夏休みと冬休みを持つテングチョウと天狗の話 - 現身日和 【うつせみびより】

夏休みと冬休みを持つテングチョウと天狗の話

テングチョウ

Canon EOS 10D+TAMRON 28-300mm XR(f3.5-6.3), f6.3, 1/100s(絞り優先)



 顔の先が伸びた鼻みたいなのでテングチョウ。言われてみればそう見えなくはない。でも、伸びているのはもちろん鼻なんかじゃなく、パルピという下唇ひげだ。匂いを感じ取ったり、眼や口を掃除する機能があるらしい。
 姿はタテハチョウに似てるけど系統はまるで違うそうだ。化石で見つかっているほど古いスタイルで、氷河時代を生き残った蝶としても知られている。日本にいるのはこの1種類のみで、世界でも10種類ほどしかないというから、かなりのオールドタイプなのだろう。
 ただ、さほど珍しい蝶ではなく、北海道から沖縄まで、低山の雑木林などを中心に生息している。街に近いところにもいるようだけど、写真のように地面に止まることが多く、裏翅がいたって地味なので見逃しやすい。本来は白い斑紋とオレンジ色が少しのぞくことが多い。写真のように全面的に枯れ葉色になるやつもいる。表翅は、褐色の地にオレンジの紋様がある。
 大きさは、翅を開いて5センチほどと、タテハチョウに比べて小さい。
 幼虫はエノキの葉を食べて育つ。

 テングチョウの珍しいところは、成虫のまま冬眠するだけでなく、夏も眠って過ごすという点だ。越冬した去年産のものが春先フラフラっと飛んで卵を産み、それが5月から6月にかけて生まれて、しばらく活動した後、暑くなってくるとどういうわけか眠りについてしまう。寒いから動けないのは分かるけど、暑いから動けないというのは単に怠けてるだけなんじゃないかと思うけど、テングチョウにも都合があるのだろう。夏が過ぎ秋風が吹いてくると、ぼちぼち起きましょうかねと起き出してきて秋の花々の間を飛び回り、また寒くなってくると次の春まで長い眠りにつく。
 無理をしない、これが長い歳月を生き抜くコツなのかもしれない。蝉のように暑い真夏に生まれてきて生き急ぐやつらとは違うのだ。

 ところで、天狗って何? と素朴な疑問をぶつけられると答えに困る。妖怪なのか、伝説上の生き物なのか、神の使いなのか、人間なのか、知っているようでよく知らない。姿としては、赤い顔をして鼻が高く、山伏のような格好で一本歯の下駄を履き、葉の団扇で山を飛び回っているというものをイメージする。でも、どこから出てきた話なのかはよく分かってない。イイモンなのかワルモンなのかもはっきりしない。
 そもそも天狗というのは、流星のことだったという。「日本書紀」に登場したときは天狗と書いて「あまぎつね」と読ませたそうだ。流星を天駆けるキツネに見立てたのだろう。これは凶兆として捉えられていたようだ。
「今昔物語集」になると、鳥の怪物のように描かれ、これがいわゆるカラス天狗の元となった。反仏教の化身として登場して、それをやっつける僧侶という構図をもって、仏教を広めようとした天台宗の僧が作り出したという話もある。
 それが鎌倉時代なると、仏教や僧の敵役としてお馴染みとなり、僧に戦いを挑む悪役となった。そこで描かれる天狗はやたら自慢と説教好きで、未熟な僧を馬鹿にしたりする。そこから鼻高々、天狗になる、という言葉が生まれた。
「太平記」では、保元の乱で敗れて恨みを残したまま亡くなった崇徳上皇が天狗となって世の中を乱したという話が出てくる。
 また、後白河天皇の異名でもあった。
 一方では、鞍馬山で修行をしていた牛若丸が天狗の国に行き教えを請うたというように、修験者のように描かれることもあった。鞍馬天狗のおじちゃんはこのあたりから来ている。
 その他、中国やインドなどの伝説からの影響を受けつつ、しだいに山岳信仰と結びついていき、今のようなイメージが出来上がったようだ。天狗とひとくちに言っても、なかなに奥が深く歴史があり、複雑な要素を併せ持っている存在なのだった。

 自分が天狗と名づけられているとも知らないテングチョウは、そろそろ暑くなってきたから夏眠に気持ちが向かっている頃だろう。暑いときは眠るのが一番だねと思っているのだろうか。本格的な夏になると見られなくなるから、見るなら今の時期がねらい目だ。少し飛んでは地面に止まる、やる気の感じられない茶色い蝶がいたらそれはテングチョウである確率が高い。運がいいと、湿地などで集会を開いているところに遭遇できるかもしれない。

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コメント
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こんばんわ~。
これ蝶なんですね!色が茶だったので一瞬、蛾なのかと思ってしまった。
秋の枯葉に混じっていたら木の葉かと思っちゃうような風貌ですね~。
やはり敵から身を守る為なのかしら?
札幌もカラッとはしていませんが、今日はナカナカ暑くなりました。
それでも、30度はいっていませんけどね。
そちらは毎日暑くて大変なんでしょうね~。
体調をくずさないように気をつけて下さいね♪

2006-07-13 21:59 | from kuroneko

かなりジメジメ

★kuronekoさん

 こんにちは。
 そちらもだいぶ暑くなってきたようですね。今日は名古屋も34度でした。かなりムシムシ状態です。(^^;
 熱中症にはお互い気をつけましょうね。自転車のこぎすぎにも(笑)。

 この蝶は、かなり大昔からいるタイプの古代蝶で、少し珍しいやつです。北海道は特に数が少ないとか。
 見かけは、やっぱり擬態なんでしょうね。土の上に止まってると見逃しがちです。
 そっちも生き物たくさん見かけるようになりましたか?
 こちらはそろそろセミが鳴いてきそうです。
 その前に、早く梅雨が明けて欲しい。

2006-07-14 02:54 | from オオタ | Edit

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