キンクロハジロの多さに驚き、東京のカモの豊かさを知る 2006年12月16日(土) - 現身日和 【うつせみびより】

キンクロハジロの多さに驚き、東京のカモの豊かさを知る 2006年12月16日(土)

皇居のキンクロハジロ

PENTAX istDS+TAMRON 28-200mm XR(f3.8-5.6), f5.6, 1/125s(絞り優先)



 東京の見物の途中で少しだけ鳥の人となることがあった。上野公園の不忍池と皇居の外堀で。最初に行ったのが皇居の方で、堀を眺めていたらいきなりキンクロハジロがぐんぐんこちらに迫ってきて驚く。一羽ではなくみんな一斉に。なんだ、なんだ? キンクロハジロ自体、名古屋ではめったに見かけないのに、まさか東京にたくさんのキンクロがいて、しかも逃げずに寄ってくるなんて思いもしなかった。
 かなり人に慣れているようで、エサももらっているのか、私が何もくれない人間だと分かると、みんなそそくさと離れていった。そのへんはしっかりしている。都会暮らしで身につけた処世術というやつか。
 今回の東京行きで驚いたことのひとつが冬鳥たちの多さだった。都会の中のカモ密度ということでは名古屋よりもずっと濃い。なんでこんなに人も車も多くて空気も水もきれいとはいえない東京なんかに渡ってくるんだろうと思ったけど、名古屋城の堀が皇居の堀よりきれいかといえばそうでもないように、東京は都会だから住みづらいだろいうというのは人間の側の偏見でしかない。エサやり人の人数は圧倒的に東京の方が多いから、カモとしてはむしろ住みやすいところと言えるのだろう。カモ界では田舎は世知辛くていけないね、というのが常識なのかもしれない。
 それにしても不忍池のカモたちは異常だった。人に対するなれなれしさが尋常じゃない。たいていのカモは人が少しでも近づけば泳ぐか飛ぶかして逃げていくものだけど、東京のカモは逆に人を見ると寄ってくる。めったに水からあがらないようなキンクロハジロでさえ、陸をトコトコ歩いてるからびっくりする。オナガガモなんて触れそうなくらい近くにいるから、全盛期のマイク・タイソンなら1分で50羽くらい素手で捕まえられただろう。
 不忍池は、オナガガモ、キンクロハジロ、ホシハジロあたりでほぼ90パーセントくらいを占めていた。こういうのを優占種という。名古屋に多いコガモやマガモが少ないのも東京の特徴だ。
 皇居ではこれに加えてハシビロガモが多くなる。ヒドリガモやミコアイサ、オシドリなんかもいるというから、カモの種類は豊かだ。皇居といえば、カルガモの親子が有名だけど、冬シーズンは渡り鳥たちに圧倒されて影が薄くなっている。仲間が増えて嬉しく思ってるのか、それともこいつらシーズンだけ勝手に来てうちらの陣地を占領しやがってと苦々しく思ってるのか、どっちなんだろう。それとも、習性が違うから仲間とは思ってないのか。
 どこへ行ってもユリカモメがギャーギャー騒いでうるさかった。昔はカワウが多かったらしいのだけど、いつの間にか減って、その代わりにユリカモメが増えたそうだ。このへんも時代と共に移り変わりがある。
 その他、コブハクチョウも浮いていた。これは野生じゃないから、どこかから運んできたのだろう。上空ではオオタカやチョウゲンボウが見られることもあるというから、皇居の自然は都会の中の野鳥の楽園と呼んでもいいかもしれない。行ってみるまで知らなかった東京の自然の豊かさを垣間見た。

