・・

またお神酒は口をつける程度。
日本酒は神棚や墓参りの時のみ購入し最後に口をつける程度。
ちなみに私の実家の広島市の隣の東広島市は
酒が有名で「酒まつり」というイベントがあります。
呑めないので行ったことがありません。

2007-01-19 14:04 | from ビアンキ

ちょっと意外

★ビアンキさん

 こんにちは。
 ビアンキさんも酒に弱いってのは意外でした。
 私はまったく受け付けないというほどではないんだけど、ちょっと飲むとすぐに気持ちが悪くなるんで、それなら最初から飲まない方がマシなのです。(^^;
 ただ、いったん酒の味を覚えてしまうと、凝ってしまいそうってのがあって、あえて遠ざけてるってのもあります。ワインとかに興味を持った日には、川島なお美のようになってしまうかもしれない(笑)。

「三次ワイナリー」、検索してみたらよさそうなところですね。
 いきなり、辰巳琢郎が出てきてびっくりしました。(^^;
 バレンタインデーにショウみたいなのかがあるのかな。

 酒を毎日飲むとお金がかかるし、このまま飲まなくていいや。
 タバコもやめて久しいし、今度はサプリメントを飲むのもやめたい(笑)。

2007-01-20 03:06 | from オオタ | Edit

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