一日12時間働くベジタリアンのアメリカビーバーは森の匠 - 現身日和 【うつせみびより】

一日12時間働くベジタリアンのアメリカビーバーは森の匠

アメリカビーバーさん

FUJIFILM FinePix S1 Pro+TAMRON 28-200mm XR(f3.8-5.6), f5.6, 1/280s(絞り優先)


 久々の動物シリーズ、今日はアメリカビーバーを取り上げてみたい。そのへんの川でたまに見かけるヌートリアではない。東山動物園にいたアメリカビーバーくんだ。ビーバーちゃんかもしれない。
 本来夜行性なので昼間はあまり動かないというのだけど、このときは夕方だったのと、何かもらったのとで嬉しそうに泳ぎ回っていた。大事に両手で抱えてかじっていたものは、丸ごとリンゴだった。リンゴをかじると歯ぐきから血が出ませんか? そんな懐かCMを思い出した。しかし、歯が超丈夫な彼らにとってリンゴなどは人間からみたときのイチゴくらいやわらかいものなのだろう。この程度で歯ぐきから血を出していたらビーバーなんてやってられない。もしかしたら、芯まで食べてしまうくらいの勢いなのかもしれない。

 ビーバーにはこのアメリカビーバーとヨーロッパビーバーの2種類がいる。ヨーロッパビーバーは、ヨーロッパからシベリア、中国あたりに生息してるやつで、アメリカビーバーは北アメリカからメキシコ北部あたりで暮らしている。日本にはいないから、私たちからすると珍しい生き物と思いがちだけど、北半球で暮らしてる人にとってはとてもありふれた生き物なんじゃないかと思う。川で泳いでるところを見つけたら、子供ははしゃぎ、父さんはビデオを回し、母さんは駆け寄る子供に危ないわよっ、と注意するなんていう騒ぎになることは、たぶんない。ニューヨーク育ちの都会っ子なら喜ぶだろうか。東京育ちの子供が野生のカブトムシを見てはしゃぐ程度には。
 北アメリカの川や池では普通にいる彼らは、ファミリーの結束が強い。ファミリーといってもドン・コルレオーネとかそっち方面のファミリーではない。ビーバーはイタリア移民とかじゃないし。2~4頭くらいの家族単位でいつも行動している。典型的な核家族と言えよう。ダムも二世帯住宅じゃない。
 体長は60センチから70センチくらいと、川の生き物としては大きい。日本人的感覚からすると、川にこのサイズの生き物がいたらぎょっとする。体重も15キロから30キロあるというからボリューム感もある。
 特徴的なのは尾っぽで、人間が潜水をすつとき足につける尾ひれに似ている。素材的にもツルツルでボディーとは明らかに素材が違っている。長さも30センチと立派だ。足にも水かきがついていて、泳ぎは大の得意。潜水能力も抜群で、酸素を体内にためこんで15分も潜っていられる。バサロ泳法で100メートルプールを何往復できるか。
 好物はポプラやヤナギの皮や芽。丈夫な歯でガリガリかじってかじってかじりまくり。ガリガリ君なんて3秒で食べられるだろう。その他に食べるのも、木の根や水生植物など、完全なるベジタリアンだ。
 動物園では何をもらっているかというと、リンゴ、青菜、食パン、野菜類などで、動物園のサイトには「アメリカビーバー定食150円」と書いてあった。一日2食で300円。これは動物園の動物の中ではもっとも安上がりな部類に入るだろう。動物園孝行の偉い生き物として褒め称えたい。

 ビーバーを語るときに欠かせないのはダム作りの話だ。ビーバーといえばエアコンでしょうという一部三菱関係者を除いて、日本でもビーバーといえばダムと連想するのが一般的だと思う。森の建築家と呼ばれるだけあって、そのダムは人間が作るダムに劣らないくらいよくできているという。
 まずは土台作りから。いきなり木を積んでしまうような手抜き工事はしない。基礎となる粘土質の土で土手を築き、木の枝を並べて水の流れをせき止める。水が漏れる部分には小枝や石を詰めて、泥で埋め固める。そのとき使うのは尾ひれだ。コテのようにして表面をならしたりもする。
 材料となる木はまわりから自分で切り出してくる。落ちてるものを拾い集めるのではなく。直径5センチならものの3分、10センチでも5、6分、更に太い20センチ、30センチクラスの木も4時間、5時間かけて切り倒すというから驚く。どんだけ丈夫な歯してるんだ。アゴの持久力も並みじゃない。根性の座ったビーバーだと直径1メートルの木さえかじり倒すという。与作もびっくり。
 とにかくよく働くビーバーさん一家。通常、高さ30センチから3メートル、長さ20メートルほどのダムを、一日12時間労働で約2週間くらいで完成させてしまう。英語で勤勉に働くというのをwork like a beaverと言うほどだ。
 彼らがどうしてそんなに苦労してまでダムを作るかといえば、川をせき止めて、安全で快適なマイホームを作るためだ。いわゆるビーバー湖に作られたロッジは、各部屋に区切られており、その中で彼らは家族仲良く暮らしている。