キンクロハジロの群れ

 10月、子育てを終えて故郷のロシアやヨーロッパ北部が冬を迎える頃、キンクロハジロたちは寒さから逃れるために集団で南へと渡っていく。長旅は大変だけどこんなに寒くちゃやりきれねえと思うのだろう。マイナス20度、30度の世界に比べたら、日本の0度やそこらは常夏の暖かさだ。日本の他、中国南部やインド、アフリカ北部などでも姿を確認することができる。
 日本ではどういうわけか東京に多く、諏訪湖、芦ノ湖、琵琶湖、浜名湖、有明湾など、広くて流れの弱いところが好きなようだ。名古屋では名古屋城の堀などに少数やって来るらしいけど、私は見たことがない。流れの早い川などにはいない気がする。
 キンクロは海ガモのグループに属していて、潜水が得意だ。潜れないマガモ、カルガモ、オナガガモなどは淡水ガモとして区別する。海ガモといっても生息地はたいてい淡水で、海にいることは少ない。
 昼間も普通に過ごしているものの、基本的には夜行性と言われている。夜、水中に潜って底の貝やエビちゃん、水草などを食べる。東京のやつらは例外で、人が投げたパンなどを拾い食いしている。栄養的に大丈夫なんだろうか。潜水時間は10秒から20秒くらいで、最大で3メートルくらい潜れるという。エサは水面に上がらず水中で飲み込む。
 キンクロハジロは漢字で書くと金黒羽白となる。これはもう読んで時の如くで、金色の目、黒い体、白い羽から来ている。
 英名はTufted Duck。Tuftedというのは「ふさ飾りがついた」という意味で、これはキンクロハジロの後頭部についているふさふさした後ろ髪(冠羽)から名前を取っている。あのカモ、寝ぐせがついてるよ! などと不用意な発言をしてしまうと、それを小耳に挟んだ鳥の人に聞かれて、あれは冠羽っていってですね、よく似たスズガモと区別するときはあそこを見るといいですよ、などと頼んでもいない説明をされてしまう恐れがあるので気をつけて欲しい。いや、逆に双眼鏡を首からぶら下げてる人や三脚にフィールドスコープを付けてる人の近くで、あえて知ったかぶりなことを聞こえるように言って解説を引き出すという作戦もある。
 体は日本で見られるカモとしては一番小さいくらいで、40センチ前後。オスの方が少し大きくて、だいたいコガモと同じくらいだ。コガモの大きさがよく分からないという人は、鳩より一回り大きいくらいと思ったらいいと思う。
 メスは茶褐色で地味な装いをしている。上の写真でいうと、一番上の一羽がそうだ。カモをメスだけで区別できるようになればカモ上級者と呼ばれるだろうけど、そこまでいっていいものかどうか、私自身はまだ迷いがある。道のりは遠い。
 冬の間を日本で過ごした彼らは、4月頃、そろそろ暖かいのを通り越して暑くなってきやがったと、また北へと帰っていく。年に2度も数千キロも旅することを彼らはどう思っているのだろう。それが生きる道だと思い定めているのか、それとも遺伝子に組み込まれた逆らえない本能なのだろうか。
 無事に北へ帰り着いたキンクロたちは、そこでペアになり、5月から7月にかけて子育てをする。キンクロの場合は、水辺の草むらにアシなどの葉と自分の羽毛で巣を作って、だいたい10個前後の卵を産むそうだ。かなり多めなのだけど、敵が多いのか。
 ふ化までに25日くらいかかり、その間はずっとメスが温めている。キンクロのオスは子育てではまったくの役立たずだ。ヒナはひと月半ほどで早くも独立して自分でエサを捕るようになる。秋になったらすぐに渡らなくてはいけないから、のんびり成長してるわけにはいかないのだ。
 今年お堀にいたやつのどれくらいが去年も来てたやつなんだろう。冬にカモを見て、おかえりなさいと思ってしまったあなたは、もう鳥の人。

 野鳥好きの人たちのことを総称して「鳥屋(とりや)」と言うそうだ。鉄道好きの人を鉄っちゃんと呼ぶのと同じようなものだろう。でも、野鳥好きの人が自分たちのことをそう呼んでいるかどうかは知らない。私は鳥の人と言っている。私自身は半鳥の人に過ぎない。
 今回の冬シーズンでカモに関しては3度目となる。一年目はまったくわけも分からず、ただカモの写真を撮っていただけだった。去年は少しずつ分かるようになって楽しかった。今年はまだここまで全然勉強が進んでない。ほとんど撮りに行ってもいないから、新顔とも出会ってない。
 今シーズンのカモ目標は、見られるはずでまだ見たことのない少数派カモを一種類でも多く写真に撮ることだ。ヒドリガモやヨシガモ、できればトモエガモも見てみたいし撮ってみたい。オシドリも撮って、オシドリ夫婦というけど、オシドリってけっこう節操がないというあたりも書いてみたい。
 でも、このまま順調にいってしまうと、いつか野鳥の会に入ってしまいそうな自分が怖い。紅白歌合戦に出られなくなってしまった今、野鳥の会に入会することは柳生博になることを意味する(そうなのか?)。入会しそうになっている私を見つけたら止めてください。全然ハンターチャンスじゃないと思うから。

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