熱田さんにお参りして1,900年の歴史に思いを馳せる55円 2006年9月8日(金) - 現身日和 【うつせみびより】

熱田さんにお参りして1,900年の歴史に思いを馳せる55円 2006年9月8日(金)

おととし以来の熱田さん

Canon EOS 10D+PORST Weitwinkel 35mm(f2.8), f5.0, 1/30s(絞り優先)



 名古屋の中心街から車で15分ほど南に走ったところに、ここらの人間が熱田さんと呼ぶ熱田神宮がある。名古屋で知らない人はほとんどいないと思うけど、実は行ったことがないですよという人が意外と多いのかもしれない。私のように名古屋の北に住んでいると、あちらまでわざわざ出向いていく機会がない。初めて訪れたのは、おととしの11月だった。だから今回の訪問が二度目ということになる。なんとなくふいに行きたくなった。
 これは個人的な感覚なのだけど、熱田神宮はナチュラルというか無味無臭な感じがする。すごく神々しいとか、息苦しいくらい神聖だとか、そういう過剰なものがなくて、少し物足りないような気がしつつ、とても自然な感覚でいられる。良くも悪くもアクがない。日本においては伊勢神宮に次いで二番目に格式が高いとされる神社でありながら、大上段に構えたところがないというか、威圧感のようなものがない。マイナスの気があまりにも希薄なために味のしない蒸留水を飲むのに似ていると言えるだろうか。
 大鳥居をくぐり、玉砂利を踏みながら歩いていくと、巨木や古木に空を覆われ、ひんやりした空気が閉じこめられている。まだセミも少し鳴いていた。夏でもここは涼しいに違いない。年間900万人が参拝にやって来るとはいえ、平日の5時では人もまばらだ。
 約20万平米の境内にはいくつもの寺社が集まっていて、歴史的建造物や重要文化財も多い。前回一通り回ったので、今回は本殿へ一直線に向かった。それでもけっこう距離はある。
 写真は拝殿で、奥に見えているのが本殿だ。残念ながらあちらまでは近づけない。拝殿前では女の人がずいぶん長い時間拝んでいた。私も賽銭を入れようと財布を見ると、100円玉がない。仕方がないので55円投げておいた。特にお願い事もないので、とりあえず元気ですよという報告と、そちらも元気でやってくださいという励ましで短く切り上げた。ついでに良いご縁もありますようにと(その5円か)。

 熱田神宮がどうして日本で第二位の格式を持つかといえば、それはもう一も二もなくここに三種の神器のひとつである草薙剣(くさなぎのつるぎ)があるからに他ならない。祭神となっている熱田大神(アツタノオオカミ)は草薙神剣のことだ。ただし、当然のことながら一般公開はされていない。有料の宝物館(300円)があるから、もしかしてそこで見られるのか!? と期待したけど、やっぱり無理だった。そりゃそうだ。伝家の宝刀でもそうめったに抜いてはいけないのに、神の剣を一般に晒している場合じゃない。
 ただ、宝物館には、天皇家、将軍家、一般から集めた貴重なお宝がたくさん展示されているので、見る価値はある。
 三種の神器のうちあとのふたつは、八咫鏡(やまたのかがみ)が伊勢神宮に、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)は御所の中にある。
 創建は景行天皇の時代で113年頃ではないかと言われている。長らく尾張造というこの地方特有の建築様式で建てられてものを1893年(明治26年)に伊勢神宮と同じ神明造に建て直した。しかし、昭和20年にアメリカ軍の空襲で大部分の建物が壊れてしまって、現在のものは多くが昭和30年に再建されたものだ。東京も空襲で焼け野原にされたけど、名古屋も相当たられている。当時は国宝だった名古屋城まで燃やされた。
 熱田神宮といえば、宇崎竜童が歌うCMソング、♪やさしい~ 森には~ 神話が~ 生きてる~♪でお馴染みの熱田神宮会館を思い浮かべる人も多いかもしれない。名古屋でもっとも格式が高いといわれる結婚式場で、新郎新婦の衣装といい化粧といい、古式ゆかしい伝統にのっとった神前結婚式を挙げることができる。そして、もちろん観光客の格好の被写体となってしまう。照れ屋さんにはちょっとおすすめできない。
 その他有名なものとしては、信長塀がある。桶狭間の合戦に行く前、信長がここ熱田さんに寄って戦勝祈願をして、もし勝ったら塀を奉納すると約束した。そして今川義元を破り、約束通り作ったのが信長塀と呼ばれるものだ(日本三大塀のひとつとなっている)。
 桶狭間へと向かう若き信長に、熱田の豪商、加藤順盛が差し入れの菓子を持って駆けつけた。そのとき信長は高らかにこう叫んだという。
「今日のいくさは加藤(勝とう)!」
 ……。
 ダジャレかよ!
 いい感じに脱力感に誘われて戦前の緊張から解き放たれて織田軍は勝てたのかもしれない。でもホントに信長、そんなこと言ったのかなぁ。

御神木の大楠

 熱田神宮の御神木となっている大楠は樹齢1,200年。空海が植えたという伝説の木だ。高さ20メートル、幹周り7メートル50、かつてはこの木に守り神の白蛇がすんでいたといわれる。ただし、これは大きさでは三番目で、一番大きいものは神宮会館の裏にあるという。
 その他には、名古屋最古の石橋といわれる二十五丁橋や、「宮きしめん」の元祖となった店、実のならない「ならずの梅」などが見どころとしてある。
 行事としては、初詣の他に6月5日の「熱田まつり」が大いに盛り上がるそうだ。本宮では神聖な儀式が執り行われ、境内では祭り屋台が並び、花火が上がる。
 その他、 「オホホ祭」と呼ばれる変わった祭りもあるらしい。みんなでオホホ、オホホと終始笑ってるんだとか。なんだか分からないけど、あまり参加したくない気がする。

 熱田神宮といえば、やはり日本武尊(ヤマトタケルノミコト)のことを書いておかないといけないだろう。ただ、どこまでが伝説でどこからが史実なのか分からないし、全部説明すると長くなるしややこしいので、簡単にまとめるだけにしたい。
 まずはスサノオのことから。イザナギとイザナミの末っ子として生まれたスサノオ(上はアマテラスとツクヨミ)は手に負えない暴れん坊だった。一時は悪さをして追放されたりしたのだけど、悪名高いヤマタノオロチ(八岐大蛇)を退治したことでヒーローとなった。そのときオロチのしっぽから取り出したとされるのが、後の草薙の剣となる天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)だった。これは伊勢神宮に納められることになる。
 時は流れて景行天皇(けいこうてんのう)の時代。次男坊だったヤマトタケル(日本武尊)は、親である景行天皇の言うことをちっとも聞かないアニキのオオウスノ皇子を八つ裂きにして殺してしまう。それを見て恐れをなした景行天皇は、ヤマトタケルに地方豪族の討伐を命じて遠ざけることにした。あわよくばやられてくれないかなという思いもあっただろうか。
 生まれつき姿も美しく力持ちで、暴れん坊体質だったヤマトタケルは、獅子奮迅の活躍を見せ、期待以上に討伐しまくり、日本を西から東へと縦横無尽に駆け抜け、やっつけにやっつけた。そのとき手にしていたのが、叔母であるヤマトヒメのツテで借りた天叢雲剣だった。それがどうして草薙の剣と名前を変えたかというと、窮地に追い込まれて火攻めをされたときに、その剣で草をなぎ払って死地を脱したということがあったからだった。
 危険な東国の征伐に成功したヤマトタケルは、結婚の約束を交わしていた尾張の豪族の娘ミヤズヒメ(宮簀媛または美夜受比売)の元に戻り結婚する。しかし、平和もつかの間、次は伊吹山の討伐命令が下る。このとき、魔が差したというのか、あろうことか、ヤマトタケルは大事な草薙の剣をミヤズヒメが寝てる枕元にうっかり置き忘れてしまった。いくらヤマトタケルが強いからといって、手ぶらじゃ勝てない。伊吹山の怪物にやられて、逃げ帰る途中の三重県山中の能褒野(のぼの)でついに力尽きてしまったのだった。30歳くらいだったという。
 それを嘆いた奥さんのミヤズヒメが、熱田の地に草薙神剣を納めて祀ったのが熱田神宮の始まりとされている。
 全部伝説といえば伝説だし、ある程度の史実を反映した話だといえばそうなのだろう。

 こんな伝説やエピソードを知ってから熱田神宮に行ってみると、また違った思いを抱くかもしれない。信長塀を見て信長の一発ギャグを思い出し、大楠を見上げて空海を思い、本殿に向かって頭を下げながら草薙の剣の伝説を想像してみる。2,000年の間にはいろんなことがあったもんだなと思う。
 それにしても、いくら三種の神器とはいえ、元々はヤマタノオロチという恐ろしい怪物のしっぽから出てきた剣を神様として祀って、その剣に向かっていい縁がありますようにとお願いして聞き入れてもらえるのかな、という素朴な疑問がわき上がる。お願いする向きを間違えたか? 私の投げた55円は何かいいことに役立ててください。私は私で頑張りますから。

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コメント
非公開コメント

オオタさん、ご無沙汰しております。

熱田神宮、何度か行ったことありますよ。
蒸留水のような、というくだりに、思わず納得。(笑)

ご神木に住んでいる蛇を見たり、宮きしめんを食べたこともあります。
でも、きしめんは栄にある「まるみ亭」の方が好きだなぁ…。

敷地内の池には、たくさんの亀が泳いでいて、微笑ましいですよね~。

2006-09-09 03:10 | from K-Hyodo | Edit

神様くさくない感じ

★K-Hyodoさん

 こんにちは。
 こちらこそご無沙汰でしたー。
 元気でしたか?
 ランキング1位になってすごいーとか思って遠くから見てました(笑)。

 K-Hyodoさんも熱田神宮行ってたんですね。
 で、同じような感覚を持っていたというんで安心しました。(^^)
 やっぱりあそこって、良くも悪くも神様くさくないんですよね。すごく神妙な気持ちになるというわけでもなく、歴史の深さに圧倒されるという感じでもなく、妙にすっと馴染む感じ。

 宮きしめんも食べたことあるんですか。いいなぁ。
 私はきしめん自体、「サガミ」くらいでしか食べたことがないんですよ(笑)。
 ここ数年、まったく食べてないし。また久しぶりに食べたくなってきました。特に冷たい「ざるきし」が好き。
 きしめんを手打ちするって手もありますね。
 ういろう作りはすっかり遠ざかってます。(^^;

2006-09-10 04:01 | from オオタ | Edit

清め餅

オオタさん

熱田さんといえば蓬莱のひつまぶし。友人を観光案内するコースの一つですが
参道から移動してからというもの、今は観光バスで訪れるようなサービスエリア化
して在り難さが半減したような気がします。
まあ、味噌煮込みうどんのように、うどんで2000円近く払うことを考えればお得感も
ありますけどね。私は味噌煮込みより伊勢うどんの方が好きですが。

五色園はオカルト噂で聞いたことがあるだけでしたが、凄いですね。
タイガーバームガーデンでも見本にしたんでしょうか、自称桃太郎伝説発祥の地
桃太郎神社、伊勢の国際秘宝館と並ぶ香ばしさです。
一応テーマはあるけど、伝える気とやる気が全く感じられないのが売りなのでしょう。

熱田神社に深夜に行かれた事ありますか?
もちろん大晦日ではなく普通の日ですが、深夜といっても人はいて、真剣に願掛け
してはる(なぜか京都弁)人が結構いるらしいです。
神社仏閣には夜参拝してはいけない、地獄の釜の蓋があくから。
とも言われますが、熱田さんはそれさえも含めて清浄する力があるのでしょう。

さて、今夜のご飯は何でしょう?

2006-09-11 00:28 | from magnolia | Edit

深夜の神社は未体験ゾーン

★magnoliaさん

 こんにちは。
 清め餅って、そういえばこういう字を書くんですね。意識してなかった。
 最近、餅まきに参加してません。あれはけっこう熱くなりますね。別にそんなに欲しくないのについつい取ってしまう。

 蓬莱のひつまぶしは、やっぱり熱田さんで食べないといけないんでしょうね。私は、松坂屋の支店で一回だけ食べたことがあるんだけど、そのときはやっぱり地方から遊びに来た人の案内でした。あんなもの、自分のためだけには食べる気にはなれない(笑)。
 さすがに美味しかったです。熱田本店は、昼どき、とっても混んでるそうですね。

 熱田神宮は、観光バス来てました。
 団体さんはハングル語をしゃべってた。(^^;
 あれだけの神社になると、どうしても観光地になってしまうけど、やっぱり静かな雰囲気も欲しいところですよね。
 あと、宝物館がある関係で、制服の警備員がウロウロしてるってのも、神さんの場所としてはちょっと似つかわしくないなぁと思う。
 深夜の熱田さん、決して近づかないようにします。(^^;
 昼間はぶらり観光気分で訪ねてもまったく違和感はないけど、深夜に訪れる人たちは切実な何かを抱えてるだろうから、うかつに入っていけませんね。(>_<)

 五色園は、桜の季節だけ、わずかに人がいて大丈夫なんだけど、それ以外の季節は、笑えません。洒落にならん。特に夜。
 でも、一度行ってみてくださいね。誰かと一緒に。

 伊勢うどんは固すぎる!(笑)

2006-09-11 04:28 | from オオタ | Edit

はじめまして
熱田神宮の御神木は、弘法大師空海さんがその御手で植えられ、
熱田の地の一体を守っていらっしゃる龍神さん
「熱田の八大龍王さん」のお社としてそこに神木を植えられたのです。
また、今現在、名古屋を、守るため
また、名古屋の人々を天変地異から無事守るため
熱田の八大龍王さんはお出ましいただいております。

私もここ尾張国一ノ宮 伊勢より
この国この日本の人々が天変地異より無事通していただけるよう
また、この国この日本が黄金の国とし栄えることを

心一重に祈り願い、想っております。

2012-12-05 22:02 | from 天龍王 | Edit

熱田さんはちょくちょく

>天龍王さん

 はじめまして。
 コメントありがとうございます。
 熱田さんは、ちょくちょく参拝に出向いています。
 主に写真を撮るためなんですが。
 行事も多いので、そういうのも撮ったりします。
 あそこの境内のなんというか濁りのないクリアな空気感が好きです。神々しいというのとは違って。
 尾張国一宮は、真清田神社と大神神社という説がありますね。
 真清田神社は何度も行っているのですが、大神神社はまだ行っていないのです。一度行かなくてはいけないと思っているのですが。

2012-12-05 23:11 | from オオタ

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