間々観音に願い事をしに行ったわけではないけれど

神社仏閣(Shrines and temples)
間々観音-1

PENTAX K100D+PENTAX DA 16-45mm f4 ED



 小牧山の北西に間々観音(ままかんのん)という寺がある。日本でただ一つのお乳の寺としてけっこう有名なので、知っているという人も多いかもしれない。
 正式名を飛車山龍音寺(ひしゃさんりゅうおんじ)というのだけど、この呼び名ではほとんど通用しない。最寄りのバス停も、間々乳観音前(ままちちかんのんまえ)となっているくらい間々観音で通っている。おっぱい観音ともいう。でも、そのへんの道を歩いている人に、おっぱい観音はどこですかと訊ねるのは恥ずかしいから、やはり間々観音と覚えておいた方がいいだろう。
 どうしてお乳の寺になったのかは、はっきりしないようだ。創建は室町時代の1492年で、開基は林心斉上人とされている。
 もとは小牧山にあった観音堂が始まりとされ、こんな逸話が伝わっている。
 近くに腕のいい猟師がいて、小牧山で狩りをするために入っていくと目の前に七頭の鹿が出てきた。それを撃とうとしたところ、鹿は七つの岩に変化し、その上に観音様が現れた。猟師は大変驚くとともにこれまでの殺生を悟り、それ以降は狩りをやめて、観音堂を建てて一生を堂守として過ごしたという。
 小牧山の中腹には観音堂跡が残っていて碑が建っている。現在の場所に移して堂を建てさせたのは織田信長だったと言われている。信長は桶狭間の戦いで勝利したあと、美濃攻略のために小牧山に城を築いて4年間住んでいる。1563年のことだ。
 それがどういう経緯でおっぱいの寺になっていったのかは調べがつかずによく分からなかったのだけど、赤子を抱えて貧しい生活を送っていた母が、村人にもらった米を自分で食べずに観音様に供えたところ、よくお乳が出るようになって子供が立派に育ったという話があり、その評判が広まっていったということがあったのかもしれない。
 江戸時代初期(1630年前後)に書かれた書物にも、昔から乳の霊験あらたかで参拝の人が絶えないとあるから、室町時代にはすでにお乳の寺として知られていたようだ。粉ミルクなどない時代だから、母乳が出る出ないは今よりずっと切実な問題だった。
 現在は変に有名になってしまって、テレビなどでもよく紹介されるので、半ば珍スポットのようにもなっている。話題性としては申し分ない。

間々観音-2

 想像していたよりも小さなお寺だった。垣の木には紅白の実がなっていて秋の彩りを見せている。
 住職は男性なのだろうけど、女性向けのお寺ということで境内全体の雰囲気は女性的なものを感じた。こうなれば思い切って尼寺にしてまえばもっと華やいだお寺になるんじゃないかと勝手なことを思ったりもした。実際は浄土宗のお寺だ(総本山は京都の知恩院)。

間々観音-3

 境内に入って振り返って門を見たところ。この門について書くのを忘れていた。
 こぢんまりした小さな三門だけど、尾張徳川家の菩提寺である建中寺から移築されたものだそうだ。だから、葵の門が彫られている。
 江戸時代のものだろう。なかなか雰囲気のあるいい門だ。
 左に写っているものが気になった人もいるだろうか。その正体は下の写真だ。

間々観音-4

 お乳の形をした手水舎で、先から水が飛び出してくる。センサー式で近づくと出てくるから、初めてだとちょっと驚く。
 これより先、これでもかとお乳攻勢で畳みかけてくる。決してふざけているわけではないと思う。

間々観音-5

 境内にいる慈乳観世音。これが間々観音様ということだろうか。違うかもしれない。
 こちらは片乳から水がぴゅーっと出てくる。同じくセンサー式で、二度びっくりしてしまった。
 本尊は千手観世音菩薩で、弘法大師空海の作という。どこで空海とつながるのかはよく分からない。

間々観音-6

 右が観音堂で、左手前が巽堂となっている。間々観音は、観音堂に安置されている観音像だろうか。

間々観音-7

 左正面が本堂で、右手前に写っているのは十三重之塔だ。石造りだけど、けっこう高い。
 願い事をしながらこの塔の周りをぐるぐる回ると願いが叶うんだとか。強く願うならそれだけ何周も回らないといけないらしい。
 注意書きとして、「ひしゃくで叩かないでください」とあって、ちょっと笑いそうになった。誰がどこをひしゃくで叩くというのか。そんな行為をする人はめったにいないと思うんだけど、注意書きがあるくらいだからわりと頻繁に起こっていることなのだろうか。

間々観音-8

 本堂の中深く入っていくと、乳型石像やおっぱいを描いた額、おっぱいみやげなど、様々なお乳が溢れている。そのあたりは写真に撮るのを遠慮しておいた。あまりにも興味本位になりそうだったから。
 一番いいところは残しておいたので、お近くの方は続きを自分の目で確かめてください。

間々観音-9

 お寺で絵馬というのもあまりないのだけど、おっぱい形の立体絵馬というのはここだけだろう。これが絵馬掛けの裏表二列びっしり掛かっていて壮観だった。
 人の願い事をのぞき見するのはよくない気がしてあまり見ないようにしたのだけど、やはり「お乳がよく出ますように」や、「子供が元気に育ちますように」という願いが多いようだ。
 何年か前に訪れた光浦靖子は、「触られますように」という願い事を書いていた。そういう願い事もある。
「乳首がピンクになりますように」という願い事は、神様でも観音様でも難易度が高そうだ。
 絵馬は1,500円で、おっぱいキーホルダーが500円で売られている。絵馬は手作りを持参して奉納してもいいらしいので、作って持っていって掛けておくのもよさそうだ。

間々観音-10

 これはちょっと悪のりしすぎたか。
 珍スポット化しているのは、参拝客だけの責任ではなさそうだ。

 切実な方も、そうじゃない人も、一度行ってみると話のネタにはなる。お寺としての空気感は悪くないし、個人的には居心地がよかった。変に照れることはない。
 小牧市から犬山市にかけては、これを上回る珍神社がある。男性のモノを祀った大縣神社と、その対になっている女性のモノを祀った姫の宮がある大縣神社が、直線上に並んでいる。お乳観音と3点セットで巡る人もいる。私も近いうちに二つの神社は行こうと思っている。
 小牧山城にも登ってきたので、それについてもそのうち書くことになる。
記事タイトルとURLをコピーする
コメント
コメント投稿

トラックバック