名古屋城の鬼門、龍泉寺に浮き沈みの歴史あり - 現身日和 【うつせみびより】

名古屋城の鬼門、龍泉寺に浮き沈みの歴史あり

龍泉寺正面




 名古屋市の東北のはずれ守山区に龍泉寺という寺がある。正式名称は、松洞山(しょうとうざん)大行院龍泉寺。
 ここはいくつかの異なった年代の歴史が重なり埋もれているので、説明すると少しややこしい。
 現在は、甚目寺観音荒子観音笠寺観音とともに尾張四観音のひとつとされ、節分会の賑わいが特に有名となっている。
 尾張四観音というのは、名古屋城を築城した際、家康がそれぞれの方角を守る守護神として定めたもので、龍泉寺は東北の鬼門に当たる。
 時代を遙かにさかのぼると、守山や春日井のこのあたりは古墳がたくさん残っていることから、早くから人が住んでいた場所だと分かっている。壬申の乱のときには、この地を支配していた尾張氏も関わったとされる。
 奈良時代後期の780年頃、最澄が熱田神宮にお参りしたとき、龍神のお告げを受けて龍がすむ多々羅池のほとりでお経を唱えると、龍が天に昇り、そこに馬頭観音が現れたので、これを本尊としてこの地に祀ったのがはじまりとされている。また、弘法大師も熱田神宮を訪れたとき受け取った八剣のうちの三剣を龍泉寺に納めたという伝説もある。そのために、昔から熱田の奥の院とも呼ばれてきた。
 平安時代になると、このあたり一体は天台宗が栄えるようになり、龍泉寺は春日井の密蔵院の末寺ということになる。密蔵院全盛期はものすごい広さと信者を誇っていたそうだけど、今はすたれ、本寺はぐぐっと規模が縮小されマイナーとなり、末寺も龍泉寺と石山寺しか残っていない。
 戦国時代は織田家の領地となる。最初ここに砦が作られ、1566年、信長の弟の信行(信勝とも)によって龍泉寺城が築城された(はっきりとした場所は分かってない)。城跡に寺が作られるというのが多い中、寺のあるところに城が築かれるというのはちょっと珍しい。しかし、信行が信長との後継者争いに敗れて清洲城で暗殺されると、龍泉寺城はすぐに廃城となってしまう。
 まだまだ龍泉寺の紆余曲折は終わらない。1584年の小牧長久手の戦いのとき、岡崎城急襲作戦に失敗した豊臣秀吉軍は、犬山城からこの龍泉寺城跡へと移ってくる。2キロ先の小幡城にいる徳川家康との戦いに備えるためだ。けど家康が夜の内に小牧山城へと退いてしまったため、秀吉軍はここを引き払い楽田城に再び移動した。その際に秀吉軍の池田勝入隊によって火をつけられ消失。
 1598年に天台宗の秀純大和尚が堂塔を再興。しかし、明治39年には放火され、今度は本堂などことごとくが燃え落ち、仁王門と多宝塔、鐘楼だけがなんとか残った。
 それでもめげなかったのが偉かった。悪いことの後にはいいことがある。焼け跡からなんと小判がざっくざく、という嘘のような本当の話。慶長小判100枚が出てきて、それを元手に信者の寄付を集めて本堂などが再建され、現在に至っている。
 このように龍泉寺というのは、歴史の波にもまれて激しい浮き沈みを経験した寺だったのだ。この土地には良くも悪くも強いパワーがあるということかもしれない。

 仁王門には重要文化財の仁王像があり、入って左には朱塗りの多宝塔が建っている。仁王門は、1602年頃に再建されたものとされている。多宝塔にかつてあった大日如来像は小牧長久手の合戦のときに燃えてしまったので、現在は釈迦如来像が置かれている。普段は非公開で、ときどき一般公開もある。
 その他、地蔵菩薩立像や円空一刀彫などを所蔵しているそうだ。
 右奥には、模擬天守と展望台、日本庭園などがある。天守は昭和39年(1964年)に建てられたもので、今は宝物館となっている。入場料は100円と安いのだけど、日曜祝日しか開いていないという狭き門。時間も9時から3時半までと、ピンポイントで狙っていかないと入れない。小学生以下からも30円を取る。普段めったに人が訪れないから、人件費を考えると開けてられないというのは分かるけど、もう少しなんとかならないだろうか。おかげで私はまだ一度も入ったことがない。
 入口の手書き板にはこう書かれている。
「百万ドルの絶景」
 お寺と百万ドルっていう取り合わせに心惹かれる。しかし、午後3時半ではどう考えても夜景にはならず、昼間の風景で百万ドルに値する絶景が世界でどれくらいあるだろうかと思うと、夢は夢のままそっとしておいた方がいいのかもしれない。



龍泉寺本堂

 本堂はなかなかいい感じだ。
 龍泉寺は寺なのに、説明書きには柏手を打ってくださいとある。理由はよく分からない。



龍泉寺裏からの夜景

 展望台からの百万ドルの絶景が見られなかったので、仁王門から左に行った墓地から夜景を眺めることにした。坂道を降りていく途中にこの光景が広がっている。
 すぐ手前はたくさんの墓石なので、のんきにデートしたり夜景写真を撮ったりするにはあまり向かないけど、少し眺めるくらいならいい場所だ。遠くに名古屋駅のタワー群を中心とした街灯りを見ることができる。
 竜泉寺街道を少し北へ行ったところにスーパー銭湯「竜泉寺の湯」がある。ここの露天風呂からきれいな夜景が見られるそうだから、それもコースに組み込むといいかもしれない。

 神社仏閣に歴史あり。自分が住む街の神社やお寺も、調べてみると様々な歴史を経て現在に続いていることを知る。お願い事をする場所としてだけでなく、縁を結ぶという意味で日常的にふらっと訪れてみると何かいいことがあるかもしれない。

【アクセス】
 ・ゆとりーとライン「小幡緑地」から徒歩約7分。
 ・無料駐車場 あり
 ・拝観時間 終日

 龍泉寺webサイト
 

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コメント
非公開コメント

竜泉寺は熱田神宮の奥の院で熱田神宮の宝剣が収められている為、神社と同じ柏手を打ちます。

2018-05-05 19:24 | from 無題 | Edit

書き忘れです。
先程の理由もあり、神仏混合と言うことで柏手を打ちます。月参りする人は必ず聞く内容なので、知っています。

2018-05-05 19:29 | from 無題 | Edit

熱田神宮と龍泉寺



 こんにちは。
 コメントいただきありがとうございます。

 龍泉寺は空海が熱田社の神剣を納めたという話がありますね。実際に剣を所蔵して今でも祀っているのでしょうか。
 柏手を打つというのはそういう理由だったのですね。
 あのあたりは空襲で焼けなかったでしょうか。

 確かに龍泉寺は中世に熱田社と関係が深かった時期があるので、神剣どうこうを抜きにしても熱田の奥の院というのは納得できるものがあります。
 そのあたりの歴史は熱田社側からはあまり語られることがないような気もしますが。

2018-05-06 20:49 | from オオタマサユキ

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