カピバラさんは怠けてるんじゃない、まったりしてるだけ - 現身日和 【うつせみびより】

カピバラさんは怠けてるんじゃない、まったりしてるだけ

世界一大きなカピバラさん

Canon EOS 10D+EF75-300mm USM(f4-5.6), f5.0, 1/160s(絞り優先)



 東山動物園の一番奥まったところで、何か面白いものはいないかと広場を眺めていると、突然目の前をこいつが軽やかな足取りで横切っていった。
 なんだ、なんだ、あのでっかいネズミみたいなのは!?
 プレートを見ると、カピバラ、と書いてある。はて、カピバラとな。聞き慣れない名前だな。それにしても大きなネズミだ。世界には私たちにとってもお馴染みの生き物が巨大化しているものがけっこういる。大カブトや大トカゲなど、大きくなってありがたさが増すものから、一気に不気味になるもの、意味が違ってくるものまで、いろいろある。巨大なネズミというのはどうなんだろう。
 そんなわけで、今日はカピバラについて。

 パッと見、かなり大きいなと思ったら、世界一大きなネズミだった。猫よりもずっと大きく、どんなドラ猫もこいつをくわえることはできまい。写真ではその大きさが完全には伝わらないだろうけど、体重が50~60キロと聞けば、それはでかいなと思ってもらえるんじゃないだろうか。2歳児くらいまでの子供なら、背中に乗せて走れそうでさえある。
 しかし、これだけ大きいともはやネズミではない。家の天井裏をチョロチョロ走り回ってあちこちかじってしまうやっかいものというイメージとは一線を画す。本気を出すと人が走るのと同じくらいの速さで走れるそうなんだけど、それにしてもチョコマカという感じはしない。そして何より、体から発している空気感がキュートなのだ。家ネズミのような小憎たらしさがまるでない。それまで険悪だったカップルさえ、見たとたん微笑んでしまうような魅力がこいつにある。うーん、かわいいぞ、カピバラ。

 彼らの故郷は南米アマゾン流域。アンデス山脈より東側のパナマやアルゼンチンの草原やジャングルで暮らしている。
 体長は1メートル以上、体重は60キロにもなる。シッポはない。このへんも普通のネズミとは違うところだ。
 非常におっとりした性格で、およそ争いごととは無縁に生きている。ただ、ジャングルにはワニやらコンドルやらの凶暴な敵がいるから、それらから子供を守らなくてはいけない。普段は1頭のオスを中心とした10~20頭くらいの群れで行動し、敵が近づくと川に飛び込んで逃げる。こう見えても指の間に水かきを持っていて泳ぎは得意なのだ。ワニが襲ってきたら、今度は潜って逃げる。最大5分くらい潜っていられるという。いよいよ危なくなったら、大人たちが子供を取り囲んで身を挺して守る。決して強いものに自ら突っかかっていったりはしない。とっても平和主義者なカピバラさんなのであった。
 敵が来なくても水の中で過ごすことが多い。水が大好きなのだ。ネズミのくせに。
 一日の中でエサ取りのために行動するのは、朝夕の涼しいとき。昼間はしゃがみ込んだり、うたた寝したりしてぬーぼーと過ごす。
 食べ物はなんといっても草。体が大きいので、一日に1キロくらい食べる。動物園では、刈ってきた草や、青菜やチンゲンサイをあげるそうだ。しかし、草ばっかり集めるのは大変なので、キャベツやサツマイモ、リンゴなどもあげているとか。
 子供は一度に2~7頭くらい。たいていのげっ歯類(ネズミやリスの仲間)は出産のための巣を作るのだけど、彼らは岸辺の草むらに子供を産み落とす。生まれた子供は、両親だけでなく、他の母親もこだわりなく乳をあげたりする。そのへんの大らかさもカピバラさんの魅力だ。

カピバラさん正面

 カピバラという名前は、南米インディオの言葉で「草原の支配者」という意味を持っている。何故こんなおとなしい性格の大きなネズミが支配者と呼ばれるのかは、彼らをしばらく眺めているとなんとなく分かるような気がする。薄目を開けたような表情でしゃがんで遠くを眺め、日がな一日ぼぉーっとしていて、無駄な争いはせず、水に浸かって幸せそうな顔をしてる様子は、この世界の喧噪から遠く離れ、まるで何もかもを悟りきっているようにさえ見える。きっと、昔のインディオたちもそんなふうに感じたからこそその名を付けたのだろう。こいつはもしかしたらとんでもない大物かもしれないぞ、と。
 実際のところカピバラさんは何も考えてなどいないのかもしれないし、ポーカーフェースの下では深い憂いを抱えているかもしれない。でもやっぱり、彼らを眺めているとなんだかわけもなく幸せそうに見える。毎日が夏休みというか、日日是好日(にちにちこれこうじつ)という言葉が浮かんでくる。どんなに多忙を極め、疲れているサラリーマンも、1時間もカピバラさんを見てれば、きっと体中から力が抜けて癒されるだろう。その浄化作用は、海以上かもしれない。

 カピバラさんを見るなら、長崎バイオパークか、冬の伊豆シャボテン公園が断然オススメだ(って、両方行ったことないんだけど)。長崎はカピバラ飼育数日本一で、好きなだけ触りまくれるという癒し効果抜群だし、伊豆シャボテン公園は冬の風物詩として、露天風呂につかって目を細めるカピバラさんが見られる。1時間でも2時間でも、のぼせるまでつかっているというから相当好きなのだろう。私もぜひ見てみたいし、なでてみたいぞ。
 その2ヶ所が無理でも、きっと街の動物園にもいるはず。機会があったらぜひ見に行ってみてくださいね。
 その体だけでなく器も世界一大きなネズミのカピバラさんの話でした。

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