バンを好きになってもバンのように生きるのは難しい - 現身日和 【うつせみびより】

バンを好きになってもバンのように生きるのは難しい

泳ぎ去るバン

Canon EOS D30+EF75-300mm(f4-5.6), f5.6, 1/60s(絞り優先)


 天白区の天白公園で初めて撮ったバン。そんなに珍しい鳥じゃないし、この地方には一年中いるらしいけど、やっと撮ることができて喜んだ。でもかなり警戒心が強いのですぐに泳ぎ去ってしまったのは残念だった。万事休す(言わなきゃいいと分かっていても止まらない)。
 こうして泳いでる姿を見るとカモっぽいけどカモじゃない。クイナ科だ。ヤンバルクイナでお馴染みの。これよりひとまわり大きいやつがいて、そいつはオオバンという名前で、それに対してコバンと呼ばれていたこともあったそうだ。お仲間がたくさん集まっているところを見たら、オオバン、コバンがざっくざく、ババンババンバンバン、はぁ~ビバノンノ、ババンババンバンバン、いい湯だな~ハハハン、と荒井注も歌い出してしまうに違いない。

 どうしてバンという名前が付けられたかというと、それは番長の番でも、野蛮の蛮でもなく、伴忠太も馬場蛮も関係ない。ライトバンのバンでもない。水田に巣を作ることから田んぼの番をする鳥というところから名付けられた。漢字で書くと鷭。分かってしまえばなーんだとなる。坂東英二も関係なかったか。野球盤でもない(もういい)。
 英名はMoorhen。Moorが湿原でHenは雌鳥(めんどり)、湿原にいるニワトリっぽい鳥という意味であちらでは付けられたようだ。

 見た目は黒くてクチバシが赤いので分かりやすい(クチバシの先は黄色い)。ただ、必ずしも赤いクチバシをしてるわけではないのでたまに分かりにくい。黄色いやつもいるし、黒っぽいのもいる。たぶん黄色いのは若者で、黒くなるのは冬場だからなんじゃないかと思う。
 背中は少し茶色がかっている。オスとメスは同色。大きさは35cmくらいだからハトと同じ程度だ。
 面白いのは足で、これは特徴がある。体のサイズに似合わない大足をしていて、なんだかバランスが悪い。黄色いカラスのような足をしていて水かきはない。これは陸で歩くのには適しているけど、その分泳ぎは苦手になる。自分でももどかしく感じているのか、逃げるときなどは前のめりの姿勢で首を前後にゆすって少しでも早く漕ごうとする。泳げない人間が浮き輪につかまって足を漕いでいる姿に似ている。
 しかし、その大きくて細い足の指のおかげで、蓮の上を歩いて渡るという特技を持っている。それが生きていく上で絶対的に必要な能力とは思えないけど、誰にでもできるわけではないのでエライ。それができるのはたぶん、バンと熟練の忍者くらいだろう。忍者ハットリくんをやった香取慎吾には決してできない。

 エサはかなり幅広い。水中でも獲るし、地表でも何かをつついてる様子をよく見かける。水草の葉、種子、水生昆虫、貝、エビ、オタマジャクシ、ミミズなどなど。近年はこういうエサが少なくなってきたことで生息数も減少傾向にあるようだ。名古屋市内の他ではあまり見かけないのに、この天白公園にはたくさんいたところをみると、ここはアシなどがたくさん生えていて、バンにとっては棲みやすい池なのだろう。
 世界的にも珍しい鳥ではなくて、オーストラリアを除く熱帯から温帯にかけての地域に広く生息してる。地域ごとの亜種も多い。比較的暖かいところが好きなようで、気温の低いところにいるやつは冬になると南に下がってくる。日本では関東より西には一年中いて、東は夏にだけ飛んでくる夏鳥だという。近年は日本も暖かくなったから北関東あたりにいるやつも留鳥となっているのかもしれない。
 バンは夫婦制度と子育てが独特で面白い。一夫一婦を基本としながら、しばしば一夫多妻となり、巣を共有して一年に2回卵を産むことがある(沖縄では4回も産むこともあるらしい)。たとえばひとつの巣でオスが1羽、メスが3羽で、1羽あたり7個の卵を産んだとしたら21個の卵となり、それをみんなが交代で温めることになる。そして産まれたヒナはみんなして育てる。もう誰が誰の子だか分かりゃしない。
 そして一年で2度目に産んだときは、巣立った子供まで巣に戻ってきて子育てのお手伝いをするという。巣にはたくさんのヒナたちが騒ぎ、親や兄弟が入れ替わり立ち替わりやって来てはヒナの世話をすることになる。その様子を想像するとなんだかすごいことになってそうだけど、楽しそうでもある。巣の中は押すな押すなの大盛況。しかし、そのへんは上手くできているもので、他の鳥に比べてヒナの巣立ちがとっても早い。産まれてから3日もすると巣から離れていく。実質そうせざるを得ないのだろう。テレビの特番でときどきやってる大家族スペシャルみたいだ。
 バンは今の日本では失われつつある古き良き時代の家族制度を体現する鳥たちと言えるだろう。でも、巣立った子供がお母さんバンとくっついてしまうこともあるらしいから、古き良き伝統と言ってしまうのは問題があるかもしれない。私自身は、バンの家族制度にはあまり馴染めそうにない。

 池でバンを見かけたら、こんな夫婦関係や親子関係に思いを巡らせながら眺めてみてくださいね。ただ、いくらバンのことが好きになったとしても、バンのように生きるのはやめておいた方がいいかもしれない。あれを人間世界に適用させようとすると、あまりにもモメごとが多くなりそうだから。

スポンサーリンク

関連記事ページ
コメント
非公開コメント

トラックバック

http://utusemibiyori.com/tb.php/123-7a9d0615