 かつてビーバーは乱獲され、絶滅寸前にまで追い込まれた。食用のための肉と帽子を作る皮のために。そこまでいってようやく間違いに気づき、保護法が成立されてなんとか絶滅を免れた。人間の都合で減らしたり増やしたりで申し訳ないと思いつつ、絶滅しなくてよかった。ひとつの生き物の全滅というのは、すごく重たい現実だと思うから。
 動物園ではその勤勉さを発揮する場面がないだろうに、毎日何をして過ごしてるんだろう。もっと働きたいぞ、働く場を与えてくれ、気力も充分あるし、経験も積んでますから、などと定年退職後の元気なお父さんのように身を持て余しているんじゃないだろうか。せめて、丸太でも差し入れしてあげたいと思うけど、のんきな暮らしに慣れてしまって、もう木をかじるのはたくさんさ、アゴも疲れるし、なんて彼らは言うかもしれない。最近、リンゴをかじると歯ぐきから血が出るんだよね、とか。


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コメント
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こんにちは♪

ビーバーのお話楽しく読ませて頂きましたv-290

〆の所で頷いている私がいましたww
私も動物園等に行くと、彼や彼女達は何を考えて
語っているのかと想っていますe-68

ポチッ♪と応援v-22

※本日よりコメント書きに絵文字を入れようと想った
Tiaraでしたv-283

2006-04-11 14:04 | from †Tiara†

主役のビーバーよりもお水の不思議な模様に目が釘付けになった私です。
動物たちの本能的な働きを見てると人間に与えられた本来の役目は何なんだろうな?って考えます(オーバーな・・・)
人間が本能のみで生きたらとっても大変な事態になりそうだけどね;;;

2006-04-11 23:29 | from spiny

動物シリーズは楽しい

★†Tiara†さん

 こんにちは。
 ここの掲示板で絵文字が使えるんですかー?
 まったく知らなかった。e-445
 で、私も早速使ってみました(笑)。
 が、絵が小さすぎて、よく見えないっ!(^^;
 また今度使ってみよう。e-263

 動物園って、ずっと苦手だと思ってたんだけど、行ってみると楽しいもんでした。とっても見直した。ぜひまた行きたい。
 ブログの動物シリーズも、書いていて楽しいです。今まで知らなかったことをたくさん知ることになって、書いた動物に対してぐっと親近感がわきます。
 もう少し写真があるんで、今後も書いていきますね。
 近いうちにまた写真を撮りにも行こう。

2006-04-12 02:11 | from オオタ | Edit

動物に見られてる私たち

★spinyさん

 こんにちは。
 spinyさんもあの水の模様に目がいきましたか。私もなんですよ。なんか、不思議な模様を描いてるなぁと思ったのでした。決して狙って撮ったわけじゃないんですけどね(笑)。
 他にも何匹が泳いでたから、いくつもの波がぶつかってあんなふうになったのかな。
 川の流れでも、こういう場所を見つけて撮ると面白いものが撮れますよね。

 動物園の動物は、野生の動物に比べて圧倒的に不幸かとういうとそうでもないんですよね、きっと。野生は自由だけど、食べることと子孫を残すことがすべてみたいなところがあるし、野生にはたくさん遊びがあるかというと、そういうことでもないですもんね。
 動物を見てる人間たちを見て彼らはどういうふうに思ってるのかを知りたい私です(笑)。

2006-04-12 02:17 | from オオタ | Edit

う~~ん、いつも、こちらでは賢くさせてもらっている気がします

ありがとー!!(人´∀`).☆.。.:*・゚ 

ビーバーが森の匠
おいらの頭では「どんどん木をかじり進める匠、すると、なんと言うことでしょう、匠の前に新たな問題が・・・」などと夢想してしまいました(爆)

こんなおいらは、イタイですか?(笑)

2006-04-15 10:21 | from ただとき

森を守る守護者

★ただときさん

 こんにちは。
 このブログを読んで頭がよくなることはないと思うけど(笑)、ちょっとした話のネタになればいいなぁと思って書いてます。
 でも、伊東家の食卓のように、その場では感心しても、すぐに忘れてしまうということになりがち?(^^;

 ビーバーは森の自然環境を守る上でとっても役に立ってるそうなんで、何をしても許されるんです、たぶん。
 木をかじって、木が倒れそうになるとあわてて逃げたりもするとか。賢いやつらです。

2006-04-16 03:50 | from オオタ | Edit

